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いまさら聞けない加速度センサー入門しっかり分かる「センサーの活用法」(2/2 ページ)

» 2012年05月16日 18時46分 公開
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 図3に内部信号処理の流れを示します。単位セルの2本の固定電極にそれぞれ逆相のクロック信号を印加することで、加速度によって可動電極がどちらかの固定電極に近付いたときに、近付いた固定電極に印加されているクロックと同相の電荷変化が可動電極に発生します。

 この電荷変化を増幅し、同期検波および整流を行うことで可動部の移動距離、つまり加速度に比例した電圧出力を得ることができます。

図3 内部信号処理 図3 内部信号処理(参考:アナログ・デバイセズの加速度センサ)

加速度センサのアプリケーション

 加速度センサは大きく分けて「重力」「振動・動き」「衝撃」の3つの現象を測定できます。それぞれの現象をうまく検出することで、加速度センサの出力信号は実際のアプリケーションに役立てられています。

 例えば、携帯機器画面の表示向きを使用環境に合わせて変更するアプリケーション(縦横検出)では、重力を計測して、加速度センサの傾きを計算することで実現できます。図4に加速度センサの検出対象と代表的なアプリケーションを図示します。

図4 加速度センサの検出対象とアプリケーション 図4 加速度センサの検出対象とアプリケーション

 民生機器市場では、加速度センサを搭載して各アプリケーションを実現することによって商品に新たな付加価値を付与しています。加速度センサを搭載している代表的な民生機器には、ゲーム機、携帯電話、デジタルカメラ、プロジェクター、PCなどがあります。

 携帯電話では、縦横検出により画面の表示向きの切り替えを行うといったアプリケーションや、ある特定の衝撃(例えばタップ)を検出して特定の機能を動作させるといった形で利用しています。デジタルカメラではカメラの傾きを画面に表示するといった利用方法や、前述の携帯電話と同様に衝撃を検出してさまざまな機能を動作させるといった使われ方をしています。

 プロジェクターでは加速度センサの傾きを検出して、プロジェクターが傾いていても画面が台形にならないように補正を掛けています。PCでは衝撃を検出したらHDDのヘッドを退避させてHDDを保護するといった形で利用されています。

 ここで挙げたアプリケーションはほんの一例にすぎませんが、加速度センサの信号は搭載する機器によってさまざまな形で利用されており、今後もその利用方法はますます拡大していくと思われます。

加速度センサの選定手順

 最適な加速度センサを選定するためには、まず実現したいアプリケーションを明確にすることが大切です。例えば、HDD保護に加速度センサを使用する場合でも、据え置き型のHDDのようにある一定の加速度が加わった場合にヘッドを退避させるのか、ポータブル機器のように自由落下を検出したらヘッドを退避させるのかというふうに、状況に合わせてアプリケーションのイメージを明確にする必要があります。

 実現したいアプリケーションが明確になると、加速度センサによって測定する現象の絞り込みができます。前述の例で、一定の加速度が加わった場合にヘッドを退避させる場合は“衝撃”、自由落下時にヘッドを退避させる場合は“動き”の検出を行う必要があります。

 測定対象が明確になれば、測定対象が何g程度の加速度を持ち得るか、周波数はどの程度かといった内容から、加速度センサに必要な測定範囲と周波数応答が分かります。

 加速度センサに必要な測定範囲と周波数応答が分かれば、後はアプリケーションに要求される誤差範囲から最適な加速度センサを選択します。


 加速度センサは近年の技術革新によって、使用用途を拡大してきました。自動車のエアバッグから始まった加速度センサは、いまではゲーム機や携帯電話にも搭載され、今後もその用途は拡大していくと見られています。さらに、加速度センサ自体の技術革新だけではなく、使用用途の要求を取り入れた形の加速度センサが多く開発されていくでしょう。

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