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» 2012年02月03日 22時24分 公開

EDN/EE Times編集部が展望する:2012年期待のエレクトロニクス技術(計測ツール/部品編) (2/4)

[EDN]

スマホが計測器になる、エンジニアリングアプリの可能性

 約30年前、デスクトップPCが最初に登場したとき、技術者はすぐにそのコンピュータを、技術的な課題を解決するために利用し始めた。また、ISAバスやPCIバス用に、デジタイザやDSPなどのI/Oを搭載したさまざまなボードも開発された。その後ノートPCが登場し、ハードウェアとソフトウェアが持ち運べるようになると、まずパラレルポート用、次いでUSBポート対応の周辺機器が開発されて、普及していった。今では、オシロスコープや測定器、ロジックアナライザ、開発ツールにもUSBポートが搭載されるようになっている。

 現在、スマートフォンやタブレット端末の普及が進んでいるが、これらに専用のアプリをダウンロードし、エンジニアリングツールとして利用することも始まりつつある。こういった「エンジニアリングアプリ」の市場はまだ誕生したばかりだが、次世代の測定装置やリファレンスツール、計算ツール、シミュレータ、システムコントローラなどを実現するものとして期待されている。

 筆者は、2011年9月に開催された「ESC(Embedded System Conference) Boston」で、Appleの「iPhone」や「iPad」、「iPod touch」に接続して利用する、Osciumのオシロスコープモジュールを実際に使用してみた。使用したのは、アナログチャネルを1つ、デジタルチャネルを4つ備えるモデルである(図1)。

図1 Osciumのオシロスコープモジュール 図1 Osciumのオシロスコープモジュール 「iPhone」や「iPad」に挿入すると、アナログ1入力/デジタル4入力を備えたオシロスコープになる。

 iPadが魅力的な測定装置になる理由は、そのユーザーインタフェースにある。画面を拡大したいときは、他のアプリを使用する場合と同様に、ただ指で操作するだけでよい。実際のノブや仮想のノブを使わなくても、素早く波形を拡大できる。

 この他にもエンジニアリングアプリが市場に登場している。Redfish Instrumentsは、iPhone/iPadで操作するハードウェアユニットで構成される無線デジタルマルチメーターを開発した。ユーザーインタフェースとなるiPhone/iPadには、測定画面が表示される。測定機能は、画面上の“ノブ”で選択できるようになっている(図2)。ホールドやデータ記録、プロットが可能で、電圧と電流、抵抗を測定することができる。

図2 Redfish Instruments製の無線デジタルマルチメータ 図2 Redfish Instruments製の無線デジタルマルチメータ Wi-Fiネットワーク経由で測定結果を参照したり記録したりすることが可能だ。

 エンジニアリングアプリの市場に参入しているのは、規模の小さな会社だけではない。例えば、Agilent Technologiesは、iPadとAndroid端末向けに、LXI(LAN eXtensions for Instrumentation)ベースのテスト装置を制御できるアプリを開発した。同社のWebサイトでは、iPhone/iPad用アプリの開発ツールを入手することができる。また、データロガー「34972A」用の制御アプリも幾つか入手可能だ。

 AgilentのアプリケーションエンジニアであるNeil Forcier氏は、「iPhone/iPadのプログラミングを学ぶために34972A用アプリを開発した」と語る。34972AはLANポートは備えているが、無線通信には対応していないので、アプリを使用する際はLANに接続する必要がある。

 National Instrumentsのグラフィカル開発環境「LabVIEW」には、サードパーティによる開発者ネットワークがある。このネットワークに属する開発者の1人が、Webサーバを通してデータのモニタリングを行うiPhone/iPad向けアプリを開発した。同アプリのコードは、こちらからダウンロードできる。

 測定用途以外にも、数多くのiPhone/iPad用エンジニアリングアプリがある。回路シミュレータや抵抗カラーコード早見表、各種計算ツールなど、回路設計のためのツールが入手できる。価格は数米ドル程度で、無料のものもある。以下に、そうしたアプリの幾つかを紹介する。

  • Resistor Codes(無料):Copley Designsが開発したアプリで、色表示から抵抗器の値と許容差を参照できる。
  • iCircuit(9.99米ドル):Kruger Systemsが提供する回路シミュレーションのアプリ。抵抗、キャパシタ、MOSFET、スイッチ、ロジックゲート、フリップフロップなどを用いたアナログ/デジタル回路のシミュレーションが行える。
  • DCircuit Lab(6.99米ドル):Laura Villani氏が開発した、ロジック回路の設計向けのアプリ。同氏が開発した別のアプリBode & Nyquist(5.99ドル)では、回路伝達関数のグラフをプロットできる。
  • Electrical Tookit(無料):Niranjan Kumar氏が開発したアプリ。パッシブローパスフィルタやRLC回路を構成する電子部品の値(抵抗値や容量値など)を計算する。抵抗のカラーコード表示機能もあり、色をテキストで入力すると抵抗値を表示してくれる。

 iPhone/iPad用の計算アプリは、多くの開発者が提供している。例えば、PocketCas(無料)は、多くの関数を用いて計算できるアプリだ。それらの関数を変数と組み合わせて結果をプロットできる。PocketCasには定数もいくつかあり、数式で使うことも可能だ。

 これらの他、App Storeではさまざまなエンジニアリングアプリを購入できる。

(Martin Rowe:Senior Technical Editor, Test&Measurement World)

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