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トライアック用の試験回路Design Ideas

» 2009年12月28日 00時00分 公開
[Abel Raynus(米Armitron International社),EDN]

 トライアック(双方向サイリスタ)は、交流電源によって双方向に電流を流すことが可能なスイッチング素子である。電圧が600V、電流が25ARMSに達するような負荷の制御にも使うことができる。利用分野としては、モーター速度制御やヒーター制御、白熱電球の調光などが挙げられる。特に、トリガー機能を備えるトライアックは、マイクロコントローラを利用した制御装置で便利に使うことができる。この種のトライアックに必要なトリガー電流は3mA〜10mAで済むので、マイクロコントローラの出力ポートから直接制御可能である。


図1 トライアックの試験回路の基本構成 図1 トライアックの試験回路の基本構成 

 言うまでもなく、トライアックもほかの電子部品と同様に内部欠陥を持っていることがある。これについては、使用の前に適切な試験を行うことにより確認すればよい。本稿では、この確認を目的とした安価かつ簡素な試験用回路を紹介する(図1)。この回路は、米Littelfuse社のトライアック「L2004F31」、「L2004F61」、「L4004V6TP」などを前提としたものだが、パッケージがTO-220AB、TO-202AB、TO-251など、標準的なリードタイプのものであれば、ほかの製品にも適用できる。このタイプの製品はICソケットに差し込み可能なので、簡単に装着できる。また、適切な試験用ソケットさえ用意できれば、表面実装タイプのトライアックにも適用可能である。

表1 試験のステップ 表1 試験のステップ 

 図1の回路において、極性切り替え用のスイッチS1はDPDT(双極双投)型のものであり、トライアックの両方向の導通状態を調べるために使用する。SPST(単極単投)型で押しボタン式のトリガースイッチS2は、トライアックの駆動に用いるもので、トライアックのG端子(3番端子)とMT2端子(2番端子)とを抵抗R2を介して接続する。試験は表1に示す4ステップから成り、5秒以内に完了する。各ステップの試験結果はLEDの表示によって表される。4ステップの結果すべてに問題がなければ、良品として判定する。

 図1の回路は基本形であり、これを広く応用することができる。トライアックをプリント基板に組み込んだ場合に、ほかとの干渉がなく正常に動作することを保証するには、トライアック単体を対象とするのではない、別の試験を追加する必要がある。そうした試験を事前に行うことにより、装置の組み立て後に問題点をチェックするのに比べて工数を削減できる可能性がある。

図2 負荷が抵抗性の場合の試験回路 図2 負荷が抵抗性の場合の試験回路 2個のLEDにより、各方向に対する試験結果が表示される。
図3 負荷が誘導性の場合の試験回路 図3 負荷が誘導性の場合の試験回路 リーク電流の影響を最小限にするために、抵抗R2とネオンランプを利用している。

 上記の追加試験は、プリント基板上の所定の位置にトライアックをはんだ付けして行う。試験用の電源には、120/220VACといった標準的な電圧を使用することになるだろう。こうした条件下で、試験によってトライアックに加わる影響を最小限にするとともに、試験にかかる時間と工数を極力短縮しなければならない。テスターとトライアックの接続がさまざまな形態になるが、少なくとも120/220VACの電源に接続することに対する安全策を講じておかなければならない。

 負荷が白熱電球やヒーターのように抵抗性のものである場合、試験には図2に示す構成を使用する。LED1、LED2は、それぞれ一方向の導通状態を表す。つまり、トライアックが非導通状態のときには両LEDが消灯し、導通状態のときには各LEDが点灯する。

 モーターなど、負荷が誘導性のものである場合には、図3のように、抵抗R1とコンデンサC1から成るスナバー回路をトライアックに並列に挿入する。スナバー回路を使用すると、トライアックが非導通状態の場合でもわずかにリーク電流が流れるという問題があるが、これについては抵抗R2と交流耐圧95Vのネオンランプを利用することで解決している。

 また、トライアックを含む装置の構成部品や装置自体の特性を試験するための多機能試験装置の一部として試験回路を盛り込むことも可能である。その場合にも、試験結果は各項目ごとに良/不良の2値判定にできることが望ましい。図1〜3の回路では試験の結果をLEDによって表しているが、試験結果をマイクロコントローラに取り込んで判定することも可能である。その場合には、試験結果がハイ/ローの形式で表現されると便利だ。

図4 フォトカプラを利用した試験回路 図4 フォトカプラを利用した試験回路 グラウンドに接続されていないトライアックの試験が行える。
図5 RCフィルタを追加した試験回路 図5 RCフィルタを追加した試験回路 トライアックの出力がパルス信号の場合には、RCフィルタを追加する。

 トライアックとマイクロコントローラとの接続については、トライアックのMT1端子(1番端子)がグラウンドに接続されているなら問題はない。ただ、ほとんどのケースでは、MT1端子とMT2端子はグラウンドには接続されない。この場合には、米California Eastern Laboratories社の「PS2501-2」のようなフォトカプラを利用すればよい(図4)。このフォトカプラは2系統のLEDとnpnフォトトランジスタから構成され、対応可能な最大電圧は80Vである。

 また、マイクロコントローラが内蔵するA-Dコンバータをインターフェースとして利用することもできる。トライアックの出力が、モーター速度の制御用や電球の調光用のPWM(パルス幅変調)信号のようなパルス列である場合には、A-Dコンバータへの入力の前段にRCローパスフィルタを配置する(図5)。このフィルタの時定数τ=R6×C3(またはR7×C2)は、PWM信号の周期とデューティサイクルに応じて決める。一連の項目を試験する場合、各試験項目は、項目を切り替えてからτの3?5倍の時間が経過してから始まるようにしなければならない。

 なお、マイクロコントローラが内蔵するA-Dコンバータを使用する場合には、ファームウエアが別途必要となる。これを避けるには、コンパレータを使用して、フィルタ通過後の信号電圧と基準電圧とを比較し、その2値化出力をマイクロコントローラへの入力として使用すればよい。逆に、ファームウエアが複雑になることを許容して、外付け部品点数を最少にするアプローチをとることも可能である*1)

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