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リニア・レギュレーターを低コストDC-DCコンにDesign Ideas パワー関連と電源

高効率の電源を必要とするものの、高価なDC-DCコンバータICを使いたくない技術者に向けて、リニア・レギュレーターを使った安価なDC-DCコンバータを紹介する。

» 2014年01月27日 11時40分 公開
[Susanne Nellオーストリア在住]

 高効率の電源を必要とするものの、高価なDC-DCコンバータICを使いたくない技術者に図1に示した回路を推奨したい。この回路の中心はIC1「LM7805」で、一般的で安価なリニア・レギュレーターICである。これに外付けのスイッチ素子としてpnpトランジスタを接続するだけで、1A以上の出力電流を供給できるようになる。このスイッチング回路は、負荷電流がゼロもしくは数mA程度になると、自動的にオフになる。すなわち、この場合はリニア・レギュレーターとして働く。

図1 リニア・レギュレーターを使った安価なDC-DCコンバータ。リニア・レギュレーターにスイッチング回路を追加することで、DC-DCコンバータを構成できる。一般的なDC-DCコンバータICを使う場合に比べて、安価に実現できる (クリックで拡大)

 この回路の動作の様子は以下の通りだ。まず入力電圧を印加すると、電流は抵抗R1を通過し、その後IC1を通って出力へと流れていく。さらにこの電流は、Q1のエミッタ‐ベース接合を通過し、トランジスタをオンにする。この結果、インダクターL1に電流が流れ始め、そして出力コンデンサーC2を充電する。出力電圧がリニア・レギュレーターの定格値(LM7805では5V)に達すると、リニア・レギュレーターは自らの出力を断つ。従ってIC1は、トランジスタQ1のベース電流も切ってしまう。このためスイッチQ1はオフに切り替わる。Q1がオフに変わると、インダクターにかかる電圧の極性が変化する。すなわち、電流はダイオードD1を通って流れることになる。この電流は、L1に蓄積されたエネルギーがすべてC2に移るまで、C2に電荷を供給し続ける。出力に負荷が接続されている場合は、負荷電流をC2の放電で賄う。出力電圧が定格値である5Vから数mV低下すると、IC1は再び負荷に対して電流を供給し始める。その結果、Q1がオンに変わる。以上のサイクルを繰り返す。

 負荷が軽いか、もしくは負荷がない場合は、出力電流はIC1を通って流れ、Q1はオフのままだ。スイッチ動作の開始電流はR1の値を選ぶことで調節できる。この回路は5Vよりも大きな出力電圧にも対応できる。LM7805を「LM7812」や「LM7815」に置き換えれば、12Vや15Vの出力が得られる。こうした高い電圧の場合は、抵抗R2やR3を追加する必要がある。これらの抵抗を入れると、いくらかのヒステリシスが回路に与えられることとなり、スイッチング周波数が減る。R2、R3の標準値はそれぞれ2.2Ω、2.2kΩである。

 図1の回路では、24Vを12Vに変換した場合、効率は約75%になる。5Vに変換した場合は65%に下がるが、それでもリニア・レギュレーターに比べれば良好な結果だ。


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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。

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