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» 2013年07月09日 08時00分 公開

Wired, Weird:湿度管理だけでは不十分!? 「SMTリレーへのフラックス侵入」まとめ (2/3)

[山平 豊,内外テック]

本当にシール材は軟化しないのか!?

 いろいろ考察した結果、2012年4月に掲載したフォトカプラのLEDのチップが剥離したフォトカプラ不良の現象(関連記事:「壊れない電子部品」という迷信)を思い出した。フォトカプラのLEDチップは銀ペースト(熱硬化性エポキシ)でリードフレームにダイボンドされていたが、フラックスと反応することでエポキシの接着強度が劣化し、チップ剥離を起こしたという現象だ。

 メーカーの熱硬化エポキシの温度評価は恐らく温度条件だけ行われており、エポキシの表面にフラックスが付着した場合は考慮されていないと思われる。つまり、熱硬化型エポキシが軟化する要因にフラックスが関連している可能性が疑われる。

 この現象を確認するため、現場で再現実験を行ってみた。それはリレーのシール材にフラックスを塗ってリフローを行い、洗浄してフラックスを除去するという単純な確認方法である。リフロー前とリフロー後のシール材の表面を観察し、明確な変化が見つかればシール材が軟化したことが証明できる。リフロー前のリレーのリード部分(ボトムビュー)の写真を図1、リフロー後の写真を図2に示す。

【図1】リフロー前のリード部分
【図2】リフロー後のリード部分

 図1で端子の回りに付着しているのはメーカーでリードをハンダ付けした時のフラックスであり、図2では洗浄されてフラックスはなくなっている。

 赤い丸で図1と図2に示しているが再現実験で明確な変化が見つかった。リフロー前は図1の赤い丸の位置にリードの金属が一部露出していたが、フラックスを塗ってリフローしたら、図2の赤い丸の位置にあった金属の露出がなくなっていた。これはどういう意味だろうか?

 どう考えても、露出していた金属部の周辺のシール材がリフロー時に溶けて、露出金属部を覆ったとしか考えられない。この実験以外にも、シール材に文字を書いてフラックスを塗ってリフローして同様に文字の変化を確認したら、浅く書かれた文字が消える現象も確認した。シール材の耐熱エポキシがフラックスとリフロー温度の影響を受けて、軟化したのは明確だった。

 この結果から、「フラックスが高温状態でエポキシに付着したら、エポキシが軟化し、エポキシの接着力が低下してしまうのでは」という思いを強くした。ただ、フラックスやエポキシにも、さまざまな種類があり、偶然に実験したフラックスとエポキシの相性が良かったために、エポキシが軟化した可能性もあり、断言はできない。

“シール材の軟化”に備える

 いずれにしろ、リフロー時にシール材が軟化する可能性は残った。

 リフロー時にシール材が軟化すれば、一時的にシール材の接着力が低下してし、ケースとシール材の間に隙間ができやすくなる。また、シール材が軟化したまま、リフロー後に基板を急激に冷却すると、シール材も急激に冷却される。そして、そのシール材に熱だまりがあるとその温度差でシール材にクラックが入りやすくなることも推定できる。

 2013年5月掲載記事に紹介したが、基板上の不良発生位置と熱だまりを示す図を図3に再掲する。

【図3】不良発生位置と熱だまりの関係性

 リフローと水平に実装されたリレーは熱だまりが小さく、垂直に実装されたリレーは基板の内部に入るほど熱だまりが大きい。熱だまりの小さいリレー不良が無く、熱だまりの大きいリレーほど不良が多いことが分かる。

 一般的にはリフロー後の基板の冷却方法はあまり考慮されておらず、リフロー後はそのまま室温へ冷却されている。またリフロー時の高温による部品への影響を少なくするため、速やかな冷却を奨励しているメーカーもある。しかし、シール材が軟化していると考えると、急速な冷却でシール材へ悪影響が出る可能性が高い。特に、寒冷地や冬場にSMTリレーを実装する場合は、リフロー後の気温で急冷されるためこれを避けることが重要と思われる。

 急速な冷却でシール材に悪影響を及ぼしたのであれば、「洗浄後に接触不良を起こしたリレーを開封しても原因物質が見つからなかったという現象」も以下のように説明できる。

 リフロー後の急冷により、シール材の温度差で小さな隙間が開き、そこから微量の洗浄液が入り込んでリレーの接点に付着した。基板検査では接点の接触抵抗が変動したので基板不良となった。しかし、その後、洗浄液が揮発したためメーカーで開封確認しても原因が見つからなかった。

 この不良現象はSMTリレーの湿度管理をきちんと行っても発生する。リフロー後の急激な冷却が、シール材に小さな隙間を作り、洗浄時にリレー内部へ洗浄液が入り込む可能性が大きい。

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