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一次電池、二次電池の種類と特徴知っておきたい 電池の仕組み(3)(1/2 ページ)

電池の種類は数多くありますが、その電池にはそれぞれ特徴があり、用途に応じて使い分けられています。今回は、一次電池と二次電池の種類と特徴について説明します。

» 2012年05月21日 10時00分 公開

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@IT MONOistで掲載された記事を転載しています



一次電池の仕組み

(1)マンガン乾電池

 電池といえば、まず思い浮かべるのがこの電池でしょう。いわゆる「乾電池」と呼ばれる1.5Vの電池です。本連載第1回で取り上げた電池の歴史で述べたように、もともとは湿式のルクランシェ電池が原型となっていますが、使いやすいようにガスナーや屋井が改良を加え、液がこぼれない「乾電池」となったものです。

 プラス極の材料に二酸化マンガンを使っていて、これが電池全体の約4割を占めているため、マンガン乾電池と呼ばれています。また、マイナス極の材料の亜鉛を缶状にして、電池全体の容器を兼ねていることも特徴です。缶が電極を兼ねることにより、電池をコンパクトにして軽くすることができました。

図1 マンガン乾電池の構造 図1 マンガン乾電池の構造

 電池を使っていくうちに電池缶の亜鉛が溶け出していくので、使い切った電池をいつまでも機器に入れっ放しにしておくと、缶に穴が開いて、液が漏れ出してしまうこともあります。

 マンガン乾電池の材料も当初から改良されてきています。当初の二酸化マンガンは天然のものが中心でしたが、1930年代ごろから電解二酸化マンガン(電気分解を利用して作る高純度の二酸化マンガン)が使われ始め、性能が著しく向上しました。また、当初は塩化アンモニウム溶液を電解液として使用していましたが、現在では主に塩化亜鉛溶液が使われています。

 比較的安価な電池であり、時計、リモコン、懐中電灯などの小さな電力で動く機器に適しています。

(2)アルカリ乾電池

アルカリ乾電池は、アルカリマンガン乾電池とも呼ばれ、マンガン乾電池と同じように、プラス極には二酸化マンガン、マイナス極には亜鉛を使用しています。しかしながら、構造が大きく異なります。

図2 アルカリ乾電池の構造 図2 アルカリ乾電池の構造

 マイナス極の材料の亜鉛を粉末にして電池の中心部に配置し、二酸化マンガン粉末はその周りを取り囲み、その外側に電池ケースがあります。亜鉛粉末の中に突き刺さった集電体がマイナス極になります。つまり、アルカリ乾電池では缶がプラス極となり、マンガン乾電池と逆になっています。プラスとマイナスが逆では非常に使いにくいものになるため、缶底に凸部を作り、マンガン乾電池と同じように使える工夫をしています。

 電圧は1.5Vのため、マンガン乾電池と互換性があります。また、電解液はアルカリ性の水酸化カリウム溶液を使っています。水酸化カリウム溶液は電気を流しやすい性質があり、また、亜鉛を粉末にして反応しやすくしたことから、マンガン乾電池の2倍の電流を取り出すことができます。

 パワーが取れることから、ラジカセ、ラジコン、強力ライトなどの使用に適しています。

(3)リチウム一次電池

 マイナス極材料にリチウム金属を使っている一次電池が、リチウム一次電池です。リチウムはイオン化傾向が大きいために高い電圧の電池を作ることができますが、水溶液の電解液を使うことができません。そこで、リチウムイオンを含む有機溶液を電解液として使います。プラス極としては、二酸化マンガン、フッ化黒鉛、塩化チオニルなどが使われます。現在では、安価な二酸化マンガンを使った3Vの電池が主流となっています。

図3 円筒形リチウム一次電池の構造 図3 円筒形リチウム一次電池の構造

 形状は、コイン形の電池と円筒形のタイプがあります。コイン形の電池は時計や電卓などに使われます。円筒形の電池は、アルカリ乾電池のようなインサイドアウト構造の電池と薄いシート状にした電極を渦巻き状に巻いたスパイラル構造の電池があります。

 インサイドアウト構造の電池は長時間使うことができる特徴を生かして電子メータなどに、一方のスパイラル構造の電池は大電流を流すことができる特徴を生かしてコンパクトカメラ用などに使われています。

(4)酸化銀電池

  酸化銀電池は、プラス極材料に酸化銀、マイナス極材料に亜鉛を使ったボタン形の1.55Vの電池です。電解液としては2種類使われ、大電流タイプでは水酸化カリウム、小電流タイプでは水酸化ナトリウムが使われています。

図4 酸化銀電池の構造 図4 酸化銀電池の構造

 酸化銀電池の特徴は、電池を使い切るまで高い電圧を維持し続けることであり、電圧が安定しているため電子機器を安定して作動させることができる非常に優れた電池です。クオーツ時計などの精密機器に適しています。ただし、銀を使うことで高価となるため、あまり大きな電池には使われません。

 同様の目的の電池としては、水銀電池が早くに開発され、広く使われてきました。しかしながら、水銀の環境汚染の問題が指摘されるようになり、日本では1995年に生産が中止されています。

 酸化銀電池は、高価な銀を使うため、安価な代替電池として、アルカリボタン電池が使われています。構造は酸化銀電池と同じボタン形ですが、中身の材料はアルカリ乾電池に近いものになっています。携帯ゲーム機や歩数計など幅広く使われています。

(5)空気亜鉛電池

図5 空気亜鉛電池の構造 図5 空気亜鉛電池の構造

 空気亜鉛電池は、主にコイン形をした電池ですが、電池の内部にはマイナス極材料の亜鉛しかありません。プラス極の代わりに空気を通す特殊な膜があり、外部の空気を取り込みプラス極として使うことができる構造です。

 プラス極を内蔵する必要がないために、マイナス極の材料を多く内蔵することができ、コンパクトで長時間使用できる電池となります。使用前には空気穴をふさぐシールが張ってあり、一度はがしてしまうと最後まで使い切らなければなりません。そのため、常時使うことを前提とした用途として、補聴器用の電池としてよく使われます。

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