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早稲田大学が新型の電動バスを開発、非接触給電システムも搭載

» 2010年11月30日 00時00分 公開
[Automotive Electronics]

 早稲田大学の環境・エネルギー研究科は、2002年から電動バスの実用化を主な目的とした研究を行っている。2010年10月には、リチウム(Li)イオン電池を搭載した新型の電動バス「WEB(Waseda Advanced Electric Micro Bus)-3」(写真1)を発表した。現在、このWEB-3を用いた公道走行実験を、JR/秩父鉄道の熊谷駅周辺(埼玉県熊谷市)のバスルートで行っている(同年12月6日まで)。


写真1 早稲田大学が開発した電動バス「WEB-3」 写真1 早稲田大学が開発した電動バス「WEB-3」 
写真2 WEB-3の車両後部 写真2 WEB-3の車両後部 Liイオン電池モジュールの搭載スペースとなっている。

 WEB-3は、日野自動車の低床マイクロバス「ポンチョ ロング」をベースに、ディーゼルエンジンに替えて電動システムとLiイオン電池モジュールを搭載した電動バスである。乗車定員は25人で、ベース車のポンチョ ロングよりも5人少なくなっている。これは、大きな容積を占めるLiイオン電池モジュールの搭載スペースとして、車両後方の座席部分をあてているからである(写真2)。

 Liイオン電池モジュールは、ジーエス・ユアサ コーポレーションのLiイオン電池セル「LIM-40」を直列に14個、並列に3個並べた構成となっている。電池モジュールの定格電圧は372Vで、定格容量は44kWh。満乗車時における走行可能距離は、JE05モードで65km。40km/hの定速走行であれば、100kmの走行も可能である。放電時の最大電流値は600Aで、充電時の最大電流値は360Aとなっている。充電時間は、電池残量がゼロの状態から満充電までで1.5〜2時間。ただし、継ぎ足し充電であれば、10km走行した後にその10km分の容量を充電するのに要する時間は10分〜15分程度で済む。

 電動システムのモーターは、米UQM Technologies社の永久磁石同期型モーター「Power Phase 145」を採用した。同モーターの最高出力は145kWである。インバータをはじめとするモーターの制御システムは、国内の電装品メーカーがWEB-3専用に開発したものを利用している。ポンチョ ロングからWEB-3への改造は、フラットフィールドが担当した。

 WEB-3の電費(一般の乗用車における燃費)は、JE05モードで1.8km/kWh、40km/hの定速走行時で2.8km/kWhである。また、ベース車であるポンチョ ロングと比べて、JE05モードで走行したときに排出するCO2の量を約54%削減できるという。なお、WEB-3のCO2排出量は、東京電力が定めた電力発電時に発生するCO2量から計算したものである。また、WEB-3はモーターで走行することから、通常のエンジンを搭載する車両よりも走行時の騒音を小さくすることもできる。車外騒音は、ポンチョ ロングが76.5dBであるのに対して、WEB-3は68dBに低減することができた(40km/hの定速走行時)。

写真3 充電操作用のタッチパネルインターフェース 写真3 充電操作用のタッチパネルインターフェース このタッチパネル画面は、非接触給電システムを用いて充電を行う際に用いる。
写真4 電動システムやLiイオン電池モジュールの状態を示すタッチパネル 写真4 電動システムやLiイオン電池モジュールの状態を示すタッチパネル 

 WEB-3は、非接触給電システムを搭載していることも特徴の1つとする。早稲田大学は2005年から〜2009年まで、昭和飛行機工業と共同で電動バス向けの非接触給電システムを開発してきた。ハードウエア全般の開発を昭和飛行機工業が担当し、充放電の制御を行うソフトウエアの開発を早稲田大学が担当した。非接触給電の方式は電磁誘導方式である。WEB-3に搭載したシステムは、出力が30kW、出力電圧が400V。給電の総合効率は92%となっている。また、給電時における送電コイルと受電コイル間のギャップは、最大12cmまで対応する。2009年までの開発成果では、最大10cmまでしか対応していなかった。

 WEB-3において、電動システム、Liイオン電池モジュール、非接触給電システム以外に追加したシステムとしては、充電操作用のタッチパネルインターフェースが挙げられる。同インターフェースは、運転席のフロントガラスの上部に設置されている(写真3)。また、運転席の後方には、電動システムやLiイオン電池モジュールの状態を示すタッチパネルが設置されている(写真4)。

(朴 尚洙)

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