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ARM vs. Intel:プロセッサアーキテクチャの覇権はどちらの手に?(後編)技術革新を生み出す果てなき闘争(4/4 ページ)

» 2011年10月04日 11時48分 公開
[Brian Dipert,EDN]
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「Krait」と「Sheeva PJ4」

 QualcommとMarvell Technology Groupは、ARMのプロセッサIPについてアーキテクチャライセンスを取得している。このため、一般ライセンスを有する競合他社に比べて柔軟な設計が行えることは先に述べた通りである。

 QualcommのScorpionアーキテクチャベースのSoCは、数世代のプロセス技術をまたいで製造されている。Scorpionが、ここ数年にわたって複数の顧客のさまざまな携帯機器に採用され、同社に多くの利益をもたらした。しかし、Cortex-A9コアを採用したSoCの市場展開が本格的になって来ると、Cortex-A8をデュアルコア構成にすることで、Cortex-A9の能力を擬似的に実現していた特徴は色あせて見える。

 この流れを受けてQualcommは、MWC 2011において、独自開発した次世代プロセッサコア「Krait」を発表した。KraitはARMv7命令セットと互換性を保っている。初期の製品は28nmプロセスで製造され、動作周波数は最大で2.5GHz。まず3つの製品が市場投入される。これらの製品は共通のデュアルチャネルバスを介してメインメモリと接続される。また、Kraitでは、Qualcomm独自のグライフィックスプロセッサ「Adreno」も提供される。

 最初に登場する製品は、シングルコアの「MSM8930」で、2012年初頭にサンプル出荷を開始する計画。グラフィックスプロセッサは、既存のAdrenoの6倍以上の性能を持つ「Adreno 305」である。2011年第2四半期までにサンプル出荷が始まるのが「MSM8960」である。MSM8960は、2個のプロセッサコアを非同期かつ独立して制御できるほか、「既存のAdrenoの8倍の性能を提供する」(Qualcomm)「Adreno 225」を搭載している。最も性能の高いクワッドコア構成の「APQ8064」は、グラフィックプロセッサの「Adreno 320」もクワッドコア構成で、既存のAdrenoと比べて最高15倍までの性能を実現できるという。

 3製品ともWi-Fi、GPS(全地球測位システム)、Bluetooth、FMトランシーバを搭載し、NFC(近距離無線通信)や裸眼3D映像の録画/再生をサポートする予定である。また、MSM8930とMSM8960では、LTE(Long Term Evolution)のみ、または3G(第3世代携帯電話)/LTEの両方に対応するベースバンド処理回路も集積する予定である。

 MarvellがARMのアーキテクチャライセンスを取得したのは、ASICAを買収した2003年のことである。しかし、現時点における、ARMのプロセッサコアを用いたSoCの設計チームは、その大半が2006年半ばに買収したIntelの「Xscale」を取得したときに移籍してきた。Marvellは、Intelから獲得したXscaleの「PXAシリーズ」を拡張して新たなSoC「ARMADAファミリ」を開発した。ARMADAファミリは、機能によって100、300、500、600、1000という5つのシリーズに分かれている。それぞれのシリーズのプロセッサコアは、「ARM9」やXscaleが準拠する命令セット「ARMv5」をベースとする「Sheeva PJ1」、または「ARM11」が準拠する命令セット「ARMv6」およびARMv7に準拠する「Sheeva PJ4」のどちらかを採用している。また、プロセッサコアの個数や動作周波数、キャッシュメモリの容量やキャッシュレベルの数、メインメモリのバス幅と速度、オンチップのグラフィックスプロセッサの処理能力、搭載されている周辺回路の種類や数などが異なっている。

 これまでMarvellは、PCや携帯電話機の分野において、Research In Motionの主要サプライヤになっている以外、また大きな成功を得ていない。とはいえ、Marvellは製品開発の努力を続けている。例えば、Marvellは2010年9月、Cortex-A9と同等の機能を備えるSheeva PJ4を3個搭載した「ARMADA 628」を発表した。3個のプロセッサコアのうち、2個は1.5GHzで動作し、3個目は624 MHzで動作する。さらに、オンチップのグラフィックスプロセッサは、2億トライアングル/秒で3Dグラフィックスを処理することが可能だ。さらに、その2カ月後の2010年11月、1.6GHzで動作するクワッドコア構成のSheeva PJ4と、最大容量が2MバイトのL2キャッシュを搭載した「ARMADA XP」をサーバー向けの製品として発表した。ただし、同社は2010年1月に開催された「CES 2010」において、「最初のクワッドコア構成のARMプロセッサは、民生用機器やゲーム機に向けて提供する」と公言していた。

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