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「Bluetooth 3.0はテレビリモコンに最適」――Broadcom社が製品展開を拡大

» 2009年11月18日 17時39分 公開
[EDN]

 米Broadcom社は、近距離無線通信規格Bluetoothの新バージョンBluetooth 3.0に準拠した製品の展開を拡大する。テレビや、テレビのリモコンへの採用拡大を目指すとともに、Wi-Fiなどの通信機能を併せ持つコンボチップの展開にも注力する方針である。

 Broadcom社は、Bluetooth通信チップの世界シェアで、携帯電話機向けでは50%、Bluetoothを採用する機器全体でも40%を持つ。同社でワイヤレスパーソナルエリアネットワーキングのマーケティング担当シニアディレクタを務めるRafael Sotomayor氏は、「世界の携帯電話機の65%はBluetooth機能を搭載している。また、ゲーム機のコントローラや、テレビ、デジタルレコーダなどへの採用が始まるなどBluetoothの用途は拡大している。そして、同3.0では、このトレンドを加速させる新たな機能が追加された」と語る。主な新機能としては、「Unicast Connectionless Data(UCD)」、「Bluetooth AMP(Alternate MAC PHY)」、「Enhanced Power Control(以下、EPC)」の3つが挙げられる。

 まず、UCDでは、ネゴシエーションに必要なステップ数を9ステップ以上から3ステップに削減することにより、機器と接続するための待ち時間を大幅に短縮した。「『Wii』などのゲーム機のコントローラでは、既存のBluetooth規格をベースに、ゲーム機本体との接続待ち時間を短縮する機能をカスタム開発していた。それに対し、Bluetooth 3.0に準拠すれば、カスタム開発することなく、短時間でネゴシエーションを完了する機器を開発できる」(Sotomayor氏)という。

 また、UCDにより、通信を行っていないときの消費電力が大幅に低減する。Sotomayor氏は、「一般的なテレビリモコンであれば、単3電池1本で3年間動作させ続けることが可能だ。テレビのリモコンは高機能化が進んでいるが、テレビやほかのデバイスとさまざまな情報をやりとりするようになれば、Bluetooth 3.0がリモコンの最有力の通信方式になるだろう」と強調する。

図1 BluetoothAMPの仕組み 図1 BluetoothAMPの仕組み 動画像/音楽ファイルなどの大容量データを通信するときには、Wi-FiのMAC/PHY層を利用するよう、AMPManagerが自動的な切り替えを行う。

 従来、Bluetoothの通信速度は最高で3メガビット/秒であった。2つ目の新機能であるBluetooth AMPはこの課題を解決するものである。機器内にWi-Fiの通信チップを搭載している場合に、Bluetoothの通信にWi-FiのMAC(Media Access Control)/PHY(物理)層を利用することにより、通信速度を24メガビット/秒まで高められる。同機能では、写真/音声/映像などの大容量データをBluetoothで通信しようとすると、Bluetoothの通信ドライバ内にある「AMP Manager」によりWi-FiのMAC/PHY層を利用するよう自動的に切り替えが行われる(図1)。Sotomayor氏は、「携帯電話機やスマートホンでは、Wi-Fi機能の搭載率も高まっている。Bluetooth AMPにより、この傾向はさらに強まる」と見ている。

 3つ目の新機能であるEPCは、送信出力について、低レベルから高レベル、高レベルから低レベルまで一気に変更できるようにする機能だ。従来のBluetoothは、通信距離が長くなるなどして送信出力を高めなければならないとき、最適な出力レベルまで段階的に高めるというアルゴリズムを採用していた。EPCでは、このアルゴリズムを変更することで送信出力を即座に変更する。

 Broadcom社は、Bluetoothに加え、Wi-Fi、GPS(全地球測位システム)、FMラジオなどの通信機能も併せ持つコンボチップを展開している。Sotomayor氏は、「特に、BluetoothとWi-Fiのコンボチップは、他社にない製品なので積極的に展開したい。1チップでBluetooth AMPの機能を活用できるし、アンテナ、クロック源、アナログ回路を共用することで、機器の小型化や部品の削減を実現できる」と主張する。例えば、BluetoothとWi-Fiの個別チップで機器を構成する場合、部品数は200個、基板面積は200mm2必要となる。一方、コンボチップを用いると、部品数は40個、基板面積は75mm2で済むという。

 さらに、BluetoothとWi-Fiを共存させても、通信時に相互干渉が起こらないようにする機能も取り入れている。例えば、1つのアンテナを共有する場合には、BluetoothとWi-Fiの通信の順序を決めて行う機能や、BluetoothとWi-Fi、それぞれの通信強度を動的に変更する機能などがある。「当社はすでに、BluetoothとWi-FiのコンボチップやIEEE 802.11nにも対応したコンボチップを投入済みだ。2010年春ごろまでには、さらに機能を拡張した新製品を投入したい」(Sotomayor氏)という。

(朴 尚洙)

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