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» 2010年02月01日 00時05分 公開

その性能指標と最新技術動向を理解する:基礎から学ぶRFスイッチ (2/2)

[Rick Nelson,EDN]
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新式スイッチの特徴

 GaAsスイッチや電気機械式スイッチ、PINダイオードの代替として挙げられるのが、バルクCMOS、MEMS、SOS(Silicon on Sapphire)の各スイッチである。

■バルクCMOSスイッチ

図3 吸収型のSPDTスイッチ「ADG918」 図3 吸収型のSPDTスイッチ「ADG918」 グラウンドに接続した50Ωの終端シャント抵抗を備え、RF源に戻る反射を最小限に抑えている。

 米Analog Devices社は、「ADG9XX」ファミリとして、1GHz対応のスイッチを供給している(図3)。サブミクロンCMOSプロセス品であり、900MHzのISM(産業/科学/医療)帯向けのものとなっている*9)。同社のスイッチ/マルチプレクサ製品ラインのスタッフ設計エンジニアであるRay Goggin氏と、エンジニアリングマネジャであるJohn Quill氏は、これらのデバイスの利点をいくつか挙げている。例えば、直流遮断コンデンサが不要であることや、3.0mm×3.0mmと小さいQFN(「ADG919」の場合)パッケージを採用していることだ。また、1.65V〜2.75Vの電源電圧で動作し、消費電流は1μA未満である。さらに、TTL入力を使用でき、ほかのシステム部品との親和性が高い。1GHzにおける挿入損失は0.8dB、アイソレーションが43dBm、1dB圧縮ポイントは17dBmである。RF入力端子のESD(静電気放電)耐性は、HBM(人体帯電モデル)で1kV、それ以外の端子は同2kV。吸収型と反射型の製品が提供されている。

 Goggin氏とQuill氏は、「バルクCMOSスイッチは、ほかのスイッチよりも帯域幅と最大通過電力が低い。しかし、要件がそうした制約の範囲内に収まる用途であれば、バルクCMOSの低いコストがメリットになる」と指摘する。また両氏によると、各デバイスのサイズは、CSP(Chip Size Package)の場合で9.0mm2と小さく、ドライバ回路の集積も可能なので部品点数を削減できるという。

■MEMSスイッチ

図4 オムロンの「2SMES-01」 図4 オムロンの「2SMES-01」 静電アクチュエータを採用する2SMES-01は、10GHzの伝送に対応し、30dBのアイソレーションと1dBの挿入損失を実現している。1億回の開閉操作が可能である。

 バルクCMOSスイッチが提供可能なレベルよりも高い性能が必要な用途には、MEMSスイッチを検討するとよい。例えば、オムロンの「2SMES-01」は、10GHzの伝送に対応し、30dBのアイソレーションと1dBの挿入損失を実現している(図4)。最大消費電力は10μW。米Omron Electronic Components社の製品マネジャを務めるDonna Sandfox氏によると、「10μWという値は、同等レベルの電磁リレーの約1万分の1」だという。

 このデバイスは、高スループットのATE(Automated Test Equipment:自動試験装置)向けの製品である。静電アクチュエータを採用しており、0.5mA、0.5Vにおいて1億回の開閉を保証している。各スイッチは、ノーマリオープンの2個のSPST(Single Pole Single Throw:1入力1出力)シリコンスイッチで構成されており、SPDTまたはDPST(Double Pole Single Throw:2入力1出力)の動作を行う。サイズは5.2mm×3.0mm×1.8mm。

■SOSスイッチ

図5RFトランシーバ向けのSOSデバイス 図5RFトランシーバ向けのSOSデバイス RFトランシーバ向けに、UltraCMOSのクワッドMOSFET、PLL、プリスケーラを備えている。

 米Peregrine Semiconductor社のUltraCMOS SOS技術は、RFスイッチ市場をターゲットとしたものである。同技術では、絶縁された誘電性のサファイア基板上に、超薄型シリコンCMOS回路を集積する。同社は、ATEに加え、デジタルテレビ、ケーブル/衛星、セットトップボックス、ゲーム機などの用途も狙っている。RFトランシーバ向けの製品としては、スイッチやUltraCMOSを利用したクワッドMOSFET、PLL、プリスケーラを備えるデバイスを供給している(図5)。これにより、RF信号チェーンの大部分を構成できるようになる。同社の販売/マーケティング/ビジネス開発担当バイスプレジデントを務めるRodd Novak氏によれば、同社は9出力スイッチを5重帯域対応の携帯電話機向けに出荷するプランを持っているという。

 Peregrine社は、ATE向けに吸収型SPDTスイッチ「PE42552」を提供している。7.5GHzに対応し、1dB圧縮ポイントは34.5dBm、挿入損失は3GHzで0.65dBである。また、ATEをターゲットとして、PE42552には7ビットのデジタルステップ減衰器を付加している。

正解は1つではない

 Peregrine社の通信/産業市場担当販売およびマーケティングディレクタを務めるMark Schrepferman氏によると、「当社は、自社における試験の要件を調査することにより、試験装置市場に何を提供すればよいかを学んだ」という。同社の製品開発部門マネジャを務めるChristian Steele氏は、「大型ATEシステムには、通常、1〜2個の信号源と1〜2個の受信器があり、電気機械式スイッチによって、計測装置とテストの対象とするデバイス間で信号を伝送する。そうした電気機械式スイッチの多くは、保証されている開閉回数が非常に少なく、200万回未満であるものが多い」と指摘している。

 RFスイッチ技術が多様に進化するに連れ、すべての用途に対応する単一の手法は消滅すると思われる。それに備えて、Peregrine社は複数の技術を評価している。Peregrine社には1つ、制約があるという。同社の共同創設者でCTO(最高技術責任者)を務めるRon Reedy氏は、同社の設立時に「『CMOSへの移行を強引に推進してはならない』という1つの企業命令を下した」と述べる。ある製品をすべての基準に照らし合わせた結果、“人類最高の量産向け発明”と呼ばれるバルクシリコンCMOSで実装することができるならば、それで実装するべきだという。

 Reedy氏は、「性能の観点からは、金属接点に勝るものはない」ことから、Peregrine社はMEMSスイッチを検討中であるとも述べている。しかし、高性能のスイッチを損失の大きい基板に配置するのは非生産的であるため、MEMSとSOSの併用について検討中だという。同氏は最後に、「すべての用途に対応できる単一の技術的ソリューションが存在するとは思っていない」と付け加えた。


脚注

※9…Corrigan, Theresa, "ADG9xx Wideband CMOS Switches: Frequently Asked Questions," Application Note AN-952, Analog Devices, 2008


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