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プラットフォームが支えるロボット開発(1/5 ページ)

ロボット工学が、大きな将来性が期待できる分野として脚光を浴びている。この流れを受け、その開発を支援するさまざまなプラットフォームやツールが提供されるようになってきた。本稿では、そうした製品のいくつかを取り上げてその概要を紹介する。

» 2008年04月01日 00時00分 公開
[Robert Cravotta,EDN]

プラットフォームの効用

 「ロボット」という語の一般的な定義はかなり難しい。例えば、この言葉から、使用人やペットのような擬人化されたものを想像する人も多いだろう。しかし、実際のロボットの形状は必ずしも人型とは限らない。人型のものではなくても、実際のロボットを目にすると、それをロボットだと認識する人は多い。例えば、米iRobot社が清掃ロボットとして提供する「Roomba」の形は円状であり、人の形はしていない。しかし、その動きを見れば、比較的抵抗なくそれがロボットであると認識できる。それに対し、例えば自律型の自動車などをロボットと呼ぶことには、抵抗を覚える人が多いはずだ。

 ロボット工学に携わる設計者は、そうした定義を気にしなくなりつつある。そして、ロボット工学が生み出した成果をより多くの人々へと徐々に広めていこうとしている。こうした幅広い人々へのアピールは重要なことである。この種のシステムは、多種多様な専門分野から集まった、広範囲な一般知識と特定分野の専門知識を持つ人々から成るチームで開発されるからだ。

 人々が一般的にロボットだと認識するものと、高性能な自動車のブレーキやトラクションコントロールシステムといった自律型/半自律型サブシステムの設計はどう違うのだろうか。設計者にとってより重要なのは、そうした形状/機能の異なるシステムを構築する際に、必要な設計手法と開発リソースに違いがあるのかどうかということである。

 設計者が抱くこうした不安を取り除くものが、ロボット開発用のプラットフォームである。プラットフォームを利用すれば、プロジェクトの開始に当たって、開発に携わるすべての人がセンサー制御、メカニカル制御、モーター制御の専門家である必要はない。また、ロボットをターゲットとしたソフトウエア開発ツールも成熟してきており、システム仕様の定義、設計、実装、テスト、配備(deployment)のそれぞれに対応する機能の向上がますます加速している。

 本稿では、そうしたプラットフォームや開発ツールを紹介する。その目的の1つは、組み込み型か否か、完全に自律型か部分的に自律型なのかにかかわらず、ロボットシステムを開発しようとする人々に対し、すでに提供されているリソースを紹介することである。ただし、そうしたリソースのすべてを紹介しようとは考えていない。なぜなら、その数は着々と増加しており、すべてを網羅するのは困難だからである。そこで筆者は、動きに対応したセンシングシステムを備えるモバイルロボットを開発するケースを想定した。また、そのモバイルロボットは、2本のマイクを使って、音を発する物体の位置推定を行うセンシング機能を備えるものとする。これを実現するために利用可能なもの、という観点から選んだプラットフォームを順に紹介する。それは以下の3つである。

  • iRobot Create
  • Segway RMP
  • MINDSTORMS NXT

 なお、Segway RMPの項では、これとともに利用可能なソフトウエア環境である米Microsoft社の「Robotics Studio」についても詳細に説明する。また、MINDSTORMS NXTの項では、これをサポートするソフトウエア環境として、米National Instruments社(以下、NI社)の「LabVIEW」を取り上げる。さらに、上述した音声センシング機能を扱うのに役立つモジュールや、本稿執筆後に見つけたプラットフォームの情報も別掲記事として紹介することにしよう。


脚注:

※1…iRobot Command Module Owner's Manual, http://www.irobot.com/filelibrary/create/Command%20Module%20Manual_v2.pdf


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