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» 2014年11月07日 09時30分 公開

電子機器設計ノウハウ:ウェアラブル機器設計で知っておきたい故障原因 (4/4)

[Greg Caswell/Craig Hillman(DfR Solutions),EDN]
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 汗から水分を除いた後の主要な成分には、塩素、ナトリウム、ポタシウム、カルシウム、マグネシウム、乳酸塩、尿素がある。加えて、鉄、銅、ウロカニン酸、その他のタンパク質、金属、酵素などさまざまな化学成分が含まれる。しかし、主要な問題は、塩素、および最大問題である塩素の発生源になる塩化ナトリウムが関係する。

 Appleの「iPod nano」が汗で短絡事故を起こしたと多くのブログ上に書き込まれている。ユーザーは使用時は保護用のカバーをしていたと訴えている。同様な問題は携帯が汗にぬれた場合にも発生している。予想される症状は、製品外装の開放端から電子回路中に水分が浸入し、汗とともに塩分が最悪条件で組み合わさり、短絡事故あるいは樹脂状突起生成が発生することだ。

 ウェアラブル機器の設計/製造業者はこの問題に対処することが不可欠であり、不十分な場合には、製品の寿命期待値が実現されず、保証問題が頻発するだろう。

 コンフォーマルコーティングは実現可能なソリューションの1つだが、製品コストがアップする。筆者は、製品コストがコーティングなしの場合に起こりうる長期保証問題よりもはるかに重大なことだ、と確信する。

 図7にさまざまな使用環境での不純物汚染のレベルを示す。汗がウェアラブル製造業者の対処すべき問題点であることは明らかだ。

図7 さまざまな使用環境での汚染度

紫外線(UV)照射

 太陽はわれわれの健康に必須だが、その一方、光を浴び過ぎると、日焼けから皮膚がんに及ぶ健康上の重大問題が生じる。ウェアラブル業界では、このような健康上の問題に対処できるよう、UV強度を計測し、そのデータを携帯電話機にワイヤレス送信するシステムを開発してきた。しかし、ウェアラブルセンサー自体のUV保護はどうするのか。

 温度、湿度、UVの組み合せ条件によっては高分子結合鎖が破断することがある。これらのストレスの組み合せ、およびUV波長帯に関する正確な条件は十分には解析されていない。応力腐食割れが日焼け防止用コーティング材によって誘発されたとの報告がある。

 図8は、地球上でのUV照射の強度分布と各都市における特定条件に対する強度値を計算したものだ。UV照射強度レベルは地域によって大幅に変わるので、このことをウェアラブル設計者は考慮しなければならない。

図8 世界のUV照射強度分布

RFIDの人体装着

 ウェアラブル機器が利用する技術分野の1つとして、衣服の中に組み込み、人に意識させることなく人体をモニターできるようにするRFID技術がある。ヘルスケア業界では、心拍数計測や多種の身体機能をモニターし、取得データを解析担当部署に送信できるようにする用途に対し、さまざまなタイプのRFIDが利用されている。

 例えば、患者にRFIDをリストバンドとして装着し、患者をモニターすることによりスタッフの活動を効率化すれば、看護師詰所の人数不足問題に効果があるだろう。この場合、アンテナは効率的に通信できるようリストバンドに印刷されるだろう。先に述べたように、RFIDは患者からの汗や水分あるいは湿度や曲げの影響を受けてはならない。この問題は、RFIDタグを正しく解析し、医療応用現場の使用環境において故障せずに動作するに必要な性能と信頼性を決定したかどうかに掛かってくる。

バッテリー

 ウェアラブルシステムでは利用可能な電力が制約されることから、低電力設計がもう1つの重要な課題だ。バッテリーの容量が増大してきたとはいえ、ウェアラブルシステムのますます増大する電力要求に応えるには不十分な状況だ。この分野のアプリケーションでは、使用時間の短い使い捨てバッテリー、あるいは充電可能バッテリーのいずれが利用されるだろうか。リチウム充電電池に熱暴走問題のあることは十分に報告されている。ウェアラブルデバイスで熱暴走が起こると、危険であり、危害をもたらす恐れがある。

 設計者によっては、バッテリー寿命延伸のためにパワーマネジメントを強化する方向を目指している。また、パワーマネジメント手法として導電体を織物状にする方策を追求する設計者もいる。この方策は柔軟な設計と高性能なパワーマネジメントとの両立を難しくする可能性がある。

 ウェアラブル機器の電源として環境発電方式を利用する設計者もいる。このアプローチは、人体自体の運動や移動体搭乗時の加速度といった機械的なエネルギーや太陽光からの電磁エネルギーあるいは人体と環境との温度差から生じる熱エネルギーを利用するものだ。

 筆者が案じているのは、ほとんどの場合に、市場への浸透を確実にするための課題が解決される前に、アプリケーションが出荷されることだ。問題はユーザーが寄せる新製品の信頼性に対する期待を満足できるか、という点である。

 米陸軍は、兵士にウェアラブル太陽電池パネルを装備させ、携行電子機器の電源として使用することを計画中だ。兵士は現在約12ポンド(約5.2kg)のバッテリーを携行しており、その上に新しいバッテリーを携行するのは危険な任務だ。ある会社は、膝装着ウェアラブルデバイスからの機械的エネルギーを電気エネルギーに変換する方式に着目している。興味深いのが、ファッション業界が太陽電池を組み込んだ女性用衣装を製造していることだ。米陸軍はこのようなシステムの信頼性を厳密に評価することになろうが、民生用ウェアラブル業界はどうするのか。

まとめ

 ウェアラブル機器は、自分自身との、そして周りの世界との関わり合いに対して驚くほどの革新をもたらすだろう。しかし、ウェアラブル機器業界の現状は、プロトタイプや実験的製品の開発を通して、よりロバスト(頑強)な製品を目指している段階だ。

 長寿命が期待される製品から低コストの使い捨てデバイスに及ぶ製品群に対して、この業界が応えなければならない期待は幅が広い。はっきりしているのは、ウェアラブル製品がパッケージングの革新とともに進展していくならば、人々が毎日の生活の中でデータを利用し処理するための用途として広がっていくだろうということだ。このような革新が市場に受け入れられ、また、ユーザーの信頼性に対する期待値を満足させるためには、信頼性に対する試験が不可欠である。ウェアラブル製造者が業界最良の経験および革新技術の適格性を確証するための故障物理を活用することがなければ、予期しない故障による製造立上げの遅延や、改善指導通知書を受け取る事態が生じることになろう。

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