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» 2011年12月15日 13時11分 公開

計測器を故障から守る、取り扱いの注意点を伝授(2/3 ページ)

[前田雅己/柿谷由絵(アジレント・テクノロジー),EDN]

信号発生器は逆電力に気を付ける

 信号発生器の取り扱いにまつわる故障原因として多いのは、出力端子に過大な電力を誤って印加してしまうことである。もちろん信号発生器には、前述の通り、逆電力保護機能が搭載されている。しかし上限値を超える過大な電力が印加されれば、出力回路が破壊され、信号を出力できなくなってしまう。

 過大な逆電力が加わる原因は、主に3つある。それぞれについて順番に、原因と防止方法を説明する。


図2 逆電力の印加を防ぐ 図2 逆電力の印加を防ぐ (a)は信号発生器に逆電力が印加される危険性が高い測定システムの例である。複数の信号発生器の出力信号を、絶縁特性の低い素子で合成する場合だ。例えば、方向性のないコンバイナを使うと、一方の信号発生器の出力電力は、被測定物ともう一方の信号発生器それぞれに、同じ大きさで印加されてしまう。(b)は、こうした逆電力の印加を防ぐ方法である。信号発生器の出力にアイソレータを挿入すればよい。

 故障原因の1つ目は、複数の信号発生器の出力信号を合成してから被測定物に供給するときに発生する(図2)。例えば、携帯電話基地局の受信特性試験である。2台の信号発生器を使うこの試験では、1台の信号発生器で希望波、もう1台の信号発生器で妨害波を生成し、電力合成器/分配器(パワー・コンバイナ/デバイダ)で合成してから携帯電話基地局に供給する。

 注意が必要になるのは、利用するコンバイナが方向性を備えていない場合だ。方向性がないコンバイナでは、複数のポートの間で、いずれの方向にも信号がそれほど減衰せずに通過する。つまりポート間の絶縁特性(アイソレーション)が低い。このため一方の信号発生器の出力信号が、もう一方の信号発生器の出力端子に、大きく減衰しないまま印加されてしまう。

 そこで、こうした試験を実施する際には、信号発生器の出力端子とコンバイナの間に絶縁器(アイソレータ)を接続することを推奨する。アイソレータは方向性を有しており、信号発生器の出力信号をコンバイナに向かって通過させる一方で、もう1台の信号発生器からコンバイナを介して侵入してくる逆電力を阻止する役割を果たす。もちろん、方向性を備え、アイソレーションが高いコンバイナを利用していれば、アイソレータを使わなくても逆電力の印加は防げる。

外付けアンプやスイッチにも注意

 故障原因の2つ目は、信号発生器にパワー・アンプを外付けして使う場合に生じる。複数の信号発生器の出力信号を合成する前述の例に当てはめてみよう。パワー・アンプ自体は、出力端子と入力端子の間のアイソレーションが高い。従って、例えば希望波側の信号発生器に外付けしたパワー・アンプは、妨害波側の信号発生器からコンバイナを介して侵入してくる逆電力をある程度減衰させる効果がある。しかしこの減衰量以上に、妨害波側の信号発生器に外付けしたパワー・アンプの増幅率が大きいと、コンバイナを介して流れ込む逆電力が信号発生器に到達してしまう危険性がある。

図3 単体時もアイソレータの使用が安全 図3 単体時もアイソレータの使用が安全 (a)は信号発生器を1台だけ使った測定システムである。パワー・アンプと被測定物との間にインピーダンスの不整合が生じると、反射信号が信号発生器の入力に逆電力として印加される危険性がある。この場合も(b)に示す通り、アイソレータを挿入する対策が有効だ。

 1台の信号発生器を単独で使う場合も、パワー・アンプと被測定物のインピーダンス不整合によって、反射信号が発生したりパワー・アンプが異常発振することで、パワー・アンプの入力側に大電力の信号が現れる危険性がある(図3)。この信号はそのまま、信号発生器の出力端子に逆電力として印加されてしまう。

 こうした事態を防ぐには、先ほどの例と同様に、信号発生器の出力端子とパワー・アンプの間にアイソレータを接続すればよい。アイソレータの代わりに電力制限器(パワー・リミッタ)も使える。

故障原因の3つ目は、信号発生器と被測定物の間にパワー・アンプなどの能動部品を挿入する際に、信号発生器と能動部品の間にスイッチ素子や能動部品向けの直流電源(バイアス)回路を接続する場合だ。スイッチ素子やバイアス回路を動作させた瞬間にサージ・パルスが発生し、信号発生器に過大な逆電力が印加されてしまう危険性がある。これを防ぐには、信号発生器の出力にパワー・リミッタを挿入すればよい。また、バイアス回路が出力する直流電圧が信号発生器に逆電力として印加されないように、直流阻止用コンデンサ(DCブロック)を挿入することも有効だ。

静電気放電がオシロを襲う

図4 接続前に静電気を放電する 図4 接続前に静電気を放電する (a)は、オシロスコープのTDR測定モジュールの故障原因として多い、静電気放電(ESD)の発生メカニズムである。被測定物にTDR測定モジュールのプローブを接続した瞬間に、被測定物にたまっていた静電気が放電する。この結果、モジュールの入出力部が静電破壊されてしまう。これを防ぐには、プローブを接続する前に、(b)に示すように、被測定物を接地端子につないで静電気を取り除いておく。

 オシロスコープでは、TDR(Time Domain Reflectometry)測定用プラグイン・モジュールの取り扱いに起因した故障が多い。被測定物を接続した際に、被測定物からの静電気放電(ESD)によって、TDRモジュールの入出力部が破壊されてしまうのだ(図4)。一般にTDRモジュールは、急峻なパルス信号を出力するステップ・ジェネレータと、被測定物から反射してきたパルス信号を受け取るサンプラを内蔵しており、両者の間には方向性を備えた分配器(デバイダ)を挿入してある。この方向性デバイダのダイオード素子が、静電気によって絶縁破壊されてしまうのである。静電気が原因であるため、空気が特に乾燥する秋季から冬季に発生が集中している。

 具体例として、車載用ロッド・アンテナの検査工程を考えてみよう。検査前のロッド・アンテナは、「エアーキャップ」などの気泡緩衝材で包まれた状態にある。これを作業者が抜き取ると、ロッド・アンテナに静電気がたまる。この静電気は、気泡緩衝材とロッド・アンテナの摩擦によって生じるものだ。従って、作業者が静電気防止用のリスト・ストラップを着けたり、作業場所に静電気防止マットや静電気除去装置(イオナイザ)を導入したりしても、完全に防ぐことはできない。ロッド・アンテナに限らず、プリント基板やケーブルでも同様に、静電気がたまる危険性がある。

 こうしたESDによる故障を防ぐためには、被測定物をTDRモジュールに接続する前に、静電気を意図的に放電させる必要がある。具体的には、リード線を用意し、その一端を計測器などの接地端子につなぐ。次に、もう一端を被測定物の測定点に接続し、たまっていた静電気を接地に放電させる。その後で、TDRモジュールを測定点に接続すればよい。

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