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» 2008年06月01日 00時00分 公開

外部電源、その「高効率化」に待ったなし!規制強化の現状と、効率向上のポイントを探る(3/3 ページ)

[Margery Conner,EDN]
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規制強化への対応策

 米Texas Instruments社の主席電力技術者兼フェローであるBob Mammano氏は、ENERGY STAR EPSバージョン2.0に準拠するための設計においては、「バージョン1.1への対応と比べて、技術レベルの飛躍的な向上が必要になる」とした上で、次のように指摘している。

 「従来と同じ方法を採用し、それに対する改善を行うだけで、より厳しい規約に対応するのは難しい。すなわち、別の方法が必要になる。スタンバイ状態において、最大負荷時に最適な高速周波数でスイッチング動作をさせ続けていては無駄が生じる。共振スイッチング方式やマルチステート動作を採用し、構成を大きく変えて、スイッチング損失を最小化するといった対応が必要になる」(同氏)。

 TI社のPWM(pulse width modulation:パルス幅変調)コントローラIC「UCC28600」は、同社が「環境に優しい製品」として開発したものである。無負荷時あるいは低負荷時に動作周波数を低下させるための周波数フォールドバック機能と「グリーンモード動作」機能を内蔵している。価格は、65米セント(100個購入時)である。

 スイスSTMicroelectronics社のアプリケーションマネジャであるVipin Bothra氏も、「負荷の違いをはじめとするさまざまな条件の下で、EPSの効率を向上させる最もコスト的に有利な方法は、より高機能なコントローラICを利用することだ」と説明している。同社のコントローラIC「L6668」は、出力負荷を検知し、それに対応して3つのモードで動作する。例えば、3つのモードの出力電力をそれぞれ0W〜1W、1W〜30W、30W〜最大出力に設定することが可能となっている。その価格は68米セント(1万個購入時)である。

 Power Integrations社のブログ『Mr. Green』(http://www.powerint.com/wordpress/)には、2006年のENERGY STAR DTA(digital television adapter)会議における議論の様子が記されている。この会議で、ある参加者がDTAの設計例を提示した*7)。その設計例は、5WのAC-DCアダプタ回路を含むもので、部品点数が少なく、コスト効率が良く、エネルギ効率が高いものだった。このアダプタの稼働モードにおける効率は74%で、ENERGY STAR、CEC、欧州連合(EU:European Union)、韓国などにおける当時の最低基準であった63%を上回っていた。また、この74%という効率は、一般的なリニア電源装置の稼働モードにおける50%という値をはるかに上回っている。さらに、そのBOM(bill of materials:部品表)コストは、通常のトランスを用いた製品よりもわずか数米セント高いだけだ。エネルギ消費量の削減による消費者にとってのペイバックタイム(高い価格分を取り戻すまでの期間)も、わずか数カ月であった。

 この設計例では、無負荷時の消費電力を100mWから40mWへと半分以下に削減するのに、基本的にコストはかからなかったことになる。しかし、ENERGY STAR EPSバージョン2.0の規格を満たすには、さらに高度なコントローラICが必要となる。幸い、そうしたICの価格は低下しつつあり、まだ許容範囲内のコストで、高い効率を実現することができそうだ。

「PFC」に要注目

 ENERGY STAR EPSバージョン2.0では、初めてPFC要件が定められる。これは、PNOが75W以上の電源装置にのみ適用される。

 従来の一般的な電源装置は、ダイオードを使った整流器がコンデンサに電力を供給する形となっている。この場合、負荷に対する電圧がコンデンサにおける電圧を超えた場合にのみ電流が流れる。整流器の特性は線形ではないため、入力電流は非線形で、高次の高調波の形でエネルギが浪費される。もともとのエネルギはAC電源から受け取るわけだが、電源装置ではその一部しか負荷に供給できないのである。ここで、電力会社が供給するエネルギに対し、負荷において使用可能なエネルギの比率を表す「力率」という概念が用いられることになる。通常、PFC回路は昇圧または降圧型の変換器として構成される。

 ENERGY STAR EPSバージョン2.0にPFC要件が追加されるということは、メーカーは新しい規定を満たさなければならなくなるということを意味する。それにより、多くの電源アダプタ製品のコストがかなり上昇する。例えば、TI社のコントローラICであるUCC28600とともに使用可能な同社のPFC 制御IC「UCC28060」の価格は、1.75米ドル(100個購入時)である。

 ENERGY STARプログラムの目的は、単に電源装置の効率向上を図ることにとどまらない。それだけでなく、温室効果ガスの排出量を削減することも目的としている。製品のPFCが優れているほど、電力変換ネットワークにおける電力損失は削減され、排出される温室効果ガスは減少する。

PFCで先行する照明分野

 ENERGY STAR EPSバージョン2.0では、75W未満のレベルの製品に関してはPFCの規定の対象としない。このことから、電力量の少ない製品ではPFCはさほど重要なものではないと考える人もいるだろう。しかし、その考えは誤りである。例えば、照明アプリケーションの電力システムには、数年前からPFCが組み込まれている。

 一般的なEPSの分野には、設計者やベンダーが数多く存在し、いずれも非常に競争の激しいローエンド市場をターゲットとしている。そこでは、数米セントの差によって利益が大きく変動する。加えて、その市場のエンドユーザーである一般消費者は、EPSをいくつも購入するわけではない。さらに、EPSの用途では、効率に多少差があっても、ユーザーの電気料金に目に見えるほどの大きな影響が現れることは少ない。

 それに対し、照明業界には、主要企業は数えるほどしか存在しない。またその用途においては、電力効率が数パーセント上昇するだけで電気料金に目に見える効果が現れる可能性がある。STMicroelectronics社のBothra氏は、「当社のPFC制御ICのほとんどは、照明用途に用いられている」と語っている。このことは、16W程度の低い電力レベルでも、PFCによる差が得られることの証である。ENERGY STARは、ソリッドステート照明(LEDを用いた照明器具)の規格を策定し、2008年10月に施行する予定である*8)

 EPSの業界では、PFCの要件に対する懸念の声が上がったが、照明業界では、電力レベルがかなり低いのにもかかわらず、PFCの必要性に関してほとんど議論は生じなかった。電源とは異なり、照明においては、業界の規約を上回るエネルギ効率がすでに実現されているのである。


脚注

※7…"What Price Highest Efficiency?" Mr. Green, Aug 2, 2007.

※8…"Final ENERGY STAR Program Requirements for Solid State Lighting Luminaires: Eligibility Criteria, Version 1.0," ENERGY STAR.


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