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デジタルビデオが変える組み込み機器の未来(2/3 ページ)

» 2008年05月01日 00時00分 公開
[Warren Webb,EDN]

ディスプレイの進化

 ディスプレイ画面は、組み込みビデオシステムにとって非常に重要な要素である。ほとんどの製品には、アクティブマトリクス方式の液晶ディスプレイ(LCD)、あるいは最近では有機EL(electro luminescence)ディスプレイが採用されている。

 LCDは、消費電力が少なく、軽量で、画質、応答速度、信頼性に優れるため、現時点では最も普及しているディスプレイである。2枚の垂直偏光ガラスパネルで挟まれた液晶のセルで構成されており、薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)によって駆動する。電流によって液晶の偏光特性が変化し、セルを透過する光が遮断される。

図1 ソニーの有機ELディスプレイ 図1 ソニーの有機ELディスプレイ プラスチック基板上に有機TFTを集積することで、軽量でフレキシブルなフルカラー有機ELディスプレイが実現されている。

 一方、有機ELディスプレイは、LCDよりも少ない消費電力と製造コストで、より明るくコントラストが鮮明な画像を表示できる可能性を秘めている。そのため、組み込みシステム分野で脚光を浴びつつある。有機ELには有機化合物の発光材料が用いられ、RGBの発光材料がTFT基板上に塗り分けられる。従来のLCDとは異なり、有機ELディスプレイではバックライトが不要であり、応答速度が速いといった特徴がある。欠点を挙げるとすれば、一部の発光材料の寿命が短いことだろう。

 ソニーは、有機TFT技術に基づいたフレキシブルでフルカラーの有機ELディスプレイを発表している(図1)。通常、有機ELディスプレイはガラス基板を用いて製造されるが、ソニーは有機TFTを直接プラスチック基板に集積する技術を開発し、薄く、軽く、かつフレキシブルなフルカラー有機ELディスプレイを実現した。同社は画面サイズが2.5インチで厚さが0.3mmのディスプレイを試作、120×160ピクセル解像度で表示色数1680万色を実現している。

高機能な「スマートカメラ」

 一般的に、部品のパッケージ/配置の検査、組み立ての検証といった産業分野の自動検査においては、リアルタイム画像を解析するためにかなりの画像処理が必要となる。この処理を簡略化するものとして、米National Instruments(NI)社は、スマートカメラ「NI 1722」、「NI 1742」を発表した(図2)。産業用コントローラ、イメージセンサー、映像解析ソフトウエアを組み合わせることで、単なる画像ではなく検査結果を直接得ることができる。

図2 スマートカメラ「NI1742」 図2 スマートカメラ「NI1742」 

 NI 1722にはNI社のソフトウエア「Vision Builder AI」が付属しており、プログラミングすることなく、マシンビジョンアプリケーションの設定/利用を可能にするメニュー形式の環境が提供されている。また、より高度な用途向けに、エッジ検出、パターンマッチング、文字認識など、NI社の「LabVIEW」が備える画像処理およびマシンビジョンアルゴリズムのライブラリ全体との互換性を有している。

 NI 1722とNI 1742はそれぞれ、400MHzと533MHzの「PowerPC」プロセッサを搭載しており、両カメラともに、640×480ピクセルのモノクロCCD(charge coupled devices)イメージセンサー(ソニー製)とI/Oを搭載している。このI/Oには、2つの光絶縁デジタル入力、2つの光絶縁デジタル出力、1つのRS-232シリアルポート、2つのGbE(Gigabit Ethernet)ポートがあり、Modbus TCP(transmission control protocol)などの工業用プロトコルに対応している。加えてNI 1742は、位相差出力(quadrature)エンコーダをサポートし、照明用の電源なしでカメラから照明を直接駆動するコントローラを内蔵している。また、最大500mAの定電流と1Aのストロボ電流を出力するLED照明ドライバを備えている。NI 1722およびNI 1742の価格はそれぞれ、1999米ドルと2499米ドルである。

フォーマット変換

 今日の多種多様なモバイル機器に対応するには70種類ものビデオフォーマットをサポートする必要がある。そのため、コンテンツプロバイタはその多様なビデオ形式間の変換を行うトランスコーダに目を向けている。トランスコーディングとは、異なるコーデック方式を採用するターゲット機器に合わせて、別の形式へとデジタルからデジタルへの直接変換を行うことである。その際には、まず元のデータを中間形式のデータに圧縮し、それをターゲットとする形式に再符号化する。

 米Texas Instruments社は、メディアゲートウエイやマルチポイント制御ユニット、セットトップボックスなどにおけるビデオトランスコーディング向けに、新たなデジタルメディアプロセッサを提供している。DSPベースのプロセッサSoC(system on chip)である「TMS320DM6467 DaVinci」は、リアルタイムでのマルチフォーマットのビデオトランスコーディングを実現する。プロセッサコア「ARM926」と600MHzのDSPコア「C64x」を、ビデオコプロセッサ、変換エンジン、目的に適したビデオポートインターフェースとともに搭載している。その性能は、前世代品と比べて10倍向上しているという。価格は35.95米ドル(量産価格)である。

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