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進化する組み込み向け計測技術(4/4 ページ)

» 2010年10月01日 00時00分 公開
[Rick Nelson,EDN]
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計測機能を組み込む

 試験/測定機能をシステムに組み込みたいのであれば、米National Instruments(NI)社がESCで発表した「ボードレベルバックプレーン」を検討するのもよいかもしれない(写真4)。NI社の従来のバックプレーンは、PXI(PCI Extensions for Instrumentation)/CompactPCI(Peripheral Component Interconnect)およびPXIe(PXI Express)用シャーシの一部品として使用できるだけだった。それに対し、新たに発表されたボードレベルバックプレーンでは、OEM企業が独自に筐体を設計し、その中にPXIやPXIe、CompactPCI、CompactPCIe(PCI Express)の各規格に対応したモジュールを収容できる。


写真4NI社の「ボードレベルバッグプレーン」 写真4 NI社の「ボードレベルバッグプレーン」 

 ボードレベルバックプレーンには10種類以上の品種がある。サイズは3Uまたは6Uで、4〜18スロットを備えている。設計者はこの新たなバックプレーンを組み込んだ装置や筐体を独自に設計し、データ収集カードやFPGAベースのI/Oモジュール、信号発生器やRF信号解析器などのハイエンド測定器、各種のシリアルインターフェース、MIL-STD-1553、IEEE 1588、Profibus、DeviceNetに対応する各種バスインターフェースモジュールなど、1500種類以上のPXIモジュールを実装することが可能である。

 なお、こうしたシステムの設計から試作、設置までのあらゆる場面で、NI社のグラフィカル開発環境「LabVIEW」を利用することが可能である。このことは、同社リアルタイム製品のプロダクトマネジャを務めるCasey Weltzin氏が述べた「LabVIEWは、ロボットや医療、エネルギー業界の専門家(Domain Expert)に、組み込みシステム設計で重要な役割を果たしてもらうことを目的としたものだ」という言葉と一致している。

進化の方向性

 組み込みシステム向けの計測装置は、今後も間違いなく進化を続けていく。そのために、各メーカーとも、組み込みシステムの設計に取り組む顧客を支援するさまざまな方法を開発している。だからといって、旧来の計測装置が使われなくなったり、まったく新しいタイプの計測装置が出現したりするというわけでもないだろう。ただ、計測装置の業界は、いくつかの製品分野は衰退していると認識していることも事実だ。Agilent社のWoodward氏は、「例えば、エミュレータボードは使われなくなりつつある。30米ドルのエミュレーターボードの機能が、プロセッサICを使えば5米セントで手に入れられるからだ」と指摘した。

 MSO4000のようなミックスドシグナルオシロスコープの出現により、ロジックアナライザがエミュレータボードと同じ運命をたどる可能性があると考える人もいるかもしれない。しかし、オシロスコープやロジックアナライザのメーカーは、ロジックアナライザという製品カテゴリがなくなるとは考えていないようだ。Tektronix社のBonini氏は、「ロジック回路の設計者は、複数のバスを使用した回路のトラブルシューティングを行うために、プロトコルレイヤーを詳細に解析する必要がある。彼らにとって、ロジックアナライザは“選ばれたツール”として生き残る」と考えている。Tektronix社は、1つのプローブでロジックアナライザとオシロスコープの両方に信号を取り込める仕組みを製品に適用している。これにより、ロジックアナライザの使用時に、1つのノードに2本のプローブを接続することなく、オシロスコープによって、アナログ信号としての観点から確認を行うことが可能になっている。

 回路がますます複雑化する中、組み込みシステムの試験において、シリアルバスにアクセスしたり、バスプロトコルを解読できたりする計測装置はますます重要になると考えられる。Woodward氏は、「組み込みシステムに用いられる多くの回路ブロックは、今後もFPGAやASIC、ASSPといった集積度の高いICの内部に組み込まれることになるだろう。われわれの経験上、こうしたブロック間のシリアルバスが使われなくなることはない。多くの場合、シリアルバスへのアクセスやバスプロトコルの解析は、設計者にとって、回路内で起きている事象を把握する唯一の手段になっている」と指摘した。

 今後、組み込みシステム内のシリアルバスがますます高速化するのは明らかである。Woodward氏は、「SERDES(シリアライザ/デシリアライザ)を含む高速シリアルバスの価格は大きな問題とはならない」と語る。最新のFPGAを使う場合、それらは実質的に自由に使用できる状態になるからだ。

 Woodward氏は、「例えば、医療業界でも高速シリアルバスの採用が進んでいる。高速シリアルバスを使用すれば、MRI(磁気共鳴画像)装置で撮影した大量の画像データを、1つのサブシステムから別のサブシステムに高速転送できる」と述べる。その上で、「われわれは長い間、医療用機器に代表されるような組み込みシステムの業界は技術的な歩みが遅い分野だと考えてきた。しかし、組み込みシステム業界はほかに目をくれることなく高速シリアルバスの採用を決めた。これについては、おそらくFPGAが大きな役割を果たしたと考えている。また今後は、高速トランシーバを内蔵した多くのASSPも目にすることになるだろう。高速トランシーバの価格が低下し、組み込みシステム市場でも容易に利用できるようになったからだ。コンピュータ業界の素晴らしい点は、先端技術の利用にかかるコストがいずれは下がり、組み込みシステム製品でもそうした先端技術を利用できるようになることだ」(同氏)と付け加えた。

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