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» 2011年06月01日 00時03分 公開

無線センサーの電力源の理想像を探る:環境発電に適した蓄電デバイス (2/3)

[Margery Conner,EDN]

環境発電に適した蓄電デバイス

 環境発電を適用するにふさわしいアプリケーションもある。米Logitech社のソーラー充電式ワイヤレスキーボード「K750」は、その一例である(写真1)。 1次電池を使用する一般的なワイヤレスキーボードは、長時間動作することができる。だが、電池というものはいつか消耗する。「肝心なときに限って電池が切れて動かなくなった」という経験をお持ちの方も多いだろう。そこでLogitech社は、米Texas Instruments(TI)社のソーラー電卓に倣ってK750に太陽電池を搭載した*4)。キーボードに使用されているボタン型リチウム電池を、太陽電池で充電するという仕組みである。なお、K750は、電池だけでも2カ月間使用することができる。


写真1ソーラー充電式のワイヤレスキーボード「K750」 写真1 ソーラー充電式のワイヤレスキーボード「K750」 リチウムボタン電池だけで2カ月間使用できる。リチウムボタン電池は太陽電池によって充電する。

 続いて、無線センサーネットワークでの環境発電の利用について詳しく検討してみよう。一般的な無線センサーネットワークでは、センサーノードのデバイスをスリープモードにすることによって低消費電力のシステムを実現している。センサーノードは間欠的に起動して周囲の状態を検知し、その状態に対応するデータを受信側のノードに送信する。この一連の動作は、リアルタイムに周囲から収集できるエネルギー量より多くの電力を必要とする。先述したように、この問題に対処する方法としては、周囲から収集したエネルギーを少しずつ蓄電デバイスに貯蔵し、貯蔵したエネルギーを1度のバースト通信で使用して、その後、再びエネルギーの貯蔵動作に戻るというのが理想的なものとなろう。

 環境発電とともに用いる蓄電デバイスとしては、電気2重層キャパシタをはじめとするキャパシタと2次電池の2種類が考えられる。これらは、無線センサーネットワークにおいて通信機能のためのエネルギー源とする上では、それぞれに制約を抱えている。電気2重層キャパシタの場合はリーク電流、2次電池の場合は充放電サイクル回数が問題となる。

写真2エネルギー収集用のモジュール「EM300」 写真2 エネルギー収集用のモジュール「EM300」 圧電振動子など、さまざまなデバイスをエネルギー源とする環境発電システムに対応する。

 米Advanced Linear Devices(以下、ALD)社は、太陽電池と変換器(トランスデューサ)を用いてエネルギーを収集するモジュール(ハーベスタ)を開発している(写真2)。同社でマーケティング/セールス部門のディレクタを務めるJohn Skurla氏は、「環境発電ではエネルギーの貯蔵がカギになる。収集の対象となるエネルギー源としては、断続的にエネルギーを発生するものが多いからだ」と述べる。その上で同氏は、「小型の発電機を変換器のように動作させることで、機械エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。その後、電気エネルギーを何らかの形で蓄電デバイスに貯蔵する」と説明した。現在、ALD社のモジュールは通常のキャパシタを使用しているが、2次電池や電気2重層キャパシタの動向も注視しているという。

■2次電池

 Logitech社のキーボードでは、寿命が1年ほどの充電式コイン型リチウム電池「ML2032」(日立マクセルエナジー製)を使用している。この種の電池は進化の途上にあるため、Logitech社は「慎重に評価を行っている」(Skurla氏)という。同氏は、「コイン型リチウム電池については、過充電にも過放電にもならないように細心の注意を払う必要がある。過充電すると通常とは異なる化学反応が起こり、過放電を起こすと、また異なる化学反応が生じる。過充電や過放電を起こすような誤った使い方をすると、その電池は使いものにならなくなる」と指摘する。なお、同氏は、「過放電を起こしても電池が発火したりすることならない。ただし、電池が使いものにならなくなることに違いはない」と付け加えた。さらに同氏は、「この性質は、充電式のコイン型リチウム電池の特徴の1つだ。従来は、過放電については対処する必要はなかった」と続けた。

写真3「ML」シリーズ 写真3 「ML」シリーズ 充電式の2酸化マンガンリチウム電池。機器メーカーに対して組み込み部品としてのみ販売されている。

 日立マクセルエナジーは、2酸化マンガンリチウム2次電池「ML」シリーズの情報を公開している。MLシリーズは、機器メーカー向けの組み込み部品としてのみ販売されている(写真3)。充放電サイクル回数は1000回である。

■電気2重層キャパシタ

 ALD社は、収集したエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスとして電気2重層キャパシタを使用することも検討している。だが、Skurla氏は、「電気2重層キャパシタの大きな容量は魅力だが、リーク電流もかなり多い」と指摘する。その上、リーク電流の特性や保存特性についても、正確な仕様を得ることが難しい。

 リーク電流は容量に比例する。Skurla氏は、「強いニーズがあるのは、0.1Fの電気2重層キャパシタと同等レベルのリーク電流特性で、なおかつ、容量が10Fというレベルの製品だ。現在入手できる電気2重層キャパシタは、環境発電の用途に使用できるレベルより、リーク電流が約10倍も多い」と述べた。

 電気2重層キャパシタの技術は、リチウムキャパシタの登場によって1つの進歩を迎えた。例を挙げれば、JMエナジーが発表した「ULTIMO」がある。また米Ioxus社は、2010年12月に、一般的な電気2重層キャパシタと比べてエネルギー密度が2.15倍に達するリチウムキャパシタ製品シリーズを発表した。

 Ioxus社は、米国連邦政府の補助を受けて、米Binghamton Universityと共同で電気2重層キャパシタのエネルギー密度の向上に取り組んでいる。同社の取り組みによって、容量が220F、300F、 800F、1000Fの4種類のハイブリッドキャパシタが開発された。ハイブリッドキャパシタは陽極に炭素電極、陰極にリチウムイオン電極を使用したもので、2万回の充放電サイクルを実現している。また、リーク電流は72時間で0.6mA相当だという。価格は、300F品が1個当たり4〜6米ドルである。


脚注

※4…Conner, Margery, "Energy harvesters extract power from light, vibrations," EDN, Oct 27, 2005, p.45


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