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» 2012年01月31日 07時30分 公開

製品解剖:太陽のエネルギーが電力網につながるまで、PVインバータ「Sunny Boy」に学ぶ (3/3)

[Steve Taranovich,EDN]
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デジタル制御アーキテクチャを採用

 Sunny Boyのインバータを支える“頭脳”として機能するコントローラには、DSP(Digital Signal Processor)が採用されている。Texas Instruments(TI)の「TMS320F2812」(英語の製品情報)だ。このようなDSPベースのコントローラを用いると、PVインバータで求められるリアルタイム処理を実行するための高い演算性能とソフトウェアプログラミングによる柔軟性というメリットが得られる。インバータのメーカーは、高度に集積化されたデジタルシグナルコントローラを利用することで、今後ますます拡大するだろう太陽光発電の市場に向けて、コスト効率の高い製品を供給することが可能になる。

 インバータ用のコントロールプロセッサには、高効率のDC-AC変換や回路保護のための高度なアルゴリズムを効果的に実行できるよう、多くのリアルタイム処理が求められる。最大電力追従(MPPT:Maximum Power Point Tracking)やバッテリ充電制御では、リアルタイム性に対する要求レベルは比較的低いものの、高いレベルの処理を要するアルゴリズムを実行しなければならない。

 デジタルシグナルコントローラには、高性能DSPと制御インタフェースが統合されており、PVインバータ内のDC-ACコンバータ用ブリッジや、MPPTあるいは保護用の回路をリアルタイム制御するための優れたソリューションとなる。DSPコントローラは本質的に、リアルタイム制御アルゴリズムの実行に必要な高速演算を得意としているからだ。また、A-D変換器やPWM信号生成器などの入出力機能を集積すれば、入力を直接検知したり、大電力用のIGBTやMOSFETを直接制御したりすることが可能になり、インバータの小型化や低コスト化につながる。さらにフラッシュメモリも内蔵しており、データ収集やプログラミングが容易になっている。加えて、通信ポートを組み込んでいるので、計測用機器や他のインバータとのネットワークを容易に構築可能だ。

 PVインバータにDSPを利用することで高い変換効率が得られることは既に設計で検証済みであり、変換損失が50%以上低減されるとともに大幅なコストダウンが実現されたとの報告もある。

 コントローラに組み込むファームウェアは、通常は効率を最大化するようなステートマシンとして実装されており、そのコードにはノンブロッキング(フォールスルー)コードが使用され、エンドレスループに不用意に入り込まないようになっている。ファームウェアの処理は階層化され、通常は優先度の高い機能がより高い頻度で実行される。PVインバータのシステムでは、グリッド連結の安定化制御や、パワースイッチの制御が通常は最優先の機能であり、次に優先度が高いのが安全基準を満足するための危険保護の機能、その次に効率の制御、つまり最大電力追従(MPPT)と続く。その他のファームウェア機能のほとんどは、現状の動作条件での動作の最適化や、システム動作のモニタリング、システム通信などに関係するものだ。

 Sunny Boyに採用されたTMS320F2812には、12ビット分解能の高速A-D変換器が搭載されており、16チャネルもの入力の電流と電圧を検出でき、安定な正弦波出力を作り出すことができる。さらにこのA-D変換器は、安全面で残留電流(地絡電流)保護素子の電流を検出する役割も果たす。

トランスレスで重要になる絶縁部品

 Sunny Boyは、インバータ基板の中央右寄りの領域に、Avago製のゲート駆動用フォトカプラを5個搭載している。このうちの2個は、ハイサイドのスイッチであるT1とT3に対して、それらをグリッド周波数の50Hzで駆動するゲート駆動信号を、電気的な絶縁を確保しながら供給する役割を果たす。型名は「HCPL-316J」(和文の製品情報)。負荷の短絡(VCE)検出や、フォルト状態をフィードバックする機能を内蔵した。駆動能力(出力電流)は2.5Aである。

 残りの3個は、T2、T4、T5を高周波でスイッチングする役割を担うIGBTゲート駆動用フォトカプラで、型名は「HCPL-J312」(和文の製品情報)。出力電流は2.0Aである。

 インバータの中でも、特にトランスレスインバータでは、フォトカプラは強化絶縁を提供するとともに、故障発生時のフェイルセーフ機能を実現する部品として、極めて重要である(図5)。

図5 再生可能エネルギー利用の発電システムでは絶縁部品が不可欠 図5 再生可能エネルギー利用の発電システムでは絶縁部品が不可欠 高電圧を扱うパワー回路部と制御回路部の間の接続(図中の赤色の線)は、電気的に絶縁する必要がある。そこにはフォトカプラのような絶縁部品が不可欠である。出典:Avago Technologies

PV用インバータの機能はさらなる拡張へ

 PVシステムは、発電の分野では比較的新しい技術である。成長途上にある他の技術と同様に、PVシステムも技術の成熟につれて今後、急速に変化を遂げていくはずだ。そして、高電力化、低コスト化、高信頼化などのPVシステムに対する市場要求に応えるべく、革新が進むだろう。それを受けて、PVインバータの機能も一層拡充されることになる。そうなれば、これまで以上に集積度が高く、専用化された部品が求められるようになるだろう。そして将来、PVパワーシステムがますます広く利用されるようになり、基幹電力の相当部分を占め、人類の化石燃料への依存度を著しく減少させる原動力になるはずだ。

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