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» 2008年11月01日 00時00分 公開

磁気センサー活用への第一歩用途に最適な製品を選択するために(4/5 ページ)

[Paul Rako,EDN]

フラックスゲート型センサー

 フラックスゲート型センサーは、DC磁界の測定に対応可能であり、地磁気方位計(磁気コンパス)などに利用される。このタイプのセンサーはホール効果型センサーより感度が高い。

 フラックスゲート型センサーの構造はさまざまである。最も代表的なのは透磁率の高いコアに励磁用のコイルと検出用のコイルを巻いたものであろう。励磁用のコイルに周期性を持ったAC電流を印加すると、コア内の磁束密度が周期的に飽和する。検出用のコイルには、コアの磁束密度の変化に応じて電気信号が誘起される。誘起される電気信号は外部の磁界がない場合、正負に相似の波形になる。一方、外部の磁界が重畳されている場合には、磁束密度が飽和するタイミングが異なるので、正負の振幅に変化が生じる。この変化分を位相検波器などによって検出してフィルタリングすることにより、外部の磁界に対応する出力信号が得られる。励磁に用いる信号を高速に変化させることで、60Hzをはじめ、オーディオ周波数に達するほどのAC磁界の測定が可能になる。

■製品の例

 高い感度が必要な用途に対しては、フラックスゲート型センサーが候補になる。このタイプの製品例としては、英Bartington Instruments社が開発した「Mag-03MC」がある。3軸測定に対応し、測定範囲は70μT〜1mT、精度はDC〜3kHzの周波数範囲で±0.5%である。この製品は、GMW Associates社から3190米ドルで供給されている(デジタイザの「Mag-03DAM」を含む場合には5750米ドル)。同社は、Mag-03MCなどの各種磁力計で得た測定結果を解析するための製品として、米National Instruments社のグラフィカル開発環境「LabVIEW」に対応したドライバも供給している。

 フラックスゲート型センサーの駆動/検出には、例えば米Texas Instruments社のIC「DRV401」などが利用される。このICはドイツVacuumschmelze社製の誘導型磁力計をターゲットとしたものだが、この磁力計の動作はフラックスゲート型センサーのそれと類似している。DRV401から正負両極性の矩形波電流をコイルに印加すると、DRV401とコイルによって形成されるループが自励発振する。この発振波形のデューティサイクルは、外部から磁界が印加されていない場合には50%になる。一方、外部から磁界が印加されていると、その磁界の向きと強度に対応してデューティサイクルに変化が生じる。この方法により、100kHzに達する周波数の磁界まで測定できる。

磁気抵抗型センサー

 磁気抵抗効果を利用するセンサーも多数供給されている。磁気抵抗効果とは、磁界によって電気抵抗が変化する現象のことである。この現象の基礎的な理論は、アイルランドの物理学者で技術者でもあり、一般的にはKelvin卿と呼ばれるWilliam Thomson氏によって1856年に発見された。その後、センサー素子を金属薄膜によって生成する技術が進化して広く使用されるようになった。このタイプのセンサーは、DC磁界もAC磁界も測定できる。また、抵抗性素子であるため高周波動作が可能という特徴を持つことから、磁気ディスク装置に使用される。

 このカテゴリのセンサーには、異方性磁気抵抗(AMR:Anisotropic Magnetoresistance)や巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magnetoresistance)あるいはトンネル磁気抵抗(TMR:Tunneling Magnetoresistance)といった各効果が利用される。材料や構造としては、パーマロイ(Ni-Fe)などの強磁性薄膜(AMR)や、鉄‐クロム(Fe-Cr)などの強磁性/非強磁性複合薄膜(GMR)、あるいはFe‐Al2O3‐Feなどの磁性体‐絶縁層‐磁性体複合薄膜などの材料/構造が用いられる。これらの各効果では、磁界に対する抵抗の変化率が、一般の磁気抵抗効果に比較して非常に大きい。

 AMRセンサーは米Honeywell社などから供給されており、磁気コンパスやギヤ位置検出器などに広く使用されている。また1995年に、日本の物理学者、宮崎照宣博士は室温での巨大なTMR効果を発見した。この発見がブレークスルーになり、TMRセンサーはハードディスクドライブのヘッドに応用され、今日の高速/高密度製品が実現された。

■製品の例

 米Micro Magnetics社のTMRセンサーは、微小範囲の磁界測定に適している。同社の測定器関連プロジェクトマネジャであるBen Schrag氏は、「このセンサーは、数μmオーダーという微小範囲の磁界を測定できる」と語る。同社の「STJ-020」は価格が325米ドルで、感度が5nT、リニアリティが0.25%、対応周波数は高く5MHzに達する。このような高い周波数に対応できる理由は、センサー素子が抵抗性であることだ。抵抗値の低いセンサーを特注すれば、100MHzまでの周波数に対応できる。また、センサー素子は1チップ上にアレイ状に形成することができ、それぞれが取得した信号の値を平均化することにより高い感度を実現できる。

 AlphaLab社も微弱なDC磁界の測定をターゲットとする磁気抵抗センサー製品を販売している。分解能が0.01mG(1nT)、測定範囲が最大±2G(200μT)の製品があり、オフセットとゲインの温度変化係数はそれぞれ0.01mG/℃以下、0.0015%/℃以下。ゲインの精度は±0.5%、メーターのオフセットは±0.5mGである。価格は490米ドル。

 磁気抵抗型センサーからの信号を検出/処理するための信号処理ICとしては、例えば米Maxim Integrated Products社の「MAXQ7665」がある。この製品は、16ビットのマイクロコントローラをベースとし、アナログフロントエンド、プログラマブルゲインアンプ、ブリッジ型駆動回路などから構成されている。自動車分野のステアリング角度の検出/制御での利用を意図して開発されたものだ。Maxim社の技術者Mike Mellor氏によれば、「同製品のマイクロコントローラは、積和演算によってセンサーからの信号に対してフィルタ処理を施すことで角度を計算する」という。また、同製品は、CAN(Controller Area Network)バスおよびUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)などのインターフェース機能を備える。

極めて高感度な「SQUID型センサー」

 最も高い感度を備える磁気センサーは、SQUID(Superconducting Quantum Interference Devices:超伝導量子干渉素子)型センサーである。超伝導の状態にあるリングに外部から磁界を加えると、リングにはその磁界を打ち消すように電流(遮蔽電流)が流れる。リングの一部に細い部分(ジョゼフソン接合)を作っておくと、そこにわずかな遮蔽電流が流れただけで超伝導の状態が崩れる。すなわち、常伝導の状態となって、細い部分に電圧が生じる。SQUID型センサーはこの原理を利用したもので、わずかな磁場の変化に対応して電圧を取り出すことが可能である。

 SQUID型センサーは、「脳や心臓の神経細胞に発生する磁界を測定できる」(AlphaLab社のLee氏)ほど、非常に高い感度を持つ。そのため、使用時には「半マイル遠方を走るトラックの影響があるほどなので、十分な磁気シールドが不可欠」(同氏)となる。


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