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高電力機器のホットスワップ回路高い信頼性を確保する設計とは(2/4 ページ)

» 2008年03月01日 00時00分 公開
[Shyam Chandra(米Lattice Semiconductor社),EDN]

ホットスワップ回路の設計要件

 実際のホットスワップ回路はどのように設計すればよいのか。電力が50W程度以下であれば、バックプレーンに流れる電流が小さいことからホットスワップ回路は簡単なものになる。しかし、最新のブレードは機能/性能の高度化に伴って消費電力が増大している。例えば、ACTA(advanced telecom computing architecture)用ブレードでは最大約200Wの電力を消費する。このような消費電流の多いカードにおいて、規格を満たすよう一定期間のブラウンアウトに対応するためには、ホールドオフコンデンサを大容量化するという方法をとることが一般的だろう。しかし、突入電流の大きさとその充電期間はホールドオフコンデンサの容量に比例するので、筐体内のほかのブレードにおける電圧低下やブラウンアウトの期間はそれによって悪化することになる。これらの問題に対しては、まずほかのブレードの電圧低下を抑えるために突入電流の量を制限する必要がある。また、充電の期間を短縮するにはより高速に充電する必要があるが、その際にも無制限に電流を流せるわけではない。以下、こうした問題にどのように対処すればよいのか説明する。

■MOSFETのSOA

 まず、MOSFETにおける突入電流の影響について考えてみる。ホールドオフコンデンサの充電初期状態ではその端子間電圧が0Vであるため、バックプレーン電源電圧のすべてがMOSFETに加わる。その結果、MOSFETに流れ込む瞬間的な電流は非常に大きなものになる。例えば、消費電力が200Wのブレードの場合、通常動作では−48Vのバックプレーン電源ラインから約4Aの電流が継続的に流れる。このレベルのブレードは過電流制限値が約5Aに設定されている。そのためホットスワップ回路は、電源供給を開始する過程における突入電流をこの値以下に制限することになる。従って、ホールドオフコンデンサの充電を開始した直後におけるMOSFETの瞬間的な消費電力は48V×5A、つまり約250Wにもなる。このような高い電力は、200Wのブレード用として通常使用されるMOSFETのSOA(safe operating area:安全動作領域)を超えてしまうだろう。つまり、MOSFETの動作をSOA内に保つことはホットスワップ回路の信頼性を確保する上で必要不可欠な設計要件である。

 図2は実際のMOSFETのSOAを示すものである。MOSFETのドレイン‐ソース間電圧(X軸)とMOSFETを流れるドレイン電流(Y軸)の関係を対数軸にプロットしており、3本の線は3つの電流パルス幅に対するMOSFETの安全な電流値を表す。各線の下の領域がMOSFETのSOAに相当し、設計する際にはMOSFETがSOAの外の条件で動作することがないようにしなければならない。さらに、MOSFETへのダメージを避けるために通常動作時の平均電力も考慮する必要がある。

図2 MOSFETのSOA 図2 MOSFETのSOA 100μsと1ms、10msの電流パルス幅に対する許容電力条件を示す。各線の下の範囲がSOAである。

■不具合への対処

 突入電流への対処のほかに、ホットスワップ回路はブレードへの供給電流が異常に多くなるといった不具合への対処も求められる。例えば、メイン回路の短絡などが発生すると、ブレードには定常的に過剰な電流が流れることになってしまう。このような不具合を抱えたブレードがバックプレーンに挿入された場合、ホットスワップコントローラはMOSFETの動作をSOA内に保持しつつ、電流を制限して、サブ筐体内のほかのブレードへの影響を最小にする必要がある。

 そのほかにも、バックプレーンやブレードの異常などが動作時に発生する可能性がある。それらのうち、バックプレーン電源が規定より高電圧/低電圧になる不具合については、その継続時間がホールドオフコンデンサで対応可能であればそれ以上の対策は必要ない。しかし、その不具合の継続時間がホールドオフコンデンサで賄いきれないほど長い場合、バックプレーン電源の接続を断って、その電圧を監視しながら不具合の回復を待たなければならない。また、ブレード上の回路で不具合が発生した場合、そのほかのブレードに悪影響を与えないようホットスワップ回路によってブレードをシャットダウンすべきだ。

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