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» 2011年03月01日 00時04分 公開

抵抗膜方式か? 静電容量方式か?:タッチパネル技術の最新動向を追う (2/4)

[Brian Dipert,EDN]

幅広く採用される抵抗膜方式

 富士通コンポーネントやグンゼなどは、抵抗膜方式のタッチパネルを積極的に拡販している。同方式は、電子機器に搭載されるタッチパネルの方式としての歴史は最も長い。また、これまでに、数多くの機器に用いられてきた実績を持つ。現在、民生用機器において、静電容量方式のタッチパネルが抵抗膜方式に取って代わりつつあることは確かだ。しかし、多くの機器にわたって最も広く用いられているタッチパネル方式が、抵抗膜方式であることもまた事実である。

 抵抗膜方式のタッチパネルの基本的な特徴は3つある。1つ目は、ハードウエアが安価なこと。2つ目は、タッチパネルの機能を実現するためのアルゴリズムがあまり複雑ではないことである。そして3つ目は、入力インターフェースや制御回路に高性能のICや部品を用いる必要がなく、消費電力も少なくて済むことだ。

図1 抵抗膜方式タッチパネルの構造(提供:Elo TouchSystems社) 図1 抵抗膜方式タッチパネルの構造(提供:Elo TouchSystems社) 抵抗膜方式は、タッチすることにより互いに離れている2つの導電層がショートする現象を利用する(a)。まず、タッチ位置のX軸座標を測定する(b)。次に、裏層から電圧を測定することにより、タッチ位置のY軸座標を得る(c)。5線式の抵抗膜方式は、実装がより複雑でコストもかかるが、タッチパネルをプローブとしてのみ利用することで耐久性や信頼性を高めている(d)。

 抵抗膜方式のタッチパネルには、使用する電極の本数や配置の違いによって4線式、5線式、7線式、8線式といった種類がある。これらのうち、最も広く用いられているのが4線式である。

 タッチパネルは、最上層に位置する柔軟性を備えたフィルム(この「柔らかい」感触が一部のユーザーには不評のようだ)と、透明なガラスなどを用いた基板から構成される。フィルムの裏面と基板の表面には、ITO(酸化インジウムスズ)を用いた透明導電膜のコーティングが施されているのが一般的だ(図1)。フィルムと基板の間には、絶縁体スペーサである「ドット」が一定の間隔で配置されている。これによって、フィルムと基板の間には空隙が設けられている。そして、タッチパネルの上面から、指やスタイラスでフィルムを押すと、その接触点においてフィルムと基板の内側の導電膜が接触して“ショート”し、タッチされた位置を特定することができる。

 米Tyco Electronics社の子会社である米Elo TouchSystems社によれば、タッチパネルのコントローラは、まず基板側の透明導電膜に5Vを印加しておくという。そして、タッチが行われて2つの導電膜が接触したときに、コントローラはフィルム側の透明導電膜の電圧値を測定する。この電圧値(例えば2.5Vなど)が、タッチパネルの左右方向の位置、つまりX軸座標に変換される。次に、逆の処理を行う。フィルム側の透明導電膜に5Vを印加し、基板側の透明導電膜の電圧値を測定する。この電圧値は、タッチパネルの上下方向の位置、つまりY軸座標に変換される*2)

5線式は耐久性と信頼性を向上

 上述したように、4線式の抵抗膜方式の特徴は構造が簡素であることだ。しかし、その簡素な構造が原因で、同方式の最大の短所と言われる信頼性の低さが生じている。Elo TouchSystems社の資料によれば、4線式の最大の欠点は、座標軸の1つ(一般的にはY軸)を検出する際に、柔軟性を持つフィルムの電位勾配を均一と見なすことにあるという。タッチパネルの最上層にあるフィルムは、タッチによって曲がったり、たわんだりする。そして、最終的にはフィルムの内側の透明導電膜に小さな亀裂が生じて、その電気抵抗が変化する。こうなると、その座標軸の線形性と正確性は低下してしまうことになる。

 後に開発された5線式の抵抗膜方式タッチパネルでは、この問題が大幅に改善されている(その代わり少し高コストになる)。フィルムに接続される電極のうち、1本の線Eが、X軸/Y軸の電圧を測定するためのプローブとなる(図1(d))。残りの4本は、基板の4隅A、B、C、Dに接続される。タッチパネルのコントローラは、まず、AとBの2隅に5Vを印加し、CとDを接地する。そして、電流が基板の図の上から下の方向へと均等に流れるようにする。タッチを行った際には、Eの電極を使ってフィルムの電圧値を測定する。この電圧値は、Y軸座標に変換される。次に、コントローラは、AとCの2隅に5Vを印加し、BとDを接地して、Eの電極を使ってフィルムの電圧値を測定する。この電圧値は、X軸座標に変換される。

 5線式の抵抗膜方式は、X軸とY軸の両方の測定に対し、曲がりもたわみもしない基板側の透明導電膜の電位勾配を利用する。柔軟性の高いフィルムは、電圧を測定するプローブとして使用されるだけなので、たとえフィルムの透明導電膜が均一な状態でなくなったとしても、タッチ位置の検知を正しく行い続けることが可能である。

 抵抗膜方式タッチパネルでは、漢字をはじめとする複雑な文字や記号の入力に欠かせないスタイラス、クレジットカードの角、手袋をはめた指など、任意の手法によるタッチを検出することができる。その一方で、ディスプレイの表面を布で拭くときなど、本来のタッチ以外の要因によってタッチパネルに圧力が加わると、意図に反してタッチパネルが反応してしまう。また、本質的にEMI(電磁干渉)と湿度の影響を非常に受けやすいという問題もある。

 5線式によって、抵抗膜方式の耐久性と信頼性は大きく改善されるものの、まったく劣化しないわけではない。正確に何回までのタッチに耐え得るかは、スタイラスの材質の固さ、先端の鋭さ、タッチ時に加わる力に依存する。周囲の温度と湿度の変化による影響やタッチによる透明導電膜の劣化という問題がある限り、抵抗膜方式タッチパネルでは、タッチ位置の検知精度に関する校正作業をユーザーが定期的に行う必要がある。


脚注

※2…"Compare All Resistive Touch Technologies (4-, 5-, 6-, 7-, and 8-Wire Explained)," Tyco Electronics, http://bit.ly/cIO9vX


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