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» 2007年11月01日 00時00分 公開

その意義、各種方式の特徴、使いどころを探る:インターフェースIC活用のススメ (2/4)

[Paul Rako,EDN]

基本はアナログ

 ロジック出力をトランジスタでバッファするという単純な処理にも、上述したような作業、調査、計算が必要な点には注目すべきだ。このことから、設計者の仕事が、趣味の領域とは異なることは明らかである。設計者は仕様や計算を用いて、回路が、実験室の中だけでなく、製品化までの全工程を通して目的通りに動作することを保証しなければならない。

 例えば、現在はサービス会社を経営しエンジニアでもあるJohn Massa氏は、米Houston Instruments社、米Teledyne Technologies社、米Quantum社に勤めた経験を持つ。当時同氏は、同僚の設計者らに対し、オクタルバッファの74LS244によってLEDを駆動することはできないとの助言を行った。しかし、多くの設計者が、「これまで何度もうまくいったことがある」といって、同氏の言葉を疑った。Massa氏はただ微笑んで、「データシートを読むように」と忠告した。実際、彼らが当時使用していたTI社のSN74LS244と一般的な20mAのLEDのデータシートを参照すれば、Massa氏の主張の根拠が分かる*2)*3)。TI社のSN74LS244は、3mAの出力電流で2.4Vの出力電圧を保証する。一方、米Chicago Miniature Lamp社の赤色LED「5306H1」では、10mAの電流が流れる際の最大フォワード電圧が3Vである。Massa氏が警告したように、20mAの電流でLEDが最大の輝度となるようにしたいとすれば、この回路の動作は保証できない。

 通常、LEDを74LS244で駆動できることは事実である。しかし、民生機器ならばこの方法でもよいのかもしれないが、命にかかわる医療機器や軍事用途には利用できない。LEDが所望の輝度を実現できない可能性があるばかりか、そもそもLEDが発光するかどうかさえも保証されない。

 この例から、1つの事実が浮かび上がる。それは「インターフェースの基本はアナログである」ということだ。

インターフェースICの登場

図2 CMOS/バイポーラの各バッファICを並列接続する方法 図2 CMOS/バイポーラの各バッファICを並列接続する方法 CD4000や74HCxxxのようなCMOSロジックICファミリは、出力を並列に直接接続して使用することができる(a)。バイポーラロジックICを並列接続する場合には、熱暴走して電流が出力段に集中するのを防ぐために、各出力に小さな抵抗を配置する必要がある(b)。

 バイポーラトランジスタやMOS FETのような簡単なものから進化したのが、前述したMOS FETドライバICのようなインターフェース機能を持つICである。このようなインターフェースICのうち、最も古いものに当たるのが16進反転CMOSロジックの「CD4009」や非反転のロジックバッファICの「CD4010」である。今でもTI社はこれらの由緒ある部品を製造している。4000シリーズは15Vでも動作し、耐ノイズ性が高く、インターフェース信号を直接駆動することができるという利点を持つ。

 CMOSロジックの利点の1つは、15Vの4000シリーズであれ、低電圧CMOSであれ、回路の電流駆動能力を増加させるために、複数の出力を直接、結合できる点である(図2)。MOS FETはオン抵抗値にばらつきがあっても、電流を流した際の発熱で抵抗値が上昇してバランスがとれ、熱暴走には至らないため、このような並列化が行える。

 それに対し、バイポーラトランジスタで同じ構成をとると、電流の集中が生じる可能性がある。つまり、1つのバイポーラ出力トランジスタが高温になり、より多くの電流が流れてさらに高温になって熱暴走し、最後には破損してしまうのだ。これを回避するには、5Ωまたは10Ωの抵抗を各出力に直列に挿入すればよい。しかし、それではCMOSチップを使用する場合より構成が複雑になるし、コストも上昇する。

ローサイド/ハイサイドのスイッチ

 ソレノイドなどの複雑な負荷を駆動するために、さまざまな種類のインターフェースICが開発されるようになった。最もよく使用されるのがTI社などのベンダーが提供するSN/DSシリーズである。その種類は、デュアル高電圧ペリフェラルドライバである「SN55462」から、クワッド電話リレードライバである「DS3680」まで多種多様だ。

 この種のICとしてもう1つ有名なのが、米Freescale Semiconductor社製のものである。この社名は同社が最初に事業を始めた自動車向け無線を意味しており、車載環境下における高い温度や電圧サージに耐え得るようなインターフェースICを製造している。また、ローサイドスイッチやハイサイドスイッチ、Hブリッジ、プリドライバ、電力トレイン、さらには車載エアバッグを作動させるための起爆性装置であるスクイブなどのICも提供している。ここでは、こうしたインターフェースのうち、ローサイド/ハイサイドのスイッチに注目してみる。

 半導体によるパワースイッチは、理論的には負荷のアース側に配置するべきだと思われるかもしれない。しかし、ローサイドスイッチには問題がある。それは、スイッチをオフにしたときに、負荷が正の電源電圧に引き上げられたまま浮遊した状態になるということである。100年以上にもわたって簡単な機械式スイッチでやっていたように、負荷のアース側を切断するよりも電源側を切ったほうがよい。加えて、負荷をアース側に接続しておくほうが、ノイズを抑える観点からも、電流/電圧/温度を監視する観点からもよい。このことからハイサイドスイッチが多く使われている。

 ハイサイドスイッチの設計方法の1つは、(損失が大きいという問題はあるが)pnpバイポーラトランジスタやpチャンネルMOS FETを用いるというものである。一方、電子移動度が高いnチャンネルを用いて少ない損失で電流を流すことができるnpnバイポーラやnチャンネルMOS FETを用いる方法もあるが、これはより高度な手法となる。例えば、チャージポンプを利用してゲート電圧を高め、nチャンネルMOS FETによってハイサイドスイッチを構成するといった具合だ。

 MOS FETをハイサイドスイッチに利用する際に注意すべき点は、ゲート容量である。大容量のMOS FETを制御するには、その大きなゲート容量を充電するために長い時間を要する。その結果、MOS FETが線形動作する時間が長くなり、過剰に電力を消費してしまう。また、スイッチが電源への接続を確保するまでの時間が遅くなるため、電源を供給される側のシステムや回路が不安定になる恐れがある。

 ハイサイドスイッチとして最も有名なブランドの1つはオランダNXP Semiconductors社の「TOPFET」である。このICには、パワーMOS FETに加え、過電流/高温/過電圧などに対する保護機能も集積されている。また、逆極性保護機能も備えており、ヒューズの機能も兼ねている。NXP社は、チャージポンプのノイズを最小限に抑えることにより、同部品をさまざまなアプリケーションに適用できるようにしている。

 ドイツInfineon Technologies社は、同様に堅牢な機能を持つハイサイドスイッチの「PROFET」を提供している。それ以外に、ローサイドスイッチやモーター制御用途ICなどの製品も供給している。

 スイスSTMicroelectronics社は、自動車環境における複雑なインターフェースアプリケーションをターゲットとしている。同社は初めてエレクトロマイグレーションを抑え、ハイサイドスイッチの熱疲労を改善した企業である。これにより、銀接点のような堅牢性と保護/監視機能を備えた理想的なデバイスを身近なものとした。


脚注

※2…"SN54LS240, SN54LS241, SN54LS244, SN54S240, SN54S241, SN54S244, SN74LS240, SN74LS241, SN74LS244, SN74S240, SN74S241, SN74S244 Octal buffers and line drivers with 3-state outputs," Texas Instruments 74LS244 data sheet, February 2002. http://focus.ti.com/lit/ds/symlink/sn74ls244.pdf

※3…"5306 Series T-1 3/4 Right Angle LED Assembly," Chicago Miniature Lamp Inc. http://rocky.digikey.com/WebLib/Chicago%20Miniature/Web%20Data/5306%20Series.pdf


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