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第2回 デジタルICとロジックICデジタルIC 基礎の基礎

» 2011年11月01日 00時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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 前回は「デジタル」という言葉の意味と、「アナログ」との違いを説明しました。今回はデジタルICとロジックICの全体像を解説しましょう。

 「デジタルIC」とは、デジタル信号を受け取り、デジタル信号を出力するICを意味します。ICに入力する信号は「1(イチ)」あるいは「0(ゼロ)」、ICが出力する信号も「1(イチ)」あるいは「0(ゼロ)」です。

 私たちの社会に存在するICの大半は、デジタルICです。もちろん、アナログICも存在していますし、社会を支えている大切なICなのですが、数量で比べるとデジタルICがアナログICを圧倒しています。

photo 図1 ICの機能別分類

 そのデジタルICは、機能別に分類するとロジックICとメモリICに分かれます(図1)。ロジックICは何らかの機能(演算や変換などの処理機能)を持っているデジタルICです。メモリICはデジタル信号の値(データ)を保存しておくデジタルICです。

 デジタル信号を処理するシステム(デジタル・システム)は粗く言ってしまうと、ロジックICとメモリICだけで構成されています。ロジックICはデジタル信号をメモリICから読み出し、何らかの処理を実行し、デジタル信号をメモリICに書き込む。この一連の流れを繰り返すことで、デジタル・システムはさまざまな機能を実現しています。

ロジックICの製品例

 ロジックICには、どんな製品があるのでしょうか。機能の異なるさまざまなICが市販されています。代表的なロジックICには、信号処理IC、マイクロプロセッサ、DSP(Digtal Signal Processor)、インタフェースIC、標準論理ICなどがあります(図2)。

photo 図2 ロジックICの機能別分類

 信号処理ICは、ある信号を入力し、いくつかの操作を加えて別の信号に変換して出力するICです。例えば、テレビ放送の信号をテレビ受像機で映し出せる形の信号に変換するための一連の処理を実行するICがあります。

 マイクロプロセッサは、何らかの処理をソフトウェアで記述し、そのソフトウェアを読み込んで実行するICです。ソフトウェアを書き換えることで多種多様な処理を実行できるという大きなメリットがあります。

 DSPはマイクロプロセッサと似ています。何らかの処理をソフトウェアを記述し、そのソフトウェアを読み込んで実行するICです。ただし、実行する処理の範囲がある程度限定されています。その代わり、特定の処理ではマイクロプロセッサよりも高速に実行します。

 インタフェースICは、標準化団体が定めた技術仕様や、事実上の業界標準となっている技術仕様のインタフェース規格に準拠した電気信号を送受信するICです。入力信号は別のインタフェース規格の電気信号であったり、特定のロジックICの出力信号であったりします。

 標準論理ICは、基本的な論理回路を内部に組み込んだICです。かつては論理機能別や動作速度別に数多くの品種(シリーズ)が存在していました。1980年代前半までは、標準論理ICを組み合わせて目的のロジックICを実現することが一般的でした。しかしICに格納できる回路の規模が拡大し、ICユーザーが望む機能をワンチップで実現できる「セミカスタムIC」が1980年代後半に普及し始め、さらには機能を書き換えられる「プログラマブル・ロジック」と呼ばれるICが普及していったことにより、1990年代以降は標準論理ICは徐々に使われなくなりました。ですが、現在でも一部の品種はデジタル・システムに使われています。

設計手法から見たロジックIC

 さて、システム設計ではロジックICやメモリICなどを必要とすることは前半でご説明しました。ロジックICにはさまざまな製品が存在することも示しました。これらのロジックICには、別の分類手法が存在します。それが市販品(標準品)か、カスタム品かの違いです。

 市販のIC製品は、機能や仕様などがあらかじめ決まっています。こういった市販のICだけでは、システム設計者が望む機能をシステムに実装しにくいことがあります。例えばシステム設計者が開発した機能を、市販のICの組み合わせでは実現できません。あるいは市販のICの組み合わせだと、プリント基板に載せるICの点数が多くなりすぎてプリント基板上にレイアウトできなくなってしまいます。

 こういった場合に助けとなるのが、システム設計者が望む機能を実装したIC、すなわちカスタムICです。カスタムICを使うと目的の機能をワンチップで実現できるので、プリント基板に載せるICの点数が大幅に減ります。

 カスタムICには、シリコンに載せる回路をゼロから作り始める「フルカスタムIC」と、自由度を持たせた基本回路をあらかじめシリコンに作り込む「セミカスタムIC」があります。フルカスタムICは極めて高価なので、最近ではほとんど作られず、ほぼ概念上の存在と化しています。したがって現在ではカスタムICといえば、セミカスタムICのことを意味します(図3)。

photo 図3 ロジックICの設計方法別分類

 セミカスタムICには、シリコンにあらかじめ作り込んでおいた回路の違いにより、いくつかの品種があります。それはセミカスタムICを使ってシステム設計者が目的の機能をシリコンに実装させるときの設計手法の違いとなります。ゲートアレイ、スタンダード・セル、エンベデッドアレイ、プログラマブル・ロジックなどのセミカスタムICを、販売代理店や半導体商社などを通じて注文できます。

セミカスタムICとEDAツール

 システム設計者がセミカスタムICを注文して活用する場合、ICの設計作業が必要となります。設計作業には「EDA(Electronic Design Automation)ツール」あるいは「電子設計ツール」と呼ぶ、コンピュータ上で動くソフトウェアを利用します。言い換えると、EDAツールの存在なしには、セミカスタムICは活用が困難です。セミカスタムICとEDAツールは不可分の存在といえます。

 EDAツールによるロジックICの設計は、1980年代半ば以降に大きく変化しました。ロジック(論理)回路の設計手法が「ゲート・レベル」と呼ばれる非常に細かな段階から、「レジスタ・トランスファ・レベル(RTL)」と呼ばれる大まかな段階へと移行したのです。1980年代に入って、ロジックICが収容できるトランジスタの数が膨大になり、従来の設計手法(ゲート・レベルのIC設計)では実用的な期間内にロジックICの設計が完了しないという問題が無視できなくなっていました。そこでRTLを使うハードウェア記述言語(HDL:Hardware Description Language)」と呼ぶ、ロジック回路の設計言語が開発されました。RTLを使うことで設計作業を実用的な範囲内に完了できるようになったのです。

 ロジック回路の設計が1980年代後半〜1990年代前半に標準論理ICからセミカスタムICへと大きく移行したことには、HDLの開発による設計手法の変化が大きく寄与しています。ロジックICの大規模化がさらに進んだ2000年代以降は、RTLでも設計期間の長期化が深刻になり、より抽象度を高めたC言語での設計が盛んに研究されています。

ゲート・レベルがロジックICの基礎

 このように最新のロジックIC設計は、いわゆるゲート・レベルの論理回路とはかけ離れたものになっています。ですが、ゲート・レベルの論理回路がロジックICの基礎であることに変わりはありません。ここからは、論理回路の基礎について少し解説していきます。

photo 図4 論理回路の分類

 論理回路(ロジック回路)には大別すると、「組み合わせ回路」と「順序回路」、「そのほかの論理回路」があります(図4)。組み合わせ回路とは、複数の入力の論理値(「1」あるいは「0」)の組み合わせによって出力の論理値(「1」あるいは「0」)が決まる回路のことです。順序回路とは、入力の論理値と、回路の内部に維持している論理値(内部状態)によって出力の論理値が決まる回路を意味します。

 これらの論理回路については、次回以降で詳しく説明していきましょう。




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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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