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» 2012年02月03日 22時24分 公開

EDN/EE Times編集部が展望する:2012年期待のエレクトロニクス技術(計測ツール/部品編) (3/4)

[EDN]

ARMマイコンが市場を席巻、それでも8/16ビットマイコンは死なず

 マイコンの歴史を語る上で、ARMの32ビットマイコン用プロセッサコア「Cortex-Mシリーズ」の登場前と登場後を比較しないわけにはいかないだろう。ARMが、マイコン分野に本格的に注力するためにCortex-Mシリーズを発表し、米国テキサス州オースチンに本拠を構えるLuminary Microをその最初のライセンシー企業としてからまだ7年と経っていない。現在では、123社がCortex-Mシリーズのライセンス供与を受けている。

 2011年初頭のARMの発表によれば、Cortex-Mシリーズが対象とするマイコンの市場規模は2015年に190億個まで成長する見込みだ。2010年の1年間で見ると、ARMのプロセッサコアを搭載するマイコンの出荷数は5億個だった。これは、2010年のマイコン市場の10%に相当する。シェアを維持するだけでも、2015年のARMマイコンの出荷数は19億個まで成長することになるのだ。

 米国の調査会社Databeansによれば、2010年の世界規模のマイコン出荷数量は前年比で約37%増加した。これに対してARMマイコンは、同100%以上という記録的な伸びを示したという。この成長のほとんどは、ARMのプロセッサコアを搭載する製品出荷量の約10%を占めるCortex-Mシリーズの販売増によるものである。

 Gartnerが発表した2010年のマイコン売上高ランキング上位9社のうち、ARM陣営に属していないマイコンベンダーは以下の2社だけである。2社のうちの1社である、ルネサス エレクトロニクスは、2010年4月にルネサス テクノロジとNECエレクトロニクス(2009年マイコン売上高ランキングの1位と2位)が合併して誕生した。もちろんマイコン売上高ランキングは1位である。同社はSoC(System on Chip)に搭載するアプリケーション処理用プロセッサコアついては、ARMの大手ライセンシー企業の1つである。その一方で、マイコンにはARMのプロセッサコアを一切採用していない。残りの1社である5位のMicrochip Technologyは、MIPS Technologiesの「MIPS32 M4K」コアをベースにした32ビットマイコンを採用するなど独自路線をとっている。

 2位のFreescale Semiconductorと9位の富士通セミコンダクターも、かつてはARMマイコンを展開していなかった。しかし2011年に入って、Freescaleが「Cortex-M4」を搭載する「Kinetisファミリ」を、富士通セミコンが「Cortex-M3」を搭載する「FM3ファミリ」を発表し、ARM陣営に加わった。

 上位9社がその地位にある理由は明らかだ。彼らは、高い処理性能を持つ32ビットマイコン以外に、自社開発のプロセッサコアを搭載する8ビットや16ビットのマイコンも供給している。そして、既存製品として一定の売上げが見込める8ビット/16ビットマイコンをベースに、関心を集めやすい32ビットマイコンの新製品によって売上げを積み上げるという戦略をとっているのだ。

 これに対して、リソースのほとんどを32ビットマイコンに集中している小規模のマイコンベンダーは、「現在使用している8ビット/16ビットマイコンを32ビットマイコンに置き換えるのはたやすい」と主張している。一方、古参の8ビット/16ビットマイコンのベンダーからは、「既存のマイコンを使用する多くのローエンド製品に当てはめられる話ではない」といった意見も出ている。とはいえ、競合他社とマイコンを差異化する上で重要になっている周辺回路について、8ビット/16ビットマイコン向けでは新たな開発がなされていないという事実にも留意すべきだろう。

 マイコンに対する新たな要求として話題になっているのが機能安全規格である。この規格は電子機器の安全を確保するためのもので、工業、医療、自動車、軍事/航空宇宙、太陽光発電システムといった各分野で対応が求められている。その最たるものが、自動車向け機能安全規格のISO 26262だ。ISO 26262に準拠した自動車を開発するには、専用のマイコンが必要になることもある。

 Texas Instrumentsは2011年9月、機能安全規格に対応可能なマイコンファミリ「Hercules」を発表した。Herculesは、自動車向けの「TMS570」と産業用機器/医療機器向けの「RM4x」から構成されている。両製品とも、ARMのリアルタイム処理用プロセッサコア「Cortex-R4F」をデュアルコア構成で搭載するなど、安全性を確保するための機能が組み込まれている。Freescaleも、機能安全規格に対応するための開発支援サービス「SafeAssureプログラム」の導入を発表している。対象となるマイコンは、自動車向けの「MPC56xx」と、産業用機器向けの「PXS」である。

 医療機器向けではルネサスの取り組みが興味深い。2011年8月に発表した「V850」ベースのマイコンを搭載するUSB対応血糖値計のデモ機が、ヘルスケア機器向けの規格を策定しているコンティニュア・ヘルス・アライアンス(Continua Health Alliance)の認証を取得したのだ。これは、携帯型ヘルスケア機器をPCなどにUSBで接続して容易にデータを転送できることを評価された結果である。携帯型ヘルスケア機器は、USBの他にも、Wi-Fiやイーサネット、Bluetooth、ANT+などによる接続も検討されている。マイコンもこれらの接続インタフェースを搭載する必要が出てくるかもしれない。

 マイコン搭載製品を設計する上で必要不可欠なのが開発ツールである。最近は、サンプル提供前でも、開発ツール上ではそのICを用いた製品設計が可能になっていることが多い。これは、半導体メーカーが提供する開発ツールだけではなく、IAR Systems、Green Hills Software、Keil、SEGGER Microcontroller、Lauterbachといったサードパーティの開発ツールをも巻き込んだトレンドとなっている。また、組み込みシステム向けリアルタイムOS(RTOS)のサポートでも同様の傾向が見られる。

 機能を限定したローエンド開発用の評価ボードは極めて安価になっており、箱から出してそのまま使用できるほど利便性も高い。こうした低価格の評価ボードだけでなく、開発ツールや関連のソフトウェアとともに、複数のI/O、ネットワーク機能、ディスプレイなど豊富な機能を備える評価ボードも提供されている。マイコンベンダーは、自社でこれらの評価ボードを製造していることが多いが、最近ではArduinoやPandaBoard、BeagleBoardといったオープンソースのプロトタイピングプラットフォームを展開するサードパーティと協力する事例も増えてきている。

(Colin Holland:Editor, EE Times' MCU Designline)

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