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リチウムイオン電池の状態を簡易的に表示するDesign Ideas

» 2009年08月01日 00時00分 公開
[Fritz Weld,EDN]

 リチウムイオン電池は、劣化が生じないよう、取り扱いに注意しなければならない。劣化が発生すると、メーカーが規定している条件に従って充電していても、発火や破裂など、何らかの不具合が発生することがある。リチウムイオン電池用の充電器の中には、電池の状態をチェックし、不具合があれば充電動作を停止するよう機能するものがある。しかし、そうした充電器を使っている場合に、充電動作が停止しているからといって、すべてのセルに問題があるというわけではない。多くの場合、問題のセルを交換(リフレッシュ)すれば、電池パックの寿命を延ばすことができる。本稿では、そのような目的に使える電池パック用の試験回路を紹介する。


図1 リチウムイオン電池の状態表示回路 図1 リチウムイオン電池の状態表示回路 LEDの点灯状況によって、電池の状態を表現する。

 図1において、試験の対象となる電池の電圧が2.6V以上の場合には、トランジスタQ1のベース電流が流れ、Q1とLED2がオンになる。Q1がオンしたことに伴い、LED1は両端の電圧が下がってオフになる。一方、電池の電圧が2.6V以下であると、トランジスタQ1のベースには電流が流れない。このとき、LED1はオンし、LED2はオフになる。電圧が2.6V以下ということは、その電池が、充電回復が可能なレベル以下の過放電の状態になっていることを意味する。表1に、この回路の3つの動作状態をまとめておく。

表1 LEDのオン/オフと電池の電圧の関係 表1 LEDのオン/オフと電池の電圧の関係 

 この回路をアレイ化すれば、試験用のモジュールを構成することができる。これを電池パックの測定/バランス用ポートに接続すれば、電池パック内の全セルの状況を一目で診断できる。

 LEDによって表現する電池の状態の精度は、使用するLEDの種類によって異なる。LEDの順方向電圧は、標準的な赤色LEDでは1.7V、緑色LEDではほぼ2.1V〜2.2Vである。順方向電圧が3V以上の白色LEDや青色LEDの使用が有効な用途も考えられる。本稿の設計では、電流が2mAの場合の順方向電圧が約1.6Vの赤色LEDを使用することを前提としている。ほかのLEDを使用する場合、簡単な設計変更を要するが、多くのケースでは、ダイオードD1(「1N4148」)をショットキーダイオードに変更するだけで済む。また、LEDに直列にツェナーダイオードを挿入することで、より高い電圧の電池のテストに使用することも可能である。

 なお、抵抗R1、R2の値を小さくすると、LEDの輝度が増す。ただし、その場合、電池からの電流が増大することになるので注意が必要である。図1のとおりの抵抗値であれば消費電流はわずかであるが、それでも、電池の状態を常に表示するように使うと、この回路を長期間動作させることは難しい。完全に充電された32Ahrの電池ならば約1年間は動作するが、電圧が充電回復可能なレベルよりも少しだけ高い程度の電池だと、1〜2日間しかもたないだろう。

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