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フラッシュストレージを活用せよ「Windows Vista」とSSD製品が普及を後押し(2/3 ページ)

» 2008年01月01日 00時00分 公開
[Brian Dipert,EDN]

Vistaのもう1つの新機能

 Vistaに搭載されたもう1つの機能に「Windows ReadyDrive」というものがある。簡単に言えば、ReadyBoostでは、システムのシャットダウン時やハイバネーション時にフラッシュメモリーベースのキャッシュに格納された情報が破棄されるが、その破棄が行われないようにするというものだ。Microsoft社のドキュメントには以下のように記載されている。

ReadyDriveは、SuperFetchのアルゴリズムに対して、フラッシュメモリーストレージが情報を破棄しないように、特定のプログラムまたは一連のファイルを指定する機能を提供する

 ReadyDriveがサポートするフラッシュストレージをより良く活用するために、Vistaは拡張ATA(advanced technology attachment)コマンドセットをサポートする必要があった。Microsoft社のドキュメントには以下のように書かれている。

ReadyDriveは、ATA8-ACSコマンド規格で標準化された新しいNV(nonvolatile:不揮発性)キャッシュコマンドセットを使用する。この新しいコマンドセットを用いることにより、ReadyDriveでは2つの重要な処理を行う。それは、任意の時点において、どのデータをNVキャッシュ内に保持するかを指定する制御と、ドライブをNVキャッシュモードに設定するかどうかの制御である

 ReadyDriveがサポートするフラッシュストレージシステムは、主に2つの形態で実現される。Hybrid Storage Allianceに加盟している企業らは、現在のHDD内のRAMバッファを補う形で、フラッシュメモリーをハードドライブ内に格納するハイブリッド型ドライブを推進している。一方、Intel社のTurbo MemoryやAMD社のHyperFlashは、フラッシュメモリーアレイをHDDに外付けの形で配置するという考え方の製品だ。

 これら2つの対立するプラットフォームを推進する両者が、自身の手法を推進するために説得力のある主張を繰り広げている。例えば、フラッシュメモリーを外部に実装する方式であれば、それを認識しているソフトウエアドライバが、通常はHDDに送信されるコマンドを途中でとらえて適切な場所へ送信したり、自分自身で処理したりすることができるといった具合だ。一方、ハイブリッド型ドライブの推進派は、HDDベンダーがフラッシュメモリーによるキャッシュをうまく管理すれば、2つの技術が最大限かつ相乗的に機能するとしている。また、ハイブリッド型ドライブ方式であれば、オールインワン型のシンプルな構成となるため、カスタムのソフトウエアドライバをインストールして管理する必要がないとも主張する。さらに、格納されていた重要な情報の断片が、HDDを取り外した後に、アクセス可能な状態でシステム内に残る可能性もない。

 Intel社のTurbo Memoryを推進するRick Coulson氏は、2007年5月に行われたWinHEC(Windows Hardware Engineering Conference)において、外付け方式では上述した問題が起きる可能性があることを認めた。しかし、「ハードディスクを取り外す前に自動的に再フォーマットしたり、Turbo Memoryの内容もスクランブルするワイピングを適用したりすることによりこの問題には対処できる」(同氏)と述べた。Intel社は、将来的にはTurbo Memory内に格納された情報を暗号化することにより、この問題に対処する計画だ。

 外付け方式の推進派は、システム設計などにおける柔軟性を強調する。これは、フラッシュメモリーのコストと可用性が不確かな今の時代に適合した主張だと言える。コンピュータメーカーは、これまでと同様にHDD製品を購入することができ、容量や性能などが異なるさまざまなハイブリッド型ドライブ製品を購入する必要がない。また、マザーボード上のコネクタを、ReadyDrive用のフラッシュメモリーストレージに使用するかどうかをシステムごとに選択することができる。Intel社/AMD社は「フラッシュストレージとHDDを管理し、それらの間を仲介するためにシステム側にソフトウエアを配置することは、すでに成熟した技術であるソフトウエアRAID(redundant array of inexpensive disks)と概念的にはまったく違いがない」と主張している。また、Microsoft社のあるエンジニアはWinHECにおいて「Turbo MemoryもHyperFlashも、将来的にはHDDだけでなく、光ドライブやNAS(network attached storage)*5)などのシステムにも搭載され、ネットワークで接続されたほかのストレージ周辺機器に対してもキャッシュの機能を提供できる」と筆者に語った。

 ReadyBoostサブシステムと同様に、ReadyDriveのロゴ認定を得るには、一定の性能などの基準を満たす必要がある(表1)。また、Microsoft社のドキュメントには、以下のような趣旨の記載がなされている。

性能上のメリットを得るためには、NVキャッシュサイズを128Mバイト以上とすることを推奨する。NVキャッシュを利用してOEM指定のプログラムを起動し、さらなる性能上の利点を得るには、NVキャッシュを256Mバイト〜1Gバイトとするとより効果的である。ReadyDriveは、最小で50MバイトのNVキャッシュをサポートする。フラッシュメモリーの将来的なコスト低下と性能向上により、1Gバイト以上のNVキャッシュが現実的なものになると予想される。そのため、ReadyDriveは、最大2TバイトのNVキャッシュまで対応可能としている

表1 ReadyDriveの性能要件 表1 ReadyDriveの性能要件

脚注

※5…Dipert, Brian, "CES: Unclear prospects for hybrid, solid-state hard disks," EDN, Jan 8, 2007.


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