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最新センサーデバイスが変える予防安全システム(4/6 ページ)

» 2008年09月01日 00時00分 公開
[本誌編集部 取材班,Automotive Electronics]

最新センサー技術(2)“慣性”研ぎ澄ますMEMSセンサー

 自動車の安全システムのうち、1980年代に登場したABSやエアバッグは、現在ではほとんどの車種に標準搭載されるようになった。そして、ABSは、TCSやESCという形で進化を遂げ、エアバッグは、運転席だけでなく、助手席、サイドエアバッグなど、搭載個所を増やしている。これらの市場拡大を支えるのが、加速度/角速度などの慣性や圧力を検知するMEMSセンサーである。


■小型・簡素化進むESC

図6 ESCのシステム構成(提供:ボッシュ) 図6 ESCのシステム構成(提供:ボッシュ) 
図7 小型化・軽量化するESCの構成部品(提供:ボッシュ) 図7 小型化・軽量化するESCの構成部品(提供:ボッシュ) 1995年のESP5.0(左)と比べて、現行のESP8.2では個別の部品が小型化するとともに、部品の統合も進んでいる。
図8 Bosch社の慣性センサーユニットの開発ロードマップ(提供:ボッシュ) 図8 Bosch社の慣性センサーユニットの開発ロードマップ(提供:ボッシュ) 1995年は機械式だったが、1998年以降MEMSセンサーを採用。ヨーレートと横Gセンサーの一体化も可能になった。

 1978年にABS、1986年にTCS、そして1995年にESCと、自動車の足回りに関する予防安全システムを世界で初めて市場投入して来たのがRobert Bosch社である。これらのシステムに使用するセンサーデバイスの開発も行っており、MEMSセンサーについても世界トップクラスの技術力を持つ。

 車輪速センサーとブレーキを制御する油圧ユニットだけで構成されるABSとTCSに対して、ESCはさらに多くのセンサーを利用している(図6)。車輪速はもちろん、車両中央で車両の回転速度(ヨーレート)と横方向にかかる加速度(横G)を検知しながら、ステアリングの舵角情報も利用して、油圧センサーを内蔵した油圧ユニットで各車輪のブレーキ制御を行い、横滑り防止をはじめ、自動車の足回り動作を安定させる。

 日本法人ボッシュでシャシーシステムコントロール事業部開発・製造担当執行役員を務める田上雅弘氏は「最初に市場投入した『ESP 5.0』では、ヨーレートや横Gの検知は機械式スイッチを応用したセンサーを使用しており、ステアリング舵角センサーもホール素子を利用したもので、現在よりもかなり大規模なシステムだった」と語る(図7)。しかし、2007年から発売している「ESP 8.2」では、ヨーレートと横GはMEMSセンサーの採用で一体化した慣性センサーユニットとなり、ステアリング舵角も巨大磁気抵抗(GMR)センサーにより高精度な計測が可能になっている。さらに、ECUと一体化した油圧ユニットは容積1.7リットル、重量2.2kgとESP 5.0の約半分にまで小型・軽量化した。2009年発売予定の「ESP Gen 9」では、ESP 8.2からさらに25%の重量削減を進める。慣性センサーユニットについても、2010年にはさらなる小型化を計画している(図8)。

ボッシュの田上雅弘氏 ボッシュの田上雅弘氏 

 ボッシュのシャシーシステムコントロール事業部は、1984年設立の日本ABSから、1999年のボッシュブレーキシステム、2002年のボッシュオートモーティブシステム、2005年に現ボッシュとなってからも、一貫してABS、TCS、ESCの国内市場への普及に努めてきた。「ESCは、国内でも1995年にトヨタの『クラウン・マジェスタ』に採用されており、1996年からは日産などに国内での開発・生産品を納入するようになった。現行のESP 8.2では、標準品に加え、低速時のブレーキ性能や静粛性を高めた『ESP Plus』、油圧ポンプを2個から6個に増やして機敏性やスポーツ性を高めた『ESP Premium』と3モデル設定しているが、ESP Gen 9ではさらにモデルを増やして、ESC装備率が低い国内市場での採用を広げる一助としたい」(田上氏)という。

 ESCは、米国と欧州で標準装備を推進していることもあり、2007年生産の乗用車と6トン未満の商用車では3台に1台が装備するようになっている。しかし、国内市場の新車では、ESC装備率は14%に過ぎず、SUVや高級車への普及に留まっている。田上氏は「ESP Gen 9の投入により、国内市場の過半を占める軽自動車、コンパクトカー、ミニバンへのESC普及を進めたい。さらに、ドイツ車で採用されている、ステアリング、サスペンション、エンジンなどの協調制御システムの提案も強化したい」と意気込む。

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