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第10回 ボード・マイコンの構成 〜基板上でさまざまな要素を組み合わせて構成したマイコン・システム〜宮崎 仁のマイコン基礎の基礎

» 2013年07月25日 00時00分 公開
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 マイコンのさまざまな構成要素はLSIなどの電子部品になっています。現実のマイコン回路は、それらの電子部品を組み合わせてプリント基板(ボード)上に実装することで実現できます。今回は、LSIやボードという視点からマイコン・システムを説明します。

小規模なボード・マイコン

 CPU、メモリ、I/OなどのLSIを組み合わせて、プリント基板上に回路を構成したマイコン・システムを、ボード・マイコンと呼びます。LSIの他に、クロックを生成するための水晶振動子、個別の入出力回路/表示器/操作スイッチ、補助的なIC、回路動作を安定させるための多数のバイパス・コンデンサ、他のボードや装置と接続するためのコネクタなどがボード上に実装されます。

 CPU、メモリ、I/Oを1個のLSIに集積したシングルチップ・マイコンを用いれば、その他には若干の部品を搭載するだけで、コンパクトにシステムを構成できます(図1)。

図1 シングルチップ・マイコンを搭載したボード・マイコン
マイコンLSIの他に若干の部品を搭載するだけでシステムを構成できる。

 シングルチップ・マイコンだけでは機能や性能が不足する場合は、CPU、メモリ、I/Oを個別のLSIとして組み合わせてシステムを構成します。これには、シングルチップ・マイコンを用いて、外部CPUバスに若干のメモリやI/Oを追加する程度の場合もあります。一方、パソコンのように単独の高性能CPUを使用し、多数のメモリとI/Oを組み合わせてシステムを構成する場合もあります。

 システムが比較的小規模な場合には、シングルチップ・マイコンの場合と同様に、1枚のボード上にマイコン・システムを搭載することもできます(図2)。

図2 CPU、メモリ、I/Oを個別に搭載したボード・マイコン
小規模なシステムなら、1枚のボード上にCPU、メモリ、I/Oなどを搭載できる。

大規模なボード・マイコン

 大規模なシステムでは、規格化された複数のボードを組み合わせてシステムを構成する場合もあります。特に産業用マイコン・システムの場合、1回の生産量は少なく、長期にわたって安定に装置を作り続けていく必要が多いため、規格化されたボード製品を利用してシステムを構成する方が良い場合が多くなります(図3)。

図3 CPU、メモリ、I/Oを複数ボードに搭載したボード・マイコン
大規模なシステムは、CPUボード、RAMボード、各種のI/Oボードを組み合わせて構成できる。

 産業用のボード・マイコンの規格としては、CompactPCI、PICMG、PC/104、COM Expressなどさまざまなものが知られています。

 一方、民生用マイコン・システムの場合、一つの装置を短期間に大量に生産することが多く、新製品を開発するごとに独自設計のボードを新規に作る方が効率が良くなります。ボードのサイズや形状も装置自体のデザインに合わせてさまざまに異なり、不規則な形のボードや、曲げることが可能なフレキシブル基板を使用することも多くなっています。

シングルチップ・マイコンとSoC

 民生用マイコン・システムの場合、機器のデザインに合わせて、限られたスペースにボードを搭載することが必要です。また、マイコンに対するコストの要求が厳しい場合が多いので、CPU、メモリ、I/Oの機能をなるべく1個のLSIに集積したシングルチップ・マイコンが主に用いられます。

 最近では、既存のシングルチップ・マイコン製品を用いる代わりに、必要なCPUコア、メモリコア、I/Oコアなどの機能を自由に組み合わせて、カスタムメイドのLSIを製造することも容易にできます。これを、SoC(システム・オン・チップ)と呼んでいます。半導体メーカーでも、特定用途専用のSoCを設計し、製造販売している場合もあります(表1)。

表1 TIのSoC製品の例
シリーズ名 主要構成 特長、用途
CC430F51xx 低電力RF通信+MSP430 1GHzまでの無線通信、センサネットワーク/遠隔監視など
CC430F61xx 低電力RF通信+MSP430 1GHzまでの無線通信、センサネットワーク/遠隔監視など
CC253x 低電力RF通信+8051 ZigBee対応、センサネットワーク/遠隔監視/RFリモコンなど
CC2540/41 低電力RF通信+8051 Bluetooth Low Energy対応、センサネットワーク/遠隔監視など
CC2543/44/45 低電力RF通信+8051 2.4GHzの無線通信、ワイヤレスキーボード/マウスなど
OMAP3525/30 画像用DSP+CortexA8 OMAPシリーズ、携帯情報機器(アプリケーション・プロセッサ)
DM81x 画像用DSP+CortexA8 DaVinciシリーズ、各種画像機器(通信/計測/分析など)
DM37x 画像用DSP+CortexA8 DaVinciシリーズ、画像通信機器など
DM64x 画像用DSP+ARM9 DaVinciシリーズ、画像通信機器、IPカメラなど
テキサス・インスツルメンツ(TI)社が発売しているRF通信用、画像処理用のSoC製品の例を示す。
CC430シリーズは、CPUコアに16ビットのMSP430™を使用したRF通信用のSoC。RFトランシーバを搭載したMSP430™ファミリの製品とも言える。開発環境や設計資産もMSP430ファミリと共通に使用できる。
CC253x/254xシリーズは、CPUコアに8ビットの8051を使用したRF通信用のSoC。
OMAP™シリーズ、DaVinci™シリーズは、CPUコアに32ビットのARM Cortex-A8やARM9を搭載した画像処理用のSoC。

※MSP430はTexas Instruments Incorporatedの商標です。その他すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。

TIのマイコン製品の詳細はこちら

宮崎 仁のマイコン基礎の基礎 第11回「マイコン高性能化のトレンド」は、8/23(金)の公開を予定しています。


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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年3月31日

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