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フローティングゲートをアナログ領域で生かすメモリーから信号処理まで、広がる可能性(5/5 ページ)

» 2010年07月01日 00時00分 公開
[Ron Wilson,EDN]
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大きく広がる可能性

 ここまでに紹介したように、アナログフローティングゲートは、オーディオ用ストレージ、電圧リファレンス、アナログ信号処理での活用が進んでいる。同技術は、これらの分野にさらなる改善をもたらすだろう。では、それ以外の応用分野としては、どのようなものが考えられるのか。

 Nuvoton社社長のSaleel Awsare氏は、「特に車載機器や民生用機器、医療機器の分野に着目している」と述べる。その上で、「人の声によって指示を与える細動除去器や、避難指示を与える煙感知器などを検討している」(同氏)と付け加える。特に車載機器での応用については、アナログフローティングゲートを利用したチップの可能性は広いという。また、GTronix社でCEO(最高経営責任者)を務めるHubert Engelbrechten氏は、「ガラスの破損の検出や加速度計の信号処理、医療用マイクロセンサーモニターなど、多種多様な応用分野がある」と述べている。

 すでに述べたように、フローティングゲートにアナログ値を保存することは、脳内のニューラルネットワークを模する際の基本ブロックに応用できるので、すでに各種の研究が行われている*7)*8)。視神経の機能を考えてみると、神経が膨大な量の信号処理を行うことにより、目から脳に伝達される情報量を大きく削減している。このような機能は、処理係数をメモリーセルに保存することのできるアナログフローティングゲートの最適な応用分野だ。

 今後、アナログフローティングゲートが適用可能な用途はさらに数多く登場するだろう。また、プログラミングに必要な精度と時間を改善するための研究も引き続き行われている*9)。アナログフローティングゲートは、着目されるまでには何十年もの歳月を要したが、これからの10年間は、最も注目される技術となるのではないか。


脚注

※7…Lee, BW, BJ Sheu, and H Yang, "Analog floating-gate synapses for general-purpose VLSI neural computation," IEEE Transactions on Circuits and Systems, Volume 38, Issue 6, June 1991, p.654

※8…Fujita, O, and Y Amemiya, "A floating-gate analog memory device for neural networks," IEEE Transactions on Electron Devices, Volume 40, Issue 11, November 1993, p.2029

※9…Smith, PD, M Kucic, and P Hasler, "Accurate programming of analog floating-gate arrays," IEEE International Symposium on Circuits and Systems, Volume 5, May 2002, p.V-4891, January 2001


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