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電動化だけでは不十分、燃費向上には“総力戦”で挑む

» 2011年04月01日 00時00分 公開
[Automotive Electronics]

 2011年1月に米ミシガン州デトロイトで開催された『北米国際自動車ショー(NAIAS) 2011』では、自動車の燃費向上が最大のテーマとなった。

 自動車メーカー各社は、2016年までに、米国内で販売する車両について、35.5マイル/ガロン(15.1km/リットル)という企業別平均燃費(CAFE)の基準値を達成することが義務付けられている。この値を達成する上で最も有効な方法の1つが、市場に投入する車種を新たな電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)とすることである。NAIAS 2011でも、数多くのEVやHEVが展示された。米Ford Motor社は、EV「Focus Electric」を2011年後半から販売店に出荷し始めることを明らかにした。Focus Electricは、満充電からの走行距離が100マイル(約160km)。これは、2010年末に米国で発売された日産自動車のEV「リーフ」と同等の性能だ。両社は、米国のEV市場で真っ向から対決することになる。また、Ford社は、HEV「C-Max hybrid」とプラグインハイブリッド車(PHEV)「C-Max Energy」を2012年中に発売することも発表している。

 一方、トヨタ自動車は、2012年に発売予定のPHEV「プリウス プラグインハイブリッド」と、SUV(スポーツ多目的車)「RAV 4」のEVモデルを展示した。プリウス プラグインハイブリッドは、電気エネルギーだけで13マイル(約21km)の走行が可能で、ガソリンを用いた走行も含めれば走行距離は500マイル(約 805km)以上に達する。PHEVという点では、2010年末に米国で発売された米General Motors社のPHEV「Chevrolet Volt」と競合することになる。

オーディオ機器も燃費に影響

 EVやHEVのように電動システムを搭載する以外にも、燃費向上が可能なさまざまな技術を求めて、自動車メーカーはサプライヤにかつてないほどの熱い視線を送っている。

 ドイツHarman/Becker Automotive Systems(以下、Harman)社でグローバルビジネス開発担当役員を務めるRobert Barnicoat氏は、トヨタ自動車向けのカーオーディオ機器の開発について、同社から「あらゆる部分で最大限の努力をしてほしいと言われている」と述べている。現在、Harman社は、同社の省電力オーディオ技術「GreenEdge」を用いて、トヨタ自動車との共同開発を進めている。「従来は、カーオーディオ機器が燃費向上に貢献するなどとは、誰も考えていなかった。それが現在では、トヨタ自動車のような大手メーカーが、カーオーディオ機器なども対象として、ありとあらゆる解決策を模索するようになった。GreenEdgeは、こうしたニーズに応える形で採用された」(Barnicoat氏)という。

写真1トヨタ自動車の「Prius v」 写真1 トヨタ自動車の「Prius v」 カーオーディオ機器に、Harman社の「GreenEdge」技術を採用している。

 トヨタ自動車は、2011年中に発売する予定のワゴンタイプのHEV「Prius v」(写真1)に、GreenEdgeを用いたカーオーディオスピーカを搭載する予定である。GreenEdgeにより、従来品と比べて、重量を37%、消費電力を41%、パッケージ部材の使用量を5%削減することが可能になる。従来のオーディオスピーカは寸法が大きくなりがちで、スペースが限られている車両内部に設置するのが困難なことが多く、重量も大きかった。Barnicoat氏は、「カーオーディオ機器の容積と重量は永遠の課題だ。われわれは、今後も自動車メーカーの軽量化に対する取り組みに貢献していきたい」と述べている。

アイドリングストップは効果大

 デンソーも、燃費向上に貢献するための技術を披露した。採用の拡大が期待されているアイドリングストップシステム向けのスタータモーターを新たに開発したのである。デンソーは、多数の自動車メーカーと協議を進めており、早ければ2012年に発売される車種に、このスタータモーターが搭載される。

 信号待ちなどの際にエンジンを停止することによって燃料の使用量の削減を図るアイドリングストップシステムは、北米の自動車市場でも需要が高まっている。北米市場全体では、路上でのアイドリングによって年間約30億ガロン(約114億リットル)ものガソリンが無駄に消費されているからだ。デンソーの米国法人であるDenso International America社でエンジン電気技術担当役員を務めるRobert Martin氏は、アイドリングストップシステムの燃費向上効果について、「一般的なガソリンエンジン車で、燃費を3〜5%向上できる。中/大型車での効果は最大で7%にも達する」と説明する。

 デンソーのスタータモーターは、従来品と比べて、エンジンの始動動作に対する耐性が10倍になっている。Martin氏によると、「通常のスタータモーターは、乗車時に1回だけしかエンジンの始動動作を行わないので、約3万5千回のエンジン始動に対する耐久性しか持っていない。一方、当社のアイドリングストップシステム用スタータモーターは、35万回以上のエンジンの始動動作に耐えられることを保証している」という。

情報システムも貢献

 Ford社は、電動システムやエンジンなどのパワートレイン以外の分野でも、燃費向上に役立つ技術の開発に取り組んでいることを強調した。同社が発表した一連の車載情報システムは、EVの性能を引き出すのに役立つものだ。例えば、ドライバーは、同社のEVに搭載されている液晶ディスプレイを用いたメーターから、搭載する2次電池の残量を確認することができる。このメーターは「MyFord Touch」と呼ばれており、2次電池の残量をアイコンで表示しながら、GPS(全地球測位システム)と連動して目的地までの残りの距離を走行できるかどうかを知らせてくれる。

 また、「MyFord Mobile」というスマートホン用アプリケーションを使うことで、2次電池の残量をスマートホンの画面に表示したり、電力料金の安い夜間に車両を充電する機能(米Microsoft社が開発)を利用したりすることができる。MyFord Mobileには、ドライバーの運転の癖を「zippy(元気者)」から「zen(禅僧)」まで複数のタイプに分類する機能も含まれている。この機能による分類を基に、2次電池の残量から走行可能距離を計算することも可能だ。もちろん、近くにある充電器の位置を知らせる機能も搭載している。

(Design News誌、Charles J Murray)

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