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USBデバイスの受電時に突入電流を制限Design Ideas

» 2009年12月01日 17時41分 公開
[Daniel Morris(Group IV Technology社),EDN]

 USBの規格では、USBデバイスがUSBホスト/ハブから電源を得る場合の条件が定められている。それは、USBホスト/ハブから見て、USBデバイスが、10μFの容量と44Ωの抵抗とを並列接続したものより軽い負荷に見えなければならないというものである。この規格は、USBデバイスの接続時や受電時に、容量を充電するための突入電流によって過大な電圧降下が生じないようにするために定められた。ここで問題となる容量には、USBデバイスの電圧を安定化するためのバイパスコンデンサも含まれる。そして、USBバスから電源を得る方式では、スパイク電流を適切なレベルまで吸収するために、10μF以上のバイパスコンデンサを必要とする場合もあり得る。本稿では、突入電流を制限し、より大きなバイパスコンデンサの使用を可能にする方法を紹介する。

図1 USBデバイス用の突入電流制限回路 図1 USBデバイス用の突入電流制限回路 

 本稿で紹介する図1の回路では、米Linear Technology社の電流検出アンプIC「LTC6102」を利用する。オフセット電圧が小さいオペアンプを備えているため、電流検出抵抗の値を低く抑えられる点が特徴の1つだ。同ICの通常の使い方では、OUT端子とグラウンドとの間に抵抗を接続し、電流検出抵抗に発生する電圧を増幅することで電流検出を行う。そして、OUT端子の出力電流は、同ICが内蔵するMOSFETを介して出力される。MOSFETのソースはオペアンプの非反転入力端子+IN、反転入力端子−INSとは別の−INF端子に接続することで、端子および基板パターンの抵抗に起因する誤差が最小化される。

 一方、本稿の回路では通常の使い方とは異なり、LTC6102のOUT端子をグラウンドに接続する。これにより、MOSFETがソースフォロワとし働き、外付けの電流制限用MOSFETであるQ1のゲートを駆動する。LTC6102(IC1)を中心としたフィードバックループにおいて、オペアンプは両入力端子+IN、−INSの電圧を等しく保つように機能する。+IN端子の電圧は、抵抗R2、R4により、USBの電源レールVBUS(5V)から約2mV低い値に設定する。なお、このとき、後述する入力信号HP_ENはローに設定し、トランジスタQ2はオフになっているものとしよう。

 USBデバイスを接続した時点では、トランジスタQ1はオフになっている。そのため、IC1の−INS端子の電圧が+IN端子の電圧より約2mV高くなり、オペアンプの出力電圧が低下する。その結果、IC1が内蔵するMOSFETのソース電圧、すなわちQ1のゲート電圧も低くなってQ1がオンになる。Q1がオンのときの電流は、電流検出抵抗R1による電圧降下と抵抗R2による電圧降下とが等しくなるまで増大する。

 抵抗R3とコンデンサC2は、フィードバックループが発振するのを防止する。また、Q1のターンオン動作を遅らせることで、USBデバイスがUSBバスに接続されたときのスパイク電流を抑制する役割も果たす。コンデンサC3はIC1が内蔵する安定化電源VREGのバイパス用である。抵抗R7は、IC1が内蔵するMOSFETの電流を最大0.5mAに制限するよう働く。この回路を使用すれば、USBホストに対する負荷は、R1×(R2+R4)/R2=49.8Ωの抵抗負荷となる。つまり、規定の抵抗値である44Ωより軽い負荷なので、容量負荷C1が大きくても問題ない。

 この回路はHP_EN信号がローである場合、コンデンサC1が充電された後の電流値をローパワーモードのUSBデバイスの許容最大値である100mA以下に制限する。HP_EN信号をハイにすれば、R1における電圧降下が大きくなり、ハイパワーモードのUSBデバイスが許容する500mAまで対応することも可能である。

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USB | 回路 | コンデンサ | MOSFET | オペアンプ


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