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車載用レギュレータにも適用可能な入力保護回路Design Ideas

» 2008年05月01日 00時00分 公開
[Kevin Daugherty(米National Semiconductor社),EDN]

 スイッチングレギュレータ(SMPS:switching mode power supply)に対して、通常動作時の電圧範囲を大きく超える高い電圧が過渡的に入力されるケースがある。例えば、車載用途では、その電圧が50Vにも達することも珍しくない。このような用途におけるレギュレータの設計では、そうした最大入力電圧に堪えられるような定格を持つ部品を集めた設計にするか、あるいは入力保護回路を利用するかのいずれかの方法を選択することになる。本稿では、後者の例として、回路構成が簡単でコスト面でも有利な入力保護回路を紹介する(図1)。


図1 スイッチングレギュレータの入力保護回路 図1 スイッチングレギュレータの入力保護回路 nチャンネルMOSFETおよびツェナーダイオードにより保護回路を構成する。これによって、車載用途では50Vにも達する過渡的な入力電圧からスイッチングレギュレータを保護することが可能となる。

 この回路では、過大な入力電圧をクランプする手法でスイッチングレギュレータを保護する。例えば、バッテリからの最大50Vにも達する過渡入力に対する保護が行える。レギュレータ回路を構成する各部品の定格電圧は、入力保護回路がなければ50V以上が必要だが、この回路を使えばそれより低い電圧でも構わない。また、この例で用いているレギュレータ「LM2734Z」のスイッチング周波数は3MHzと高いため(出力電圧は18Vまで)、外部部品を小型化でき、実装面積とコストを抑えられるという利点がある。

 図1の回路において、入力保護機能はnチャンネルMOSFETであるQ1、抵抗R1、ダイオードD1、D2、コンデンサC5によって実現される。nチャンネルMOSFETのQ1のソースは、レギュレータの起動時にはグラウンドレベルにある。Q1は、そのゲートにバッテリ電圧がR1を介して加わることによってオンになる。レギュレータIC1への入力電圧が2.74Vを超えると、IC1のスイッチング動作が始まる。それにより、ダイオードD3、D4、コンデンサCBから成るブートストラップ回路が充電される。この充電電圧は、ほぼVOUT−VFDに等しく(VFDはD3の順方向電圧)、これがQ1のゲートに加わる。このゲート電圧は、ブートストラップ回路のダイオードがオフになったときにもC5の作用により保持される。

 通常動作時には、例えば8V〜18Vの範囲のバッテリ電圧に対しても、D1の作用によりQ1の導通状態が維持される。Q1のゲート電圧は、入力電圧から約2.5Vだけ高いレベルに保持される。

 入力電圧が上昇し、D1のツェナー電圧(逆方向の降伏電圧)を超えると、IC1への入力電圧は(D1のツェナー電圧VZ)−(Q1の閾値電圧)となる。実際の値はほぼ20V−2V=18Vであり、IC1の絶対最大定格である24Vに比べると十分に低い。

 Q1の選択に当たっては、最大入力電圧、ゲート‐ソース間の閾値電圧、定常動作時および過渡的動作時の発熱条件に対する許容電力などを注意深く考慮しなければならない。ドレイン‐ソース間電圧として30Vを許容するものを選べば、ツェナーダイオードD1のツェナー電圧が20Vであることから50Vの入力を許容することができる。

 なお、使用するMOSFETの種類によっては、レギュレータの出力レベルが低すぎて、MOSFETを完全にオンにできないことがある。そのような場合には、ツェナーダイオードを追加してブートストラップ電圧を高くすればよい。これについては本稿の例でIC1として用いたLM2734Zのデータシートに記載されている*1)

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