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“エジソン以来の発明”と称される有機EL照明いまさら聞けない次世代照明技術(1/2 ページ)

低消費電力という理由から、LEDとともに次世代照明として期待されている有機EL照明。ここでは、有機ELの発光原理と、有機ELがもたらす5つの価値について解説します。

» 2012年06月25日 07時00分 公開
[コニカミノルタホールディングス LA事業推進室,ITmedia]
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@IT MONOistで掲載された記事を転載しています



有機EL照明とは?

 「有機EL」という言葉を目にする機会が増えています。携帯電話ディスプレイではすでに実用化が始まり、液晶・プラズマに続く次世代薄型テレビの本命としても期待されています。そしてこの有機EL、とりわけ照明の分野においては“エジソン以来の発明”とも称されるほど、その革新性の高さが注目されています。

 有機物に電圧を掛けることで、有機物自体が発光する現象を有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)といいます。有機物の分子構造の組み合わせは無限であり、それぞれの発色や耐久性が異なります。有機物を電気的に発光させる研究は20年以上前から行われていましたが、照明やディスプレイの利用に適した発光効率や耐久性を持つ有機物は、ここ数年でようやく発見され始めました。

 有機ELは、基板上に薄い膜を重ねた構造になっています。簡単にいえば、2枚の電極に有機物を挟んでガラスやプラスチックの基板に載せただけの薄くシンプルな構成が特徴です。有機物は3層から構成されるのが一般的で、真ん中の発光層を挟み、プラスとマイナスそれぞれの電極と接する輸送層を持ちます。輸送層は、電極から発光層へ向かう電荷をスムーズに運ぶ働きをします。

図1 有機EL照明の面構成 図1 有機EL照明の面構成

発光原理
 有機ELに電圧を掛けると、2つの電極からそれぞれプラスとマイナスの電荷を持つ「正孔」「電子」が発生します。両者が発光層で結合すると、発光層である有機物はいったん「励起」と呼ばれる高エネルギー状態になり、これが元の安定状態に戻る際に発光します。有機物の分子構造の組み合わせは無限です。その中から発光効率と耐久性を兼ね備えた有機物を見つけることが実用化への決め手になります。

図2 有機EL照明の発光原理 図2 有機EL照明の発光原理

 一連の発光の流れを概念的に示すと、励起状態とは人が高い場所に登った状態であり、そこから降りる行為が発光に相当します。1万時間発光し続けるということは、発光層の有機物がこの状態を絶えず数億回も繰り返すことです。

高効率と長寿命を両立した白色有機EL

図3 発光材料の発光効率比較 図3 発光材料の発光効率比較

 現在、さまざまな分野で開発が進む有機ELですが、要となる発光部の材料は2つの種類が混在しています。1つはすでに携帯電話のディスプレイなどで実用化が進んでいる「蛍光材料」。もう1つが理論的に高いエネルギー変換効率を持つ「リン光材料」です。

 2つの材料は発光効率に大きな差があります。蛍光材料は25%なのに対し、リン光材料は100%(いずれも理論値)です。発光効率が高ければ、発熱の少なさ、省電力といった面でも有利なデバイスになります。つまり本来照明やディスプレイには、リン光材料の採用が理想的なのです。

 それでは、なぜこれまで蛍光材料の実用化が先行してきたのでしょうか。実は、寿命の長いリン光材料の開発は難易度が高く、特に波長の短い青色材料の開発は極めて困難だとされていました。光の三原色の1つである青色は、白色に発光する照明の開発には欠かせません。

図4 有機EL照明写真 図4 有機EL照明写真

 青色リン光材料の研究は材料メーカー各社が進めています。コニカミノルタでも、青色リン光材料の研究に取り組み、高い発光効率と寿命を両立させた青色リン光材料の開発に成功しました。この材料を用いて、実験室レベルで蛍光灯に匹敵する電力1ワット当たり64ルーメン(lm)の発光効率と、約1万時間の寿命を実現しています。面で発光し、薄くフレキシブル、発熱も少なく、環境にも優しいという蛍光灯にはない数々のメリットを持つ有機EL照明が、実用化に大きく近づきました。

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