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» 2012年09月18日 08時00分 公開

デジタルオーディオの基礎から応用(最終回):オーディオ機器の実装技術の勘所 〜電源回路から実装レイアウトまで〜 (3/3)

[河合一,EDN Japan]
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機器の実装レイアウトの事例

 図5にヤマハのネットワークオーディオプレーヤー「NP-S2000」の正面図を、図6に内部レイアウトを示した。NP-S2000は、NAS(Network Attached Storage)などの記録媒体に保存した高品質音楽ファイル(例えば、fs=96/192kHz、24ビット量子化PCMデーターなど)を高品質に再生するオーディオプレーヤーである。

図 図5 NP-S2000正面外観図

図 図6 内部レイアウト例解説 (クリックで拡大します)

 図6から分かる通り、NP-S2000の筺体(きょうたい)中央部にアナログ部とデジタル部専用の独立電源トランスがある。これによって、重量の中心が機器の中央になるように工夫している。また、電源トランス部にはシールドと補強を兼ねた構造材があり、機構的な強度を確保しつつ、磁束漏れの影響を最小限に抑えている。

 電源トランスの左側には整流・安定化電源回路、電源トランスの右側にデジタル基板とアナログ基板がそれぞれ独立して取りつけてある。D-A変換を含めたアナログ部の基板のレイアウトに注目すべきである。D-AコンバータICは左右チャンネル独立なので、2個のICが必要になる。図6における機器の右側背面がステレオオーディオのライン出力端子になっており、D-AコンバータICからライン出力までのポストLPFなどのアナログ回路の信号フローはストレートであることが分かる。

実装技術のまとめ

 数多くある実装技術のうち、特に重要なものをまとめると次のようになる。

(1)デジタル回路からアナログ回路に回り込むノイズの影響を最小化すること

対策例としては、デジタル/アナログ専用電源の使用、デジタル/アナログ独立専用基板使用、GND接続の低インピーダンス化、デジタル・アイソレータの導入など。これらの対策により、D-A変換を含むアナログ回路を低ノイズ化することができ、オーディオ特性および音質の観点で大きな効果が期待できる。

(2)D-A変換、アナログ出力回路の動作を最適化すること

D-AコンバータICの電源デカップリングコンデンサの適切な選択や、最短距離で回路を接続すること、信号フローがストレート伝送になるようなレイアウト設計などが大切。これらの対策により、D-AコンバータIC内部で発生するスイッチングノイズを抑制できる。また、信号フローをストレートにすることで、オーディオ特性と音質面での大きな効果が見込める。


Profile

河合一(かわい はじめ)

 オーディオを専門とした評論家、ライター。日本オーディオ協会会員、AES(Audio Engineering Society)正会員。

 山水電気に1976年4月に入社。サービス部や技術管理部などでオーディオ機器および電子回路の設計、半導体評価といった基礎・応用技術の開発に携わる。1985年1月に日本バーブラウンに転職し、高精度リニアーICのアプリケーションエンジニアを担当した。業界トップクラスの性能のアナログIC(オペアンプ、計測アンプ、絶縁アンプ、対数アンプなど)や、コンバータICの応用技術と高精度アナログ信号処理技術を取得。1980年代後半以降、デジタル・オーディオ用コンバータICの専任となり、多くのデバイス開発に携わる。アプリケーションエンジニアマネジャーとして全世界の顧客対応を担当した他、フィールドアプリケーションエンジニアに対する技術トレーニングも実施。

 Texas InstrumentsがBurr Brownを買収したことに伴い、2001年1月に日本テキサスインスツルメンツに移籍。デジタル・オーディオ用コンバータ製品のアプリケーションマネジャー、オーディオ・エキスパートとしてシステム/アプリケーションの開発支援業務を幅広く担当した。これまでに、オーディオ関連の技術資料や技術記事を多数執筆。2009年6月にフリーランスの評論家、ライターとして活動を開始した。



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