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サンプル‐ホールド回路の入出力電圧範囲を拡大Design Ideas

» 2009年05月01日 00時00分 公開
[Yakov Velikson,EDN]

 A-Dコンバータの入力部には、サンプル‐ホールド回路を用いることが多い。図1は、そうしたサンプル‐ホールド回路の基本構成を示したものである。この回路は2個のオペアンプA1とA2、スイッチS1、コンデンサC1で構成されている。ここで、オペアンプとして低消費電力タイプのものを使用したいとする。その場合、電源電圧が標準的な±15Vであったとすると、入出力電圧範囲は±10V〜±14V程度に制限されることが多い。こうした場合に、より広い電圧範囲を取り扱えるようにすることができれば、A-Dコンバータの分解能を有効に活用することが可能になる。

 図1のオペアンプA1、A2が処理できる電圧範囲を拡大する方法としては、電圧可変の電源を使用するというものがある*1)*2)。しかし、その方法では、スイッチS1として、より許容電圧の高いものが必要になる。

図1 サンプル‐ホールド回路の基本構成 図1 サンプル‐ホールド回路の基本構成 2個のオペアンプ、スイッチ、コンデンサで構成される。
図2 入出力電圧範囲を拡大する方法(概念図) 図2 入出力電圧範囲を拡大する方法(概念図) 図1の構成をベースに、許容電圧の高いスイッチを使用することなく、入出力電圧範囲を拡大することができる。スイッチ2個とコントロール回路2系統を追加している。

 図2は、図1の基本構成をベースとして、許容電圧の高いスイッチを使用せずに済ませる方法の概念図である。2つのスイッチを追加し、合計3個のスイッチS1、S2、S3をコントロール回路CL1とCL2で駆動する。具体的には、S1とS3が閉じてS2が開く動作と、その逆の動作が繰り返される。回路の前段部(S1、S2側)と後段部にはそれぞれ独立な電源を使用してもよい。前段部と後段部に異なる電源電圧を使用する場合には、コントロール回路CL1とCL2にもそれぞれと同じ電圧を使用する。

 図3は図2の回路の詳細を表したものである。コントロール回路CL1はMOSトランジスタQ11、Q12、Q15、Q16を用いて構成される。一方、コントロール回路CL2は、MOSトランジスタQ13、Q14、Q17、Q18を用いて構成される。また、スイッチS1はMOSトランジスタQ5とQ8から、スイッチS2はMOSトランジスタQ6とQ9から、スイッチS3はMOSトランジスタQ7とQ10から成る。

図3 入出力電圧範囲を拡大する方法(詳細回路) 図3 入出力電圧範囲を拡大する方法(詳細回路) R5とR6、R7とR8、R9とR10、R11とR12の各抵抗ペアにより、電源電圧を分圧した電圧V1、V2、V3、V4を生成する。それにより、入出力電圧範囲を拡大する。

 この回路では、各MOSトランジスタのゲートとバックゲート(基板)に±30V以下の電圧が印加される。電圧V1とV2はオペアンプA1とコントロール回路CL1の電源端子、およびスイッチS1とS2を構成する各トランジスタのバックゲートに接続されている。同様に、電圧V3とV4はオペアンプA2とコントロールロジックCL2の電源端子、およびスイッチS3を構成するトランジスタのバックゲートに接続される。

 電圧V1とV2の値を変えるには、30V/−30Vの電源端子とA1の出力端子との間にある抵抗R5とR6、R7とR8の値、すなわち分圧比を調整すればよい。トランジスタQ1とQ2はA1の電源電圧を制御する役割を担う。コントロール回路CL1は、スイッチS1を構成するQ5とQ8のゲートをコントロールする信号と、スイッチS2を構成するQ6とQ9のゲートをコントロールする逆極性の信号を生成する。

 同様に、分圧抵抗R9とR10、R11とR12は30V/−30Vの電源端子とオペアンプA2の出力端子の間に接続され、電圧V3とV4の値を決める。トランジスタQ3とQ4はオペアンプA2の電源電圧を調整するように働く。コントロール回路CL2は、スイッチS3を構成するQ7とQ10のゲートにコントロール信号を供給する。


脚注

※1…Velikson, Yakov, "Controlled power subply increases op amp's output-voltage range," EDN, March 15, 2007, p.72

※2…Velikson, Yakov, and Igor Ribkin, "Analog switch, 1385288," Bulletin of Izobreteny(Copyrights and Patents), No. 12, 1988


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