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トヨタ自動車が南イリノイ大学教授の証言に反論、“意図せぬ加速”を他社製車両でも再現

» 2010年03月10日 00時00分 公開
[Automotive Electronics]

 米Toyota Motor Sales(以下、TMS)社は2010年3月、電子スロットルの制御の不具合に起因するトヨタ自動車製車両の“意図せぬ加速”の問題について発表を行った。この発表では、南イリノイ大学で自動車技術分野の教授を務めるDavid Gilbert氏が行った、トヨタ自動車製の車両がドライバーの操作に従わずに急加速するデモンストレーションを再現するととともに、他社製の車両でも同様の急加速が起こることを明らかにした。

 トヨタ自動車とTMS社は、Gilbert氏が行ったデモンストレーションについて、トヨタ自動車自身で試験を行うととともに、エンジニアリングコンサルタント企業である米Exponent社にも調査を委託した。その結果、Gilbert氏のデモンストレーションは、アクセルペダルとエンジンECU(電子制御ユニット)間の配線に、自動車を実際に利用する際に起こり得ないほどの加工を施す必要があることがわかったという。また、他社製車両についても、同様の加工を施すことにより急加速が起こることを確認した。対象とした他社製車両は、ドイツDaimler社の「Mercedes Benz E350」2009年モデル、ドイツBMW社の「BMW 325i」2003年モデル、本田技研工業の「Accord」2008年モデル、米Chrysler社の「Chrysler Crossfire」2005年モデル、富士重工業の「Subaru Outback Impreza」2006年モデルなどである。

写真1 アクセルペダルとエンジンECUの間の配線(提供:TMS社) 写真1 アクセルペダルとエンジンECUの間の配線(提供:TMS社)

 一般的なアクセルペダルは、ドライバーの加速動作を検知するスロットルポジションセンサーが2個搭載している。各センサーとエンジンECUは、それぞれ信号線/アース線/電源線の3本の配線で接続されている(写真1)。つまり、アクセルペダルとエンジンECUの間には6本の配線が存在することになる。


図1 Gilbert氏が行った配線への加工(提供:TMS社) 図1 Gilbert氏が行った配線への加工(提供:TMS社) 緑色の配線がセンサー1の信号線、黒色の配線がセンサー1の電源線、赤色の配線がセンサー2の信号線である。センサー1とセンサー2の信号線を200Ωの抵抗を介して短絡させてから、センサー1の電源線とセンサー2の信号線の間の短絡を有効にする(図中のスイッチをオンにする)ことにより、“意図せぬ加速”が再現される。

 Gilbert氏は、トヨタ自動車の「Toyota Avalon」2010年モデルにおいて、こられの配線に対して以下のような加工を施した。まず、一方のセンサー(これをセンサー1とする)の信号線と電源線、もう一方のセンサー(これをセンサー2とする)の信号線の被覆を一部はがした。そして、センサー1とセンサー2の信号線の間に200Ωの抵抗を挟んで接続した。最後に、センサー1の電源線とセンサー2の信号線を短絡させることによって、アクセルペダルを操作しなくてもエンジン回転数が上昇することが確認された(図1)。なお、このような配線の加工がGilbert氏が行ったものと同じであるかについては、スタンフォード大学で機械工学分野の准教授とスタンフォード自動車研究センター(CARS)ディレクタを務めるChristian Gerdes氏が、トヨタ自動車の要請を受けて、Gilbert氏本人に確認を取ったという。

 トヨタ自動車は、「Gilbert氏のデモンストレーションは、特定の手順を経て大幅な加工を施す必要がある。このため、実際の市場環境においてこの現象を発生させることは事実上不可能だと考えている」とコメントしている。

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