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13GHz出力のPLLシンセサイザIC、FMCWレーダーシステム構築に向くADI ADF4159

アナログ・デバイセズの「ADF4159」は、最大13GHzまで制御可能なPLLシンセサイザICである。直線性の高い周波数スイープ機能を搭載し、周波数分解能はサブヘルツ(1Hz以下)と細かいため、自動車用衝突防止システムなどに使われるFMCW(周波数変調連続波)レーダーなどに向いている。

» 2012年06月20日 13時18分 公開
[前川慎光,EDN Japan]

 アナログ・デバイセズは2012年6月、出力周波数が最高13GHzと高いPLLシンセサイザIC「ADF4159」を発表した。細かいステップで出力周波数を切り替え可能なフラクショナルN(分数分周)型を採用しており、周波数分解能はサブヘルツ(1Hz以下)と細かい。さらに直線性の高い周波数スイープ機能を搭載しているため、外部に2逓倍(ていばい)の周波数逓倍回路を用意するだけで、24GHz帯を使うFMCW(周波数変調連続波)レーダーシステムを比較的容易に実現できる。

 最高13GHzという出力周波数は、同社のフラクショナルN型PLLシンセサイザICの中で最も高い値である。競合他社も同等の出力周波数の品種を製品化しているが、これに比べると消費電力が1/5程度と小さいと主張する。具体的には、消費電力を100mW以下に抑えた。

図 フラクショナルN(分数分周)型のPLLシンセサイザICの構成 図中の赤い枠がICの部分。位相比較器の動作周波数(サンプリング周波数)が110MHzと高いことや、出力周波数の分解能が25ビット(1Hz以下)と細かいことが特徴である。

 ADF4159は、低雑音の位相周波数検波器(PFD)と高精度チャージポンプ、プログラマブルリファレンス分周器で構成されており、電圧制御発振器(VCO)は外付けする必要がある。位相比較周波数(サンプリング周波数)は110MHzと高い。一般に、位相比較周波数が高ければ、分周器の分周数を小さくできるため、VCOの位相雑音を削減できる。実際、ADF4159の位相雑音性能指数は−222dBc/Hzと小さい。

 複数の周波数スイープモードを有しており、周波数軸上の三角波やのこぎり波を生成可能。さらに、周波数シフトキーイング(FSK)変調や位相シフトキーイング(PSK)変調機能も搭載した。これまで、FMCWレーダーシステムを構築するには、細かいステップで周波数を切り替えることが得意なDDS(Direct Digital Synthesizer)と、DDSの出力を高周波化する固定出力のPLLシンセサイザICを組み合わせていた。ADF4159を使えば、この2つのチップ置き換えることができる。

図 FMCWレーダーシステムのブロック図

 対象用途は、車載レーダーシステムやマイクロ波を使ったポイント・ツー・ポイント(P2P)通信システム、通信設備、試験装置など。パッケージは、外形寸法が4×4mmの24端子LFCSPである。既にサンプル出荷を開始しており、2012年第4四半期に量産を始める予定。1000個購入時の参考単価は7.49米ドルである。

アナログ・デバイセズのPLLシンセサイザIC製品群の中でのADF4159の位置付け(左)と、競合他社品との比較(右)。

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