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TEC素子を用いた温度調整回路を単極駆動Design Ideas

» 2008年04月01日 00時00分 公開
[W Stephen Woodward,EDN]

 ペルチェ素子、あるいはTEC(thermoelectric coolers:熱電冷却素子)と呼ばれる素子は、光検知器や固体レーザーなど温度依存性の強い電子部品の冷却に利用できるものとして広く普及している。TECは双方向性の特性を持っており、外部から供給される駆動電流の向きによって加熱/冷却の向きが変わる。この特徴から、TECは小型温度調節機の基本構成要素として使用されている。

 TECの問題点は正負両極の駆動を要することで、そのために駆動回路の設計が複雑になる。所望の方向に熱が伝わるようにTECの駆動方向を切り替えるには、デュアルの両極電源、あるいはパワートランジスタで構成したHブリッジ型の出力回路が必要となる。本稿では、そうしたデュアル電源や複雑な両極駆動回路が不要なTEC駆動回路を紹介する。その回路は、電力効率よりも回路構成の簡素化が重視される用途に適している。

 本稿の回路では、すべてのTECが備える特性を利用する。その特性とは、駆動電流を増大させていくと、TEC内での熱特性が逆転するというものである。TECでは、冷却能力が最大になる駆動電流IMAXが規定されている。IMAXを基準とする駆動電流に対し、吸熱/発熱により発生する温度差をプロットすると、図1に示すような放物線形状となる。左側の灰色部分はTECが双方向特性を示す領域である。通常はこの領域でTECを利用する。その駆動電流Iは、

−0.5×IMAX<I<IMAXの範囲となる。他方、右側の白色部分が本稿の例で利用する領域である。この領域では一方向に流れる電流によって加熱/冷却の両方の温度変化が得られる。この領域での駆動電流Iは、IMAX<I<2.5×IMAXの範囲となる。この領域でTECを動作させれば、複雑な両極駆動回路を用いずに、温度を両方向にコントロールできる。

図1 TECにおける駆動電流と温度変化の関係 図1 TECにおける駆動電流と温度変化の関係 駆動電流が増えると、一方向の電流で加熱と冷却が可能になる。横軸は駆動電流の量を表し、その値は通常の使用法において冷却能力が最大になる電流IMAXを基準としている。

 この考え方を具体化した温度調整回路が図2である。この回路は高性能なPID(proportional integral derivative:比例積分微分制御)フィードバック回路として構成している。部品点数は通常の両極駆動回路の1/4以下で済み、安定かつセトリング時間も短い。

 図1から明らかなように、この回路の欠点は駆動電流が大きいことである。通常の両極駆動回路における電流の約1.5倍程度になるはずだ。そのため、ここで紹介した方法は、消費電力と発熱に対する要求が厳しくない用途や、小型のTECを利用する場合に適している。

図2 単極駆動の温度調整回路 図2 単極駆動の温度調整回路 PIDフィードバック回路によりTECを単極で駆動し、対象デバイスの温度を安定化する。

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