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絶縁型DC/DCコンバータを簡単に実現する「Fly-Buck」対応品の品ぞろえが広がる【講座】回路設計の新潮流を基礎から学ぶ

» 2015年08月31日 00時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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 電源回路にはさまざまな回路トポロジーがある。例えば、フォワード方式やフライバック方式、SEPIC(Single Ended Primary Inductor Converter)方式、バック(降圧)方式、ブースト(昇圧)方式、バック・ブースト(昇降圧)方式などが代表的な存在である。いずれも、多くの電子機器において、実際に採用されている。

 この中で、民生機器や産業機器、通信機器、コンピュータなどの電源モジュールとして盛んに使われているのがフライバック方式だ。フライバック方式は、入力と出力を電気的に絶縁したAC/DC変換やDC/DC変換に向けたものだ。ブースト(昇圧)方式に対応した電源(PWM)制御ICに、スイッチング素子(パワーMOSFETなど)やダイオード、トランス、コンデンサなどを組み合わせて構成する。対応する出力電力は最大で200W程度。あまり大きな出力を必要とする用途に不向きだ。コストは低く抑えられる。部品点数が少ないためだ。これらの点は大きなメリットだといえるだろう。

 一方、デメリットはそれほど多く存在しているわけではない。強いて挙げるなら回路構成が比較的複雑なため、その分だけ回路設計が難しくなることだろう。2次側で取得した情報をフォトカプラなどで絶縁しながら1次側にフィードバックする回路を設計しなければならないからである。

「Flyback」と「Fly-Buck™」

 テキサス・インスツルメンツ(TI)では、こうしたフライバック方式のデメリットを解消する電源技術を実用化している。「Fly-Buck™」方式という技術だ(図1)。

図1 「Fly-Buck」技術
Fly-Buck技術を適用した降圧(バック)型DC/DCコンバータICを使えば、トランスを組み合わせることで、非絶縁の電圧出力のほか、絶縁した電圧出力も得られる。絶縁電圧出力が複数必要ならば、トランスの巻線を増やすだけで対応できる。

 既存のフライバック方式のつづりは「Flyback」だ。FlybackとFly-Buck。かなり似た単語である。Fly-Buckという単語には意味がある。それは、既存のフライバック方式がブースト方式の電源制御ICを使うのに対して、Fly-Buck方式ではバック(Buck)方式の電源(DC/DCコンバータ)制御ICを利用して実現できるという意味だ。実際には、スイッチング素子を集積したバック方式のDC/DCコンバータICに、トランスや受動部品を組み合わせるだけで、絶縁型DC/DCコンバータ回路を簡単に実現できる。

 バック方式DC/DCコンバータICをそのまま活用できるメリットは大きい。最大のメリットは、回路構成を大幅に簡素化できることだ。その理由は、1次側で情報を取得してフィードバックをかける手法を採用している点にある。このため、フォトカプラなどの絶縁用部品は不要になる。

 さらに、複数の安定化電圧を簡単に作成できることもメリットの1つとして挙げられるだろう。もともとのバック方式DC/DCコンバータICから得られる非絶縁型の出力電圧に加えて、トランスを使うことで絶縁型の出力電圧が得られるからだ。しかも、絶縁型の出力電圧が複数必要ならば、トランスの巻線を増やすことで簡単に対応できる。

 ただしFly-Buckは万能ではない。対応可能な出力電力は15W程度に限定されてしまう。回路構成上、ローサイド・スイッチのデューティ比を50%以下にしか設定できないからだ。さらに、出力電圧の精度は±5%である。既存のフライバック方式DC/DCコンバータの±3%を下回る。

1個のICで6個の電圧出力

 このようにデメリットもあるものの、用途によってはメリットの恩恵は極めて大きい。

 例えば、3相モーター駆動向けIGBTゲート・ドライバ回路のバイアス電源である(図2)。通常、これを実現するには、3相分のハイサイド・スイッチとローサイド・スイッチそれぞれにバイアス電源を供給するため、最大6個の電源回路が必要になる。こうした多くの電源回路でも、Fly-Buck技術を適用すれば、1個のバック方式DC/DCコンバータICで対応可能だ。その分だけ、電源回路の外形寸法を小型化でき、部品コストを削減できるわけだ。

図2 1個のバック型DC/DCコンバータICで複数の出力を作成
3相モーター駆動向けIGBTゲート・ドライバ回路のバイアス電源の例。Fly-Buck技術を適用した降圧型DC/DCコンバータICを使えば、1個のICだけで6個の電圧出力を作成できる。内訳は、3相分のハイサイド・スイッチそれぞれに向けたバイアス電源が3個、3相分のローサイド・スイッチそれぞれに向けたバイアス電源が3個である。図の回路では、3相分のローサイド・スイッチそれぞれに、1個のバイアス電源から電圧を供給する構成を採用しているため、実際の電圧出力数は4個である。

 プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)の電源回路も、Fly-Buck技術を使えば大幅にスッキリさせることが可能だ。マイコンに供給する+5V電源のほか、オペアンプに供給する+15Vとー15Vのバイアス電源を、1個のバック方式DC/DCコンバータICで生成して供給できるようになる。

 現在TIは、Fly-Buck技術に対応したバック方式DC/DCコンバータICを全部で3品種用意している(図3)。最大入力電圧が100Vと高い「LM5017/8/9」、最大入力電圧が65Vの「LM5160/LM5160A」、最大入力電圧が48Vの「LM25017/8/9」である。Fly-Buck技術を適用したバック方式DC/DCコンバータICを実用化しているのはTIだけである。

図3 Fly-Buck技術を適用したDC/DCコンバータICの品ぞろえ
全部で3品種用意している。

 3品種とも、フィードバック・ループの制御にはコンスタント・オン・タイム(COT)方式を採用する。ハイサイド・スイッチとローサイド・スイッチをいずれも集積した。すなわち同期整流方式に対応する。最大出力電流は製品によって異なり、2015年3月にリリースされた「LM5160A」は1.5A、100V入力対応の「LM5017」と48V入力対応の「LM25017」はいずれも0.65A。最大スイッチング周波数は全て1MHzである。

 さらに、TIでは「LM5160」と「LM5160A」を採用したPLC用絶縁型3出力フライバック電源リファレンス・デザイン「PMP10532」や、絶縁型8出力フライバック・バイアス、IGBTドライバ用リファレンス・デザイン「PMP10531」も提供しており、回路図や設計ファイルをウェブからダウンロードできる。

【関連リンク】

※ Fly-BuckはTexas Instruments Incorporatedの商標です。その他すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。



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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2016年3月31日

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