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マイコンで高輝度LEDを直接光らせる方法はありますか?Q&Aで学ぶマイコン講座(6)(2/3 ページ)

» 2014年09月16日 10時15分 公開
[菅井 賢STマイクロエレクトロニクス]

LED駆動回路の設計

 最初に、マイコンを使わずに、スイッチを使って、LEDを点灯/消灯する回路を作ってみましょう。電源は1.5Vの乾電池を2個使って3.0Vにします。電気回路構成は図2になります。


図2:LED駆動回路例

 電気回路を作りますのでLEDの電気的特性が必要です。ここでは、定格電流値(mA)とその時の順方向電圧Vf(V)が必要になります。例えば赤色LEDだと、定格電流は25mA、順方向電圧Vf は1.4V〜2.0Vくらいです。ちなみに、LEDの電流は、定格電流を流すのではなく、7〜8割程度の電流で抑えておくのが安定使用のコツです。そこで、実際に流す電流Iを25mAの8割の20mAで計算します。Vs=3.0V、Vf=1.4V、I=20mAの場合、電流制限抵抗Rは(Vs-Vf)/Iの式で求められ、R=(3.0V-1.4V)/20mA=80Ωになります。従って、LEDと直列に80Ωの抵抗を入れれば、赤色LEDを安定駆動できることになります。スイッチをオンするとLEDは点灯し、OFFすると消灯します。

マイコンを使ったLED駆動回路の設計

 次にスイッチの代わりにマイコンのGPIOでLEDを点灯/消灯する回路を作りましょう。スイッチの代わりにGPIOのNMOSを使うと図3のようになります。

図3:LED駆動回路例(マイコンのGPIOを1本使う場合)

 回路構成は同じですが、電気的特性を見直さなければなりません。なぜなら、スイッチのオン抵抗は0Ωですが、NMOSのオン抵抗は0Ωではありません。NMOSはオンした状態でも数Ωの抵抗成分を持っています。そこで、NMOSのオン抵抗分を先ほど計算した80Ωから引かないといけません。そうでないとLEDに流す電流値が20mAよりも少なくなってしまい、LEDが暗くなります。

 では、大電流ポートのNMOSのオン抵抗は、どうやって調べれば良いのでしょうか?それは、マイコンのデータシートに記載されています。

 まず、マイコンに大電流ポートがあるかどうかを調べます。それがないとLEDの駆動はできません。大電流ポートはデータシートの中のGPIOの特性表に記載されています。GPIOに流れる電流値は、IOLまたはIOHと記載されています。GPIOのNMOSをオンして“Low”出力したときに流すことができる電流がIOLで、PMOSをオンして“High”出力したときに流すことができる電流がIOHです。IOH=25mAまたはIOL=25mAのような記述があれば、そのGPIOは大電流ポートです。実際の電流値はマイコンやGPIOによって異なります。一般的にはLEDを駆動できる電流を基準にして15mA〜25mAになっています。

 一方、GPIOのNMOSがオンするとGPIOの出力データは“Low”になります。この時の出力電圧はVOL(Voltage Output Low )、PMOSがオンするとGPIOの出力データは“High”になります。この時の出力電圧はVOH(Voltage Output High )と呼ばれています。今回はNMOSをスイッチの代わりに使いますので、VOLとIOLの特性を使います。

 GPIOの特性表の中で、VOLが規定されている欄の「測定条件」の中に、IOLの規定値が記述されています。例えば、STマイクロエレクトロニクス製の32ビットマイコンである「STM32」のデータシートには、IOL=20mA時にVOL=1.3Vと記述されています(図4-a参照)。従って、NMOSのオン抵抗はオームの法則からVOL/IOL=1.3V/20mA=65Ωであることが分かります。

図4:GPIOの特性表の参考例(「STM32」のデータシート)

 先ほどのスイッチを使った場合の回路の電流制限抵抗値は80Ωでしたから、ここから65Ωを引いた15Ωを電流制限抵抗として使えば、電流値Iが20mAになって、マイコンを使った場合もスイッチを使った場合も同じ条件になります。

GPIOから“Low”を出力するとLEDは点灯し、“High”を出力すると消灯します。

別の計算方法(参考)

 NMOSに20mA流れると端子の電圧は1.3Vになります。すると抵抗とLEDに印加される電圧は3.0V-1.3V=1.7Vになります。そこで、先ほどの計算式の3.0Vのところを1.7Vにします。すると、R=(1.7V-1.4V)/20mA=15Ωとなって、同じ抵抗値が得られます。

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