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1個のオペアンプで構成した2重ヒステリシス回路Design Ideas

» 2008年01月01日 00時00分 公開
[Herminio Martinez/Encarna Garcia/Juan Gamiz(カタロニア工科大学),EDN]

 プロセス制御において不連続制御を必要とする場合の最も基本的な選択肢は、2位置制御器、すなわちオン/オフ制御器を利用することである。そのような用途の代表例に槽内加熱用ヒーターがある。その制御は、温度が設定値以下になった場合にはヒーターの電源をオンにし、設定値より高くなった場合にはオフにするというものになる。アナログ技術で2位置制御器を構成するにはアナログコンパレータあるいはオペアンプを用いた開ループ回路が基本的な構成要素となる。このとき、スイッチの誤動作を避けるために、通常はシュミットトリガーが利用される。

 2位置制御の概念を発展させると、制御器の出力を多位置対応とする方式を考えることができる。この方式を利用すれば、2位置制御に不可避なサイクリング動作やオーバーシュート、アンダーシュートなどを低減可能である。実際、2位置制御では満足な動作が得られない場合には、多位置制御を利用するのが手っ取り早い。そのような多位置制御の代表例が3位置制御であり、その簡単な構成方法の一例を示したものが図1だ。

図1 3位置制御を実現する2重ヒステリシス回路 図1 3位置制御を実現する2重ヒステリシス回路 この回路により2重ヒステリシス特性を得て、3位置制御を実現する。3個のオペアンプと基準電圧源、ツェナーダイオードを組み合わせて構成している。

 図において、オペアンプA1とA2で構成する回路部にはシュミットトリガー機能を持たせている。これにより、正方向と負方向のヒステリシス特性を実現する。オペアンプA1とA2はアナログコンパレータ(例えば「LM311」など)に置き換えてもよい。図1の回路の入出力特性は図2のようなものとなる。この特性は、以下の式で表されるVM、VH、VLの3つのパラメータにより決まる。

図2 図1の回路の入出力特性 図2 図1の回路の入出力特性 正負の両側にヒステリシスが得られる。

 ここでVZとVYは、それぞれツェナーダイオード(D1A、D2A、D1B、D2B)の降伏電圧(ツェナー電圧)と順方向の降下電圧である。

 本稿で紹介するのは、図1の回路よりも簡単な構成で3位置制御を実現する方法である。図3の回路ではオペアンプは1個しか使われておらず、基準電圧源も必要としない。入力部と出力部のダイオードによってオペアンプ回路の正負のスレッショルドレベルとヒステリシス特性が決まる。VIN(t)が両スレッショルドレベルの中間にある場合は、入力部のダイオードがオープンであるのと等価になる。そして、オペアンプ回路は正のフィードバックを持つボルテージフォロワ回路として働く。従って、出力電圧VOUT(t)は非反転入力端子の電位VA(t)に等しくなろうとするが、その一方で正のフィードバックがかかっていることから、VA(t)にはVOUT(t)が加算されていくことになる。以上のことから、この回路の出力電圧VOUT(t)は次の2つの制約条件から決まる。

図3 1個のオペアンプで実現した2重ヒステリシス回路 図3 1個のオペアンプで実現した2重ヒステリシス回路 

 これら2式が同時に成立するのは、VOUT(t)およびVA(t)が0Vのときのみである。言い換えれば、入力部のダイオードが逆バイアスされる場合には出力電圧は0Vに保持される。この0Vの出力は、入力電圧が正または負の一定レベルの範囲内にある間は保持される。入力が一定レベル±VHを超えると、入力部のツェナーダイオードの一方が導通し、オペアンプ出力は正または負の方向に変化する。次に、この状態から入力電圧の絶対値が小さくなり±VLになると、出力電圧は0Vとなる。以上の動作に対応するVH、VLは、次の式のようになる。

 図4に示したのは図3の回路の入出力特性である。このデータは、図3の回路において、D1AとD1Bとして降伏電圧が6.8Vの「1N4099」、D2AとD2Bとして降伏電圧が3Vの「1N5225」を使用した場合のものだ。図5に示したのは入力VIN(t)として三角波とした場合の出力波形である。

図4 図3の回路の入出力特性(オシロスコープで取得した波形) 図4 図3の回路の入出力特性(オシロスコープで取得した波形)  
図5 図3の回路に三角波を入力した場合の出力(オシロスコープで取得した波形) 図5 図3の回路に三角波を入力した場合の出力(オシロスコープで取得した波形) 

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