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» 2008年05月01日 00時00分 公開

イミュニティを高める設計技法:RFノイズの侵入を阻め! (4/5)

[Paul Rako,EDN]

RFノイズの侵入経路

 次にRFノイズの対策を行う設計者が知るべきことは、RFノイズの侵入経路である。RFノイズが1GHz程度の周波数で電力も小さければ、ICそのものがアンテナとして働くことはない。しかし、その周波数が数十ギガヘルツと高い場合、IC内部のボンディングワイヤーなどの短い配線や微小な容量に対して侵入しやすくなる。さらに注意が必要なのは、性能やパッケージが同程度のICでも、メーカーごと、あるいはロットごとにリードインダクタンスや入力容量が異なることからRFノイズに対する症状も異なることだ。

 Microchip Technology社応用技術部門主任のKumen Blake氏は、ICに対するRFノイズの影響について「入力にFETを用いるCMOSオペアンプはバイポーラのものよりも復調作用が弱い。しかし、CMOS部品でもRFノイズが大きくなればそれに応答するようになる」と指摘した。「CMOSトランジスタも、逆バイアスされると、RFノイズを受信する接合トランジスタとして動作する。つまり、どのようなオペアンプもRF/マイクロ波の周波数帯域をDC信号に変換する働きを有している」(同氏)という。さらに同氏はその症状について、「多くの技術者はRFノイズが侵入することによってどのような症状が生じるのかを理解していない。例えばDCレベルの変動がRFノイズの影響だとは気が付いていない。しかし、DCレベルの変動はRFノイズによって引き起こされる症状の1つであり、この現象が確認されたときは、いち早くRFイミュニティの向上を図るチャンスなのだ。同様に、周波数変動や高調波歪などもRFノイズによる症状の1つだ。最悪の場合、回路が正常に動作しなくなってしまうこともある」と説明した。

図4 ICの入力端子におけるRFI/ESD対策 図4 ICの入力端子におけるRFI/ESD対策 入力端子にシリーズ抵抗と接合容量の大きなクランプダイオードを接続すると、ESD保護とRFI耐性の強化に対する効果がある(提供:MaximIntegratedProducts社)。 

 このようにICという小さな部品も、RFノイズの影響を受ける。そのため、本稿の冒頭で紹介したAnalog Devices社の例のように、ICにおいてもRFイミュニティを確保するための工夫がなされている。

 例えば、米National Semiconductor社は、同社のオペアンプ「LMV851」にRFノイズの除去機能を組み込み、さらにICの各端子のEMI耐性を表すEMIRR(EMI rejection ratio)という指標を導入している*6)

 また、Analog Devices社の製品もその一例だが、ある種のICでは、RFイミュニティを確保するために、入力回路に工夫が施されている。入力回路部に小さい値でもよいので抵抗があると、ESD(electrostatic discharge:静電気放電)保護ダイオードなどの浮遊容量との間でフィルタ回路が構成され、RFノイズがグラウンドに効果的にバイパスされるのだ(図4)。例えば、米Maxim Integrated Products社のオペアンプ「LMX324」では、ESDに対する耐性とRFイミュニティの向上を図るためにこの手法が採用されている。ただし、この手法には、入力信号の帯域幅を狭め、位相余裕をわずかに減少させるという欠点がある。

図5 RF放射源の例 図5 RF放射源の例 銅板で覆ったプリント基板のグラウンドパターンにはんだ付けしたアンテナを両サイドから引き出している。この状態でプリント基板に実装された回路を高速動作させると、直流的にはグラウンドレベルになっているはずのアンテナから高い強度のRFノイズが放射される(提供:GlenDash氏)。

 IC以外には、当然のことながら、プリント基板のパターンがRFノイズの侵入経路として考えられる。しかし、ここに1つの盲点がある。それは、グラウンドや電源のパターンは、その経路として認識されていないということだ。グラウンドパターンや電源パターンも、ある程度のインピーダンスを有する。そのため、RFノイズを受信したり、RFノイズを放射したりすることがある。例えば、サイズが20cm×20cmのプリント基板にリング状のグラウンドパターンを形成した場合、パターン上の各点の電位は等しくならない*7)。これがRFノイズの侵入経路となる原因の1つである。

 電子機器関連の規格と法規に関する多くの論文を執筆しているGlen Dash氏は、このようなプリント基板を使用して興味深い実験を行った。その実験では、デジタルICを実装したプリント基板のグラウンド面の両端にアンテナ線をはんだ付けし、そのプリント基板全体を銅板で覆った。その状態でデジタルICを高速/大電流で動作させると、アンテナから強いRFノイズが放射されたのである(図5)。経験ある技術者でも、グラウンド面にはんだ付けされたアンテナから電磁波が放射されることなどないと考えるかもしれない。しかし、それは間違いである。


脚注

※6…De Wagt, Gerrit, and Arie van Staveren, "A Specification for EMI Hardened Operational Amplifiers, Application Note 1698," National Semiconductor, September 2007. http://www.national.com/an/AN/AN-1698.pdf

※7…Dash, Glen, "EMI: Why Digital Devices Radiate." http://glendash.com/Dash_of_EMC/Why_Devices_Radiate/Why_Devices_Radiate.pdf


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