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75W以下の電源向けPWMコントローラIC、無負荷時の待機電力は30mA

» 2011年11月16日 00時00分 公開
[EDN Japan]

 フェアチャイルドセミコンダクタージャパンは2011年11月、PWM(パルス幅変調)コントローラIC「FAN6756」を発表した。無負荷時の待機電力を30mWに抑えられる点を最大の特徴とする。ノートPCやプリンタ向けのACアダプタ、液晶テレビ/モニター用の電源ユニットなど、出力が75W以下のスイッチング電源の用途に向ける。パッケージは8端子SOP。現在サンプル出荷中で、1000個購入時の単価は0.71米ドルである。


 電子機器の低消費電力化は継続的に要求されており、各ICメーカーは消費電力、とりわけ待機電力を低減するための工夫を重ねている。今回フェアチャイルドが発表したFAN6756は、主に3つの技術で消費電力の低減を実現している。1つ目は、負荷に応じてPWMコントローラICの駆動電流を段階的に落としていくものだ。通常動作時は2.3mAある駆動電流を、軽負荷時には0.7mAに、無負荷時に用いる「バーストモード」では0.2mAまで低減することができる。2つ目は、無負荷時に電源の2次側の負荷を1次側にフィードバックする回路のインピーダンスを上げ、バーストモードよりもさらに消費電力を低減できる「ディープバーストモード」に切り替える技術である。具体的には、通常動作時では8k〜10kΩのインピーダンスを90kΩまで上げて、さらにスイッチング周波数を10Hz以下まで落としている。

 従来品の「FAN6755」にも用いられているこれら2つの技術に加えて、FAN6756に搭載されている3つ目の技術となるのが、EMI(電磁妨害)フィルタ回路で消費される電力を削減する「AX-CAP」である。FAN6756はAX-CAPを搭載した初の製品となる。

 EMIフィルタ回路では、コンセントが抜かれるなどAC電源からの電力供給が遮断されたときに、同回路内のコンデンサに充電されている電力を放電する必要がある。そのために組み込まれているのが放電抵抗である。しかし、通常動作時は、この放電抵抗にも電流が流れてしまうのでその分だけ消費電力が増えてしまう。そこで、放電抵抗の間にスイッチを設けて、コンデンサから放電するときのみこのスイッチをオンにすることにより、消費電力が増えないようにするといった対策がとられていることが多い。FAN6756は、放電抵抗とスイッチをICの内部に組み込んだ(図1)。フェアチャイルドは、「外部の放電抵抗やスイッチが不要になることで、それらに関連する部品を最大15個削減できる」と説明する。また、FAN6756を用いて構成した電源の無負荷時の待機電力は、FAN6755とスイッチを組み込んでいないEMIフィルタ回路を使用する電源よりも40%低い30mW以下に抑えられるという。

図1 コンデンサの放電回路 図1 コンデンサの放電回路 「FAN6756」は、EMIフィルタ回路のコンデンサ(赤線で丸く囲んだ部分)用の放電抵抗とスイッチをIC内部に組み込んでいる(赤線で四角く囲んだ部分)。

 この他、FAN6756は、過電圧保護機能、過電流保護機能、短絡保護機能といった各種保護機能を備えている。

(村尾 麻悠子)

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