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» 2011年08月31日 00時00分 公開

「ミックスド・シグナルからミックスド・ドメインへ」――Tektronixがスペアナ搭載オシロを発表(2/2 ページ)

[EDN Japan]
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内蔵スペアナの性能はミドルレンジ級

図4 ミックスド・ドメイン・オシロのアーキテクチャ(提供:Tektronix) 図4 ミックスド・ドメイン・オシロのアーキテクチャ(提供:Tektronix) オシロ部のアナログ入力チャンネルとは別に、スペアナ部専用の独立したRF信号処理経路を備える。その経路に組み込んだ専用のA-D変換器はサンプル速度が10ギガサンプル/秒と極めて高く、広い帯域幅にわたるRF信号のスペクトラムを同じタイミングで取り込むことが可能だ。

 MDOに搭載したスペアナは、オシロ部から独立したモジュールとしてスペアナ部をまとめた上で、オシロの筐体に内蔵した(図4)。このスペアナ部に専用のRF入力ポートと専用のRF信号処理経路を備える。さらに、使い勝手を高めるため、オシロのフロントパネルにスペアナ専用の操作ボタンやテンキーを設けた。すなわち、従来のオシロにオプション機能として用意されていた、オシロのA-D変換器を使ってRF信号を取り込んで、プロセッサ上のソフトウエア処理でFFT(Fast Fourier Transform)を施してスペクトラムを求めるという方式とは異なる。ただし、FFT方式を採用している点は同じだ。RF信号処理経路に組み込んだ周波数ダウンコンバータでRF入力の周波数を調整してから、同経路で後段に続くスペアナ部専用の高速A-D変換器でデジタルデータに変換し、FFTを施すという仕組みだ。

 Tektronixによると、このスペアナ部の性能は、単体測定器として市販されているスペアナの「ローエンドからミドルレンジ級に相当する」という。測定周波数範囲は機種によって異なり、50kHz〜3GHzもしくは50khHz〜6GHz。下限周波数が一般的なスペアナに比べると比較的高く、低周波数領域の測定には向かない。ただ、50kHzを下回る領域でも、精度は保証できないものの、測定自体は可能だという。ダイナミックレンジは代表値で60dBを確保した。「オシロのオプションとして用意されているスペアナ機能では、40dB程度にとどまる」(同社)。表示平均ノイズレベル(DANL)は、例えば5M〜3GHzで−148dBm/Hz未満を保証する。レベル確度は、±1dB未満(20〜20℃における代表値)である。

 位相ノイズ特性は、2GHzの連続波(CW)に対してオフセットが10kHzのときに−90dBc/Hz未満、100kHzで−95dBc/Hz未満、1MHzで−113dBc/Hz未満を保証している。また、オシロ部のチャンネルからRFチャンネルへのクロストークについても規定しており、1GHz以下のときにスペアナ部のリファレンスレベルから−68dB未満、1GHz〜2GHzのときに同−48dB未満とした。こうした特性からは、RFシンセサイザが出力する高周波信号の位相ノイズを高い精度で評価するといった用途には必ずしも適していないことが分かる。あくまでも主眼は、アナログ信号とデジタル信号、RF信号の挙動を時間的な相関をとりながら観測する用途にあり、デバッグやトラブルシューティングで特に力を発揮するような性能にまとめられている。

1GHzを超える帯域幅のスペクトラムを一気に捕捉

 このスペアナ部で特徴的なのは、取り込み帯域幅が1GHz以上と極めて広いことだ。このスペアナ部を含め、A-D変換器によるデジタルサンプリングとFFTを利用するタイプのスペアナでは一般に、スーパーヘテロダイン方式で周波数を掃引するタイプのスペアナとは異なり、一度にA-D変換してFFTできる帯域幅であれば、その帯域内の全周波数成分を同じタイミングで取り込める。

 Tektronixは従来から、単体計測器のスペアナとして、このFFT方式を採用する機種をリアルタイム・スペアナと呼んで供給しており、同一タイミングで取り込める帯域幅をリアルタイム帯域幅と表現していた。ただし、「当社のリアルタイム・スペアナのハイエンド機種でも、リアルタイム帯域幅は最大110MHzだった。掃引型では、10MHz程度にとどまっていた」(同社)。リアルタイム・スペアナでは、分解能が14ビットと高いA-D変換器を用いていたが、サンプリング速度は数百メガサンプル/秒だった。それに対し今回のオシロに搭載したスペアナ部は、分解能は比較的低いものの、サンプリング速度が10ギガサンプル/秒と極めて高いA-D変換器を採用する。こうして、1GHz以上と非常に広い取り込み帯域幅を実現した。取り込み帯域幅の上限は観測対象とする周波数によって異なるが、最大で3GHzが得られるという。

 これにより、例えば、「RFシンセサイザの出力周波数を変更して2.4GHzに設定したときに、最終的に2.4GHzにロックされるまでのμsオーダーの短い時間のうちに、出力周波数が500MHzといった広い帯域にわたって変動したとしても、それを取りこぼしなく捕捉できる」(同社)。掃引型でも旧来のリアルタイム機でも、このような現象を観測することはできなかったという。

4機種をラインアップ、価格は238万円から

 オシロ部の帯域幅やスペアナ部の周波数範囲などの性能が異なる4機種を用意した。いずれの機種も、アナログ入力は4チャンネル、デジタル入力は16チャンネル、RF入力は1チャンネル。4機種の内訳は、アナログ入力の帯域幅が500MHzでRF入力の上限が3GHzの「MDO4054-3」と、同6GHzの「MDO4054-6」、アナログ入力の帯域幅が1GHzでRF入力の上限が3GHzの「MDO4104-3」と、同6GHzの「MDO4104-6」である。

 価格は、最も安価な500MHz/3GHz機のMDO4054-3を238万円(税別)に設定した。「同等性能のミックスド・シグナル・オシロとスペアナをそれぞれ単体計測器として購入すれば、300万円以上になってしまうだろう」(Sigel氏)。最も価格が高い1GHz/6GHz機のMDO4104-6は、338万円である。

(薩川 格広)

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