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» 2009年06月01日 00時00分 公開

VE活用のポイントをつかむ設計者が実践するコスト削減手法(2/3 ページ)

[野口 隆(野口コンサルタント事務所),EDN]

【ステップ4】 原価の分析

 このステップでは、まずVEの対象製品の原価を算出する方法を明確にする。続いて、その算出方法を用い、対象製品にVEを適用する前の原価を算出する。原価を把握する方法の基本的な考え方は、次のとおりである。

・できる限り広範囲に把握する:分析の対象範囲を広げ、あらゆるコスト要因を把握する。トータルコストを基にトータルプロフィットを割り出す基本計画へと結び付ける

・できる限り詳細に分析する:原価の内容を細分化することにより、コストの発生に対する正しい評価や判断が可能になる

・できる限り直接的に把握する:すべてのコストを直接的に把握し、製品の原価計算に直接結び付く、真の原価、真の収益を生み出す。また、機能別の分類、部門別の分類、変動費/固定費および直接費/間接費別の分類などにより、原価発生の本質を追求する

・算出条件を明確にする:製品の原価は、生産時期や生産数量、購入品の価格折衝など多くの要因により変動するので、そうした条件を明確にしておく。また、生産に関する変動要素とその内容を正しく把握し、各種条件の設定や基礎数値の算出方法を明確にして、関係者の合意を得ておく

 VEの活動による成果は、コストで評価する。従って、このステップでは、すべてのコストを直接的にとらえて分析し、実質的な効果を生み出しやすい状態にしておくことが重要である。

【ステップ5】 価値の評価

 このステップでは、V=F/Cで定義された機能とコストの重要度のバランスから価値を評価する。加えて、価値を向上させるための方向付けも行う。具体的には、ステップ3で設定した各機能ブロックに対し、機能の重要度(機能係数)と全体のコストに占めるコスト比率(コスト係数)とで定義する価値係数を算出することにより、価値を向上させるための改善の方向性を決める。その手順は次のようになる。

(1)機能の重要度を、機能ブロックごとに評価して決定する

(2)VEを適用する前の全体コストを各機能ブロックごとに配分し、コスト係数を算出する

(3)機能の重要度とコスト係数から価値係数を算出し、価値を評価する

(4)各機能ブロックに対し、価値の評価結果から判断される改善の方向付けを行う。さらに、改善作業に着手する上での優先順位を決める

(5)全体の目標コストを各機能ブロックに割り振り、機能ブロックごとの目標コストを設定する

表4 情報の種類/収集方法 表4 情報の種類/収集方法 

【ステップ6】 情報の収集

 次に行うことは「情報の収集」である。ここでいう情報とは、ある目的を達成するために必要となる知識のことだ。そして、情報収集とは、目的を達成するために必要となる情報を集めて分析し、活用して管理することである。VEを進める上で、情報は非常に重要な役割を果たす。

 このステップでは、VE対象製品の明確になった機能に対し、機能の実現方法を検討するために、対象とする製品/分野に特有の情報(技術、コスト)や関連する一般情報などを収集する。情報は多種多様かつ大量に存在するが、その種類や収集方法をまとめると表4のようになる。また、情報の価値は、それを利用する側によって異なる。すなわち、同じ情報でも、それを利用する側の問題意識とタイミングによって価値に違いが出る。

 新規に開発する製品をVEの対象とする場合は、最新の開発技術情報、競合他社情報、価格動向などが収集の対象となる。以下に、情報の種類や収集方法に関するポイントをまとめておく。

・新部品/新材料の情報:部品や材料に関する新しい情報については、雑誌や展示会で部品メーカーの開発動向を把握するとよい。半導体製品の情報は、半導体メーカーの技術雑誌または新聞などから入手して管理するのが効果的である。特に価格動向は、長期的な見方が必要となるので、対応には注意が必要となる

・他社製品の情報:技術雑誌や新聞などに掲載される製品紹介、営業からのフィードバック情報、展示会、あるいはウェブサイトなどで情報を得る。ティアダウン分析手法を活用して競合他社の製品を分解し、機能や価格などを比較/分析する。回路や部品を調べて、情報(回路図、部品リスト、カタログ、取扱説明書など)を入手する

・社内情報:部品認定情報の活用、VE事例の分類/整理と検索、半導体関連の技術開発動向、民生部品の開発動向などを収集する

・電子情報(インターネット):情報提供サービス会社の検索システムを活用し、関連情報を入手する。また、部品メーカーのウェブサイトから必要な情報を探す

【ステップ7】 アイデアの発想

 「アイデアの発想」の目的は、機能分析によって明確にしたVEの対象機能に対し、経済的な手段および方法を発見することにある。具体案の作成を進める最初のステップとして、製品およびシステムの新規性や差異化要因などを追求するために、創造性や発想力が強く求められる。

■アイデアの発想の基本

 アイデアの発想において基本となるのは、馴質異化(じゅんしついか)と異質馴化(いしつじゅんか)である。アイデアの発想は、現状を改良/改善することを目的とする。しかし、現状の見慣れたものが頭の中に存在していては、斬新なアイデアはなかなか浮かんでこない。従って、現状を頭の中から排除してから臨むことが重要である。この考え方を馴質異化という。見慣れたものを見慣れていないものにする(アイデアの発散)という心構えが大事になる。

 馴質異化の取り組みによってアイデアが浮かんだら、それを基に、整理/統合して具体的な改善案を作成していくことになる。この作業に対応するのが、異質馴化である。すなわち、見慣れていないものを見慣れたものにする(アイデアの収束)ことにより、アイデアをより良い改善案へと具体化していくことを意味する。

表5 1次評価の例 表5 1次評価の例 

■アイデアの発想の手順

 アイデアの発想は、以下の手順で進める。

(1)アイデアの発想方法はさまざまなので、まずはどの方法で行うのかを決める。VEでは「ブレーンストーミング法」が広く活用されている

(2)具体案を創り出すためのアイデア(ヒント)を出す。次に、そのアイデアに対し、実現可能性の1次評価(粗ぶるい)を行う。表5に、1次評価の実施方法を示しておく

(3)採用(実現可能性あり)の1次評価を得たアイデアに対し、機能とコストの両面から具体化の検討を行う。それにより、アイデアレベルから提案レベルの内容に仕上げる

(4)評価結果の内容を考慮して具体案を作成し、VE適用前の案に対する代替案としてまとめる

表6 2次評価の例 表6 2次評価の例 

【ステップ8】 アイデアの評価

 続いてのステップは、アイデアの評価である。アイデアの発想のステップで設計された具体案が、適当なものであるか否かを最終的に評価(2次評価)する。評価は科学的な根拠に基づき客観的に行うことを基本とし、事前に評価方法を決めておくこと。評価者は対象製品の責任者が務める。

 実施方法の要領は、次のようなものとなる。まず、1次評価で作成した具体案ごとに、要求されている機能に対して、「技術性評価(=技術的可能性の評価)」を行う。続いて、可能性ありと評価された具体案に対し、「経済性評価(手段実現のために発生するコストの評価)」を適用する。技術性評価と経済性評価を総合的に評価し、採用するか否かを判定して、各具体案に対する最終評価を下す。

 このステップでは、評価の方針を明確に設定しておくことが重要である。最終評価結果により、VEの対象製品に採用するかどうかを決定する。2次評価は、A評価(即実施可能)とB評価(試作、実験などのテストを要する)で行う(表6)。

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