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» 2008年04月01日 00時00分 公開

組み込み市場としての「カジノ」の可能性 (3/3)

[Warren Webb,EDN]
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プレイヤへの訴求力を高める

 米PureDepth社は、International Game Technology社とともに3Dディスプレイ搭載のスロットマシンを開発する旨の契約を締結した。


図3 MLD技術を使った3Dディスプレイ 図3 MLD技術を使った3Dディスプレイ この技術では、奥行きを表現するために、2つのスクリーンを前後に並べ、リアルな3Dディスプレイを実現する。

 PureDepth社の特許技術であるMLD(multilayer display)では、2つのスクリーンを使用して奥行きを表現する(図3)。2つのスクリーンは前後に配置され、その間には透明な層が置かれる。座標が調節された前景画面と背景画面を表示し、それらがどの角度から見ても解像度を落とすことなく3Dとして見えるようになっている。同技術により、多くのスロットマシンでいまだに使用されている機械式のリールを3D画像に置き換えることができる。また、この手法ではすべてをデジタルで実現するので、カジノにおいて、要求に応じてリアルタイムに遠隔からゲームの種類を変更したりすることも可能になる。

 また、米Immersion社もTouchSense技術により、スロットマシンやビデオポーカーにおけるインターフェースを改善している。同技術は、音声やグラフィカル画像の変化に同期した、触覚による応答を提供する。最大対角寸法が32インチ(約81cm)のタッチスクリーンにまで適用でき、継続的に生じるプレイヤの動きの変化に対応するさまざまな応答が可能である。例えば、表示されたカードの上を指でドラッグすると、各カードが配られたかのようなクリック音が生成される。同様に、スクリーン上のスロットレバーを動かした際、回転するディスプレイが1つずつ停止するごとに小さな振動が起きる。携帯電話機のバイブレータのような小さな電気機械式のアクチュエータが、この物理的な動きを生成する。Immersion社は、コンポーネント、ソフトウエア、ガイドラインから成るTouchSense統合キットを開発者向けに提供している。

モバイル対応、サーバー対応

 カジノ業界では、ネットワークインフラを改良し、最新のエンタープライズレベル技術を利用したモバイルゲームやサーバーベースのゲームに対応しようとしている。

 NGC(Nevada Gaming Commission)は、カジノ施設や周辺のホテル敷地内で、モバイル機器を用いた賭博を許可する予定であることを示唆している。NGCはこの業界で主導権を握っているため、モバイル対応のカジノゲームは、すぐに世界規模で標準化される可能性がある。例えば、以下のような手順による利用形態が考えられる。

(1)カジノがプレイヤに、エンタープライズネットワークに対してワイヤレス接続が可能なモバイル機器を提供する

(2)プレイヤは多種多様なゲームの中から気に入ったものを選択する

(3)プレイヤはカジノ施設内の指定エリアでローミングしながらギャンブルを行うことができる

 モバイル性を持たせるには、機器とネットワークにおけるセキュリティの問題が組み込み設計者に重くのしかかってくる。すなわち、使用する機器は、物理的なセキュリティ対策、位置認識機能、強力なネットワーク認証機能を搭載しつつ、持ち運び可能なサイズを維持しなければならない。

 サーバーベースのゲームも考えられる。サーバーベースの場合、1カ所のカジノまたは複数のサイトからネットワーク経由で、ソフトウエアを更新したり、メンテナンスの予定を決めたり、ゲームの種類を変更したりすることが可能である。カジノの運営者は、プレイヤの客層に合わせてゲームの種類を変えたり、ほとんどコストをかけることなく新しいゲームを試してみたりすることができる。あるいは、複数のマシン間でボーナス賞金の額を調整したりすることも可能だ。

 サーバーベースのゲームのメリットは、ゲーム機器自体が備えるべき演算能力に対する要求を緩和し、また機器の多様性をなくすことによって、機器自体のコストを削減できることである。モバイルゲームと同様に、サーバーベースのゲームにおいても、通信データがカジノの外に送られることがあるため、システム設計者はセキュリティの問題に対処する必要がある。

ウェブの脅威

 先述したように、カジノで用いられるゲーム機器は厳しい規制と統制を受ける。そうした中、組み込みベンダーは、ゲーム機器の世代ごとに新しい組み込み技術を続々と投入している。カジノ業界の規模とその成長のスピードは、その利益の分け前を狙う組み込み設計者とメーカーにとって、今後も魅力的なものであり続けるだろう。

 カジノ業界が引き続き成功し続けることを妨げる唯一の潜在的な脅威は、インターネットを利用したオンラインカジノである。これが合法化されると、ホテルのカジノがインターネットに接続されたデスクトップ型パソコンと何ら変わらないものになってしまう。

 カジノでは、実際のゲーム以外のエンターテインメント要素(酒やショーなど)も提供される。そうしたものを除けば、インターネットは、合法的な賭博業界に対する脅威となり得るだけの潜在的な能力を備えていると言える。例えば、インターネットに接続されたデスクトップ型パソコンは、カジノのゲームのほとんどを模倣するために必要なビジュアル効果と音響効果を再現することができる。オンラインの賭博サイトであれば、施設型のカジノで必要となる人件費や場所代、さらには特殊な電子機器までもが不要になる。この種のウェブサイトは数多く存在するが、インターネットを利用したオンライン賭博は数多くの複雑な法律や規制の壁に直面している。米国の場合、連邦政府が定めた賭博税法(Federal Wire Wager Act)によって、賭博業者が電子通信回線を利用して賭け金を送金することを禁止している。また、クレジットカードは、オンライン賭博の決済には使えないことになっている。これらの規制を回避してオンラインの賭博サイトを運営するには、小切手による前払い制度を導入するか、米国外での運営を強いられることになる。

 こうした課題がなくなるか否かは現時点では不明である。ともあれ、オンラインの賭博サイトが合法化されるという状況さえ発生しなければ、カジノは組み込み技術者にとって、魅力的な市場であり続けるだろう。

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