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» 2009年01月01日 00時00分 公開

次世代パワーデバイスの電動自動車応用の可能性 (2/3)

[四戸 孝(東芝 研究開発センター 電子デバイスラボラトリー),Automotive Electronics]

SiCダイオード

 SiCダイオードは、耐圧3〜4kV程度を境にして低耐圧側ではSBDやJBS(junction barrier controlled schottky diode)、高耐圧側ではPiNダイオードが用いられる。SiCはpn接合の拡散電位が2.5Vと大きいので、PiNダイオードでは原理的にオン電圧をこれ以下にはできず、高耐圧用途に限定される。

 SiCの材料特性がストレートに発揮できるSBDでは、すでに2001年からドイツInfineon Technology社、2002年から米Cree社、2008年からスイスSTMicroerectronics社が市販を始めている。当初は高速性を利用したスイッチング電源のPFC(power factorcorrection)回路への応用が主流だったが、近年はSi-IGBTなどとのHybrid-Pair(Siパワー半導体スイッチングデバイスとSiCダイオードとの組合せ)によるインバータやDC-DCコンバータなどへの適用が検討されており、2006年にはドイツSiemens社が耐圧1700VのSi-IGBTとSiC-SBDを組み合わせた高効率690Vインバータユニットを発表した。また、特性改善の試みでは、接合終端に3-zone JTE(junction termination extension)を用いた耐圧4150V、特性オン抵抗9.07mΩcm2のSBD(電力中央研究所)、ドリフト層中央にP型層を埋め込んだ耐圧2700V、特性オン抵抗2.57mΩcm2のFloating Junction構造SBD(東芝)などSiCの材料限界に近い特性が得られている。耐圧1200V級のSBDでは、JBS構造を採用することにより、リーク電流を抑制しながら順方向立ち上がり電圧を下げて、耐圧1250V、オン電圧1.22V(電流密度200A/cm2)と導通損失の低減に成功している(東芝)。また、SiCウェーハの高品質化によって歩留りが大幅に改善されており、10mm角で300AのSBDが報告されるまでになった(ローム)。

 高耐圧向けのPiNダイオードでは耐圧19.5kV(エピ厚200μm)(関西電力、米Cree社)の報告がある。PiNダイオードは、通電状態で結晶欠陥が増殖し、オン電圧が増大する不良モードが発見されて実用化の大きな障害となっていたが、現在では対策のめどが立ち、今後は電力変換装置への適用研究が盛んになると期待される。

SiCスイッチングデバイス

図2 SiCスイッチングデバイスのベンチマーク 図2 SiCスイッチングデバイスのベンチマーク 近年になって耐圧600〜1200VのSiCスイッチングデバイスの導通損失が急速に改善されてきている。ノーマリオフ型のパワーMOSFET開発が主流となり、現行のSi-SJMOSやSi-IGBTのさらに一桁下の特性オン抵抗を目指した開発が進められている。

 SiCスイッチングデバイスでは、JFET(junction field effect transistor)はドイツSiCED社が2003年から、パワーMOSFETはロームが2006年から、米Cree社が2007年からサンプル出荷をはじめており、インバータや電源などへの適用研究が活発化してきた。デバイスレベルでの研究の主役は、JFETからパワーMOSFETに移ってきており、チャネル移動度とゲート絶縁膜信頼性の改善が着実に進展してきている。

 図2にスイッチングデバイスの特性オン抵抗の報告例をまとめた。最小の特性オン抵抗は埋め込みゲートSIT構造で報告されている耐圧700V、特性オン抵抗1.01mΩcm2で、ノーマリオンではあるが、SBD並みに低い値が得られている(産業技術総合研究所)。パワーMOSFETでも、チャネル移動度の改善、チャネル長の短縮、セルサイズの微細化により特性オン抵抗が低減されてきている。IEMOSFET(Implantation and Epitaxial MOSFET)(産総研)では、Si面で耐圧1100V、特性オン抵抗4.3mΩcm2、C面で耐圧660V、特性オン抵抗1.8mΩcm2、DIMOSFET(Double Implantation MOSFET)構造では、耐圧900V、特性オン抵抗3.1mΩcm2(ローム)、エピチャネルを用いた構造では、耐圧1200V、特性オン抵抗5mΩcm2(三菱電機)、トレンチMOSFETでは、耐圧790V、特性オン抵抗1.7mΩcm2(ローム)が報告されている。これらの特性オン抵抗は、同耐圧のSi SJ-MOSFETの1桁下、Si-IGBTの3分の1以下の値である。今後は、更なる特性オン抵抗低減だけでなく、安定した特性を実現できるデバイス製造プロセス技術の確立、破壊耐量の向上、250℃以上の高温動作対応実装技術の開発などの施策が必要となる。

 一方、電力変換などの高耐圧領域を目的としたサイリスタでは、耐圧12.7kVのSICGT(SiC commutated gate turn-off thyristor)でオン電圧6.6V(@100A/cm2)が報告されており(関西電力、米Cree社)、耐圧4.5kV、電流容量100AのSICGTとPiNダイオードを用いて200kVA級3相インバータの実証が行われた。米Cree社からは耐圧10kVのパワーMOSFETや耐圧13kVのn-ch IGBTも報告されている。

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