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» 2008年09月01日 00時00分 公開

プロセッサの選択肢を広げるソフトウエア開発ツール(2/2 ページ)

[Robert Cravotta,EDN]
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開発ツールの実例

 設計者に対し、より多くのプロセッサのアーキテクチャを検討できるような柔軟性を提供するには、半導体ベンダーやソフトウエア開発ツールを開発するパートナ企業が何らかの対策をとらなければならない。多くの企業は、プロセッサ製品間で共通の周辺ブロックを使用し、周辺機能の種類ごとに一貫したインターフェースをサポートしている。現在では、設計者による周辺機能の構成(コンフィギュア)/使用を支援するために、デバイスマネジャ、構成ウィザード、プロセッサエキスパート、デバイスのイニシャライザツールなどが多くの企業から提供されている。設計者は抽象度の高い状態で作業することができ、周辺機能を明示的に特定の状態にするために新たに何かを学習する必要はない。これにより、設計者はツールがサポートするデバイス間で、より柔軟に移行することが可能になる。ただし、ハードウエアアクセラレータや高度な周辺機能といった専用ブロックの処理性能と消費電力によって得られる効果について、汎用ブロックとの比較を行って理解する必要はある。

 ICの選択を柔軟に行えるようにするために、さまざまな方法が提供されている。Microchip社の共通コードベースは、設計者が16ビットと32ビットの「PIC」マイコン間で移行することを可能とし、アーキテクチャ上の違いを抽象化して、仮想周辺機能を表現する共通のAPI(application programming interface)を提供する。定義済みの周辺ブロックは一貫した使い勝手と動作を実現する。また、周辺機能用にI/O端子をマッピングし直すことができる。

 ルネサス テクノロジは、2007年11月にプロセッサファミリ「RX」を発表した。同社の前身である三菱電機と日立製作所の16/32ビットプロセッサ間で周辺IPを統一することが同ファミリの狙いの1つである。また、ルネサスは、より多くのアーキテクチャの検討を可能とするために、共通のソフトウエア開発/評価/最適化/検証技法を用いる専用プロセッサプラットフォーム「EXREAL(Excellent Reliability Efficiency Agility Link)」も提供している。RXファミリ向けに、このEXREALのコンセプトをマイコンに適用した「MCU開発プラットフォーム」を発表している。

図1 Freescale社のプラットフォーム「Flexis」 図1 Freescale社のプラットフォーム「Flexis」  
写真1 Texas Instruments社のプラットフォーム「DaVinci」 写真1 Texas Instruments社のプラットフォーム「DaVinci」 

 米Freescale Semiconductor社の「Flexis」は、8ビットと32ビットのアーキテクチャにまたがるプラットフォームである(図1)。両アーキテクチャ間を上位にも下位にも移行可能にするソフトウエア開発環境により、価格、性能、消費電力にかかわるトレードオフに柔軟に対応できるようにすることを目的としている。Freescale社で民生/産業用マイクロコントローラ部門のグローバル製品マーケティングマネジャを務めるJeff Bock氏によると、「Flexisを利用する設計者のうち、8ビットと32ビットのどちらをターゲットとするかが最初から決まっているのは50%。25%は両方のアーキテクチャをターゲットとし、残り25%は両方のアーキテクチャを検討してアプリケーションコードを開発し、両方のアーキテクチャの違いを比較してからどちらを選択するかを決定する」という。

 米Texas Instruments社のプラットフォーム「DaVinci」(写真1)は、前世代の「OMAP(Open Multimedia Applications Platform)」を進化させたものである。DaVinciでは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、DSP、FPGA、あるいはハードウエアアクセラレータをどのような組み合わせで使ってもよい。すなわち、設計者は複数の異なるコアを使用するかもしれないが、DaVinciのソフトウエア開発モデルではAPIによってその実装が抽象化される。従って、設計者はポーティングにさほど苦労することなく、より新しいチップに移行できる。

 すべての組み込みプロセッサベンダーが考慮すべき重要な問題がある。それは、APIやソフトウエア資産の維持に理想的なアプリケーション層において作業したいと考える設計者もいれば、アセンブリ言語によるプログラミングによって、ハードウエアの抽象化層あるいはそれ以下のチップレベルなど、より低いレベルでシステムに介入したいと考える設計者もいるということだ。それぞれの設計者がシステム開発において異なる情報を得たいと考えるため、この状況は大きな課題を呈する。

評価キットの効果

 最新のプロセッサシステムとそれを取り巻くエコシステムの大きな特徴は、従来よりも多くの検討を実施する余地が設計者に与えられていることである。多くのプロセッサ製品では、チップ本体だけでなく、評価ボードやデモボードも用意される。最新の評価キットの主な目的は、設計者によるプロセッサファミリの検討を容易化し、自身のプロジェクトにおいて最適な候補を迅速に判断できるようにすることである。

 最新の評価キットは、目的にぴたりと適合するソフトウエアをハードウエアに統合することにより、設計者がすぐに行動を開始できるようにすることを目的として提供されている。また、そうしたシステムは、最初に起動したとき、直ちに正しく動作することが保証されているので、設計者の時間の節約にもつながる。開発キットのトラブルシューティングのために重要な時間を費やしてしまうことはない。設計者はより多くの処理オプションを検討することができ、半導体ベンダーは自社製品を設計者にとってよりアクセスしやすいものとすることが可能である。

 プロセッサベンダーは、こうした開発キットにおいて、さまざまなプロセッサをサポートする最適化された共通のソフトウエアライブラリを構築している。個々のプロジェクトに合わせてプラットフォームを拡張/最適化し、プラットフォームに適した開発を行うことを可能にするためである。


 最新のソフトウエア開発ツールを利用することにより、設計者はプロセッサベンダーが提供する将来のバージョンにおいても、それまでの経験を生かすことができる。一方、プロセッサベンダーは、ソフトウエア開発ツールをより良いものにしたいと考えている。ソフトウエア開発ツールは、ハードウエアとソフトウエアから成るシステム製品における重要な要素だからである。

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