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ルネサスが車載マイコン「V850」の第4世代品を発表、FlexRay/AUTOSAR/機能安全への対応を加速

» 2010年11月04日 00時00分 公開
[EDN Japan]

 ルネサス エレクトロニクスは2010年11月、32ビットのプロセッサコア「V850」を搭載する車載マイコン「V850ファミリ」の第4世代品(写真1)のサンプル出荷を開始したと発表した。サンプル出荷を開始したのは、シャーシシステム向けの「Pシリーズ」5品種、ダッシュボード向けの「Dシリーズ」11品種、ボディシステム向けの「Fシリーズ」54品種で、総計70品種に上る。サンプル価格は、2Dグラフィックス用のメモリーを8Mバイト搭載するDシリーズの「V850E2/DP4-H」で6000円となっている。また、同社は、2012年までに同ファミリの品種数を100種以上まで増やす方針である。


写真1 「V850ファミリ」の第4世代品 写真1 「V850ファミリ」の第4世代品 

 ルネサスは、車載マイコンの事業について、合併前の2社(NECエレクトロニクスとルネサス テクノロジ)がそれぞれ展開していた製品ラインアップを基本的に継承する方針を打ち出している。V850ファミリは、NECエレクトロニクスが開発/販売していた32ビットマイコンで、今回の第4世代品も、従来のV850ファミリのアーキテクチャを受け継いだものとなっている(図1)。

 まず、第4世代品は、90nmの製造プロセスを採用したことを特徴としている。既存のV850ファミリの製造プロセスは、2002年に発表した第2世代品が0.25μm、2005年に発表した第3世代品が0.15μmだった。なお、2014年に発表する予定の第5世代品は、40nmの製造プロセスを採用する方針である。


図1 ルネサスの車載マイコンのロードマップ 図1 ルネサスの車載マイコンのロードマップ 上側にあるのが旧NECエレクトロニクスの製品群で、下側にあるのが旧ルネサステクノロジの製品群。オレンジ色の線で囲んでいるのが「V850ファミリ」の第4世代品である。

 そして、第4世代品の最大の特徴となっているのが、次世代の車載LAN規格であるFlexRay、車載ソフトウエアの標準規格AUTOSAR、機器の動作の安全性を保証する機能安全規格という3つの規格への対応を拡充したことである。ルネサスのMCU事業本部で自動車システム統括部長を務める金子博昭氏は、「FlexRayについては、V850の第3世代品ではPシリーズの数品種しか対応しておらず、“点”でしか展開できていなかった。しかし、第4世代品では、より汎用的に用いられるボディシステム向けのFシリーズにもFlexRay対応品を追加しており、“面”での展開が可能になった。車載LANへのFlexRayの採用を広げていく上で、半導体メーカーとして行うべき準備は整ったと言えるだろう」と語る。

 また、AUTOSARについては、今回発表した70品種すべてにおいて、AUTOSARにおけるドライバソフトウエアに相当するMCAL(Microcontroller Abstraction Layer)として、ルネサス内製のもの、もしくはルネサスの提携企業のものを提供する方針である。

 機能安全規格については、Pシリーズのみが対応する。Pシリーズは、搭載する2個のV850コアを用いた冗長動作やメモリー保護機能などによって機能安全規格への準拠が可能なものに仕上げてある。金子氏は、「第4世代品のPシリーズは、主に電動パワーステアリング(EPS)や電気自動車/ハイブリッド車の電動駆動システムなどのモーター制御向けに展開する。特に、EPS向けのマイコンでは、顧客から機能安全規格への対応を強く求められていた」と説明する。Pシリーズの機能安全規格に関する認証については、第三者認証機関から、最も高い安全レベルを取得可能なマイコンとして認証が得られるように取り組みを進めている。この最も高い安全レベルとは、機能安全規格の汎用規格であるIEC 61508におけるSIL 3、自動車向け機能安全規格ISO 26262におけるASIL Dのことである。

 各シリーズの特徴は以下のとおり。Pシリーズは、主な用途がモーター制御になることから、モーター制御用のタイマーと12ビットのA-Dコンバータを内蔵している。パッケージはQFPで、端子数は80〜144本。端子数が144本の品種のみ、FlexRayに対応している。Dシリーズは、液晶ディスプレイを用いるメーターシステムなどで利用できるように、グラフィックス機能を内蔵している。2Dグラフィックスを表示する場合、内蔵の表示用RAMを用いることで、外付けメモリーが不要になる。表示用RAMは最大8Mバイトまで内蔵することができる。このメモリー容量であれば、最大でQVGA(画素数で320×240)のグラフィックス表示が可能である。また、ドイツTES Electronics Solutions社の3Dグラフィックス表示用IP(Intellectual Property)を搭載する品種もある。Fシリーズは、動作周波数が48MHz〜160MHz、内蔵フラッシュメモリーの容量が256Kバイト〜4Mバイト、端子数が64本〜256本と、品種を幅広くそろえていることを特徴としている。端子数が100本以上の品種はFlexRayに対応。また、整備工場におけるECU(電子制御ユニット)のメンテナンスなどの用途で採用が始まっているイーサーネットに対応する品種もある。

(朴 尚洙)

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