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電池1本で動作する小型の携帯型高度計Design Ideas 計測とテスト

スポーツ愛好家には、スタート地点と現在地との高度差を知りたいというケースがある。これに応える小型軽量の携帯型高度計は、最新のマイクロマシーニング技術を利用した圧力トランスデューサーを使って実現可能である。

» 2013年03月27日 10時32分 公開
[Todd Owen,Linear Technology]

 スポーツ愛好家には、スタート地点と現在地との高度差を知りたいというケースがある。これに応える小型軽量の携帯型高度計は、最新のマイクロマシーニング技術を利用した圧力トランスデューサーを使って実現可能である。気圧値の逆数に高度による非線形効果を補償することで、かなり高い精度が得られる。

 図1は、マイクロマシーニング技術で製造した圧力トランスデューサーを使った携帯型高度計の回路図である。この回路は、気圧と高度が逆数の関係になることを積極的に利用している。回路の目的は、小型で軽量の携帯性を実現することにある。そのため精度は最高というわけではなく、誤差は3%ある。1万フィート*1)の高度測定で、300フィートの誤差が出る計算になる。回路の応答性も妥協している。ミリ秒オーダーの急激な変化には対応できない。

*1)1フィートは30.48cm。

図1 携帯型高度計の回路信号処理回路では、マイクロマシーニング技術で製造した圧力トランスデューサーの出力である気圧測定値の逆数に、高度変化による非線形成分を補償することで高度値を算出している。

 高度計の心臓部は、圧力トランスデューサー「NPC-1220-015-A-3L」である。この5kΩブリッジ回路の出力電圧は0〜50mVで、これが0〜15psi*2)の圧力に対応している。トランスデューサーと信号処理回路には、+5Vと−5Vの電源を供給する。+5V電源は、1本のAAサイズ*3)の乾電池からDC-DCコンバーターIC(IC1)を使って生成する。−5V電源はチャージ・ポンプ回路で作る。

*2)psiはpound per square inchの略で圧力の単位。1psiは0.070kg重/cm2、0.0069MPa、0.0068atm(気圧)に等しい。
*3)AAサイズは単3。

 トランスデューサーの出力は、初段利得が21の計装用アンプ(IC2)を駆動する。非線形利得段は、IC3Bと外付け部品で構成されている。これらの回路で、出力電圧が気圧の逆数に比例するように調整する。非線形利得はD4とR1で設定する。この結果、最終段の出力は高度と比例することになる。

 R2は、信号処理回路において利得を校正する役割を果たしている。このポテンショメーターは、1000フィートごとに100mVの範囲で誤差を校正できる。さらにこの回路は、気圧の変化によって生じるオフセット値を入力する機能を備えている。R3〜R5の抵抗を用いてオフセット値をゼロにして、そのときの出力電圧の変化である0V〜1Vを高度0〜1万フィートに対応づけられる。

 この高度計は、小型航空機(英de Havilland Aircraft社の「DHC-6 ツイン・オッター」)を用いてテストした。1万3000フィートに上昇した後、3000フィートまで自由落下することで検証した。さらに、パラシュート(米Icarus Canopies社のOmega 190)を使って、回路や評価エンジニアへのダメージを避ける形で検証を行っている。

 多くの空港で実験のために航空機をレンタルするサービスを行っている。ただしパラシュートを用いた検証実験を行うには、多くの訓練を受ける必要があるだろう。さらなる情報はUSPA(米国パラシュート協会)で聞くとよい。


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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。

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